研究領域 | 性染色体サイクル:性染色体の入れ替わりを基軸として解明する性の消滅回避機構 |
研究課題/領域番号 |
22H05073
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
野澤 昌文 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (50623534)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
34,840千円 (直接経費: 26,800千円、間接経費: 8,040千円)
2024年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
2023年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
2022年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | 性染色体進化 / ショウジョウバエ / 遺伝子発現 / ゲノム / 転移因子 / Y染色体消失 / 性染色体 / 転座 |
研究開始時の研究の概要 |
一般にY染色体は組換えを行わないため、多くの遺伝子は機能を失う。しかし、Y染色体上に存在する性決定/関連遺伝子はオスの機能、つまり性の存続に必須であるため、Y染色体は退化するが通常消失しない。しかし、進化の過程でY染色体を失ったにもかかわらず性の消失を回避した生物も存在する。ヒゲジロショウジョウバエ(Drosophila lacteicornis)もその一種であり、申請者は本種にY染色体を持つオスと持たないオスが混在していることを発見した。そこで、この2種類のオスを、ゲノム、遺伝子発現、ヒストン修飾、生存率などの観点から詳細に比較し、本種が性を維持したままいかにしてY染色体を消失しつつあるのかを解明する。
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研究実績の概要 |
今年度はまず、Y染色体の有無に多型が存在するヒゲジロショウジョウバエ(Drosophila lacteicornis)において、ロングリードシーケンサーであるOxford NanoPore MinIONおよびショートリードシーケンサーであるIllumina HiSeq Xを併用して、Y染色体を持つ系統の雌雄のゲノム配列を決定した。そして、雌雄のゲノム配列を比較し、オス特異的な配列約1 Mbを候補Y染色体配列として同定した。 次に、Y染色体を持つ系統と持たない系統の幼虫、蛹、成虫の雌雄および精巣、卵巣のRNA-seqを行った。その結果、Y染色体上に4個の発現遺伝子を同定した。これらの遺伝子はキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)では常染色体に存在していた。一方で、キイロショウジョウバエのY染色体に存在するオス妊性関連遺伝子の多くはヒゲジロショウジョウバエにて第3染色体の右腕に存在していた。これらの結果から、ヒゲジロショウジョウバエではオス妊性関連遺伝子の多くが常染色体に転座することによってY染色体を失ったオスも妊性を保持する可能性が示唆された。また、キイロショウジョウバエとヒゲジロショウジョウバエのY染色体は相同ではなく、ヒゲジロショウジョウバエは一度Y染色体を消失したのちに起源の異なるY染色体を再獲得した可能性も示唆された。 現在、染色体FISH法、ゲノムサザン法を用いて上記の仮説の検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、Y染色体を持つ系統と持たない系統の雌雄のゲノム配列を決定し、その比較から候補となるY染色体配列を約1 Mb同定できたため。また、予定通りRNA-seqを実施し、キイロショウジョウバエのY染色体上の遺伝子の多くが常染色体に転座している可能性を明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
核型観察やフローサイトメーターから推定されるY染色体のサイズに対し、候補領域として決定できたY染色体配列はまだ10%にも満たない。そこで、HiFi-seqやHi-Cなどを併用し、より多くのY染色体配列の決定を目指す。 また、本種が生息する南西諸島を調査し、Y染色体の有無の地域分布を明らかにする。さらに、第3染色体の右腕に見つかったキイロショウジョウバエのY染色体遺伝子が重複ではなく転座によることを確認するため、染色体FISH法やゲノムサザン法による検証を行う。第3染色体の右腕に存在するこれら遺伝子がオス妊性関連遺伝子として機能しているかどうかも明らかにしたい。
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