研究領域 | 骨イメージングではじめる動的多細胞コミュニティ学 |
研究課題/領域番号 |
22H05085
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
瀬尾 茂人 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 准教授 (30432462)
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研究分担者 |
梅谷 俊治 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 招へい教授 (80367820)
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研究期間 (年度) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | バイオインフォマティクス / 細胞画像処理 / 1細胞発現解析 / 空間トランスクリプトーム / オミクス解析 / 遺伝子発現解析 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代シーケンサー技術やイメージング技術、加えて自動化技術の発展により、様々な様式の生命情報ビッグデータが日々蓄積されている。本研究課題の目的は、これらの膨大で複雑なデータを統合し、知識発見や現象の理解を行うための方法論の開発、特に情報科学的な技法による細胞動態と細胞間相互作用の抽出・解析、社会学的技法を導入して細胞コミュニティの理解を行う方法論の開発である。
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研究実績の概要 |
近年のライブイメージング技術やオミクス解析技術の発展は著しく、細胞集団の社会活動を高解像度で観察することが可能となっている。しかしながら、4Dイメージングの動画像はその時空間的複雑さゆえに定量的な解析を行うことが難しく、また、オミクスデータの膨大な情報量は簡単に人間の理解を超える。そこで本研究では、細胞動画像とオミクスデータの統合による細胞コミュニティの解析手法の開発を行う。具体的には、ある時刻のスナップショットである空間トランスクリプトームを中心としたオミクスデータから、細胞間相互作用の種類や様式を推定して細胞の形態情報と紐づけし、さらにこの形態情報とライブイメージングの細胞動態情報を統合する。また、これによって、細胞コミュニティのいつ・どこで・どのようなコミュニケーションが行われているかを抽出することを試みる。 本年度には、空間トランスクリプトーム解析のための数理最適化を用いた細胞比率の推定手法や、細胞動画像を対象とした強化学習による細胞追跡手法といった、細胞コミュニティの解析のための基盤技術についての開発を進めるとともに、一部の成果の報告を行った。また引き続き各計画班との議論を進め、マウスの遺伝子発現データ、およびマウス由来の培養細胞や生体環境でのイメージングデータの提供を受けて解析と検討を進めるとともに、細胞コミュニティの解析に情報科学と社会科学の技法を用いるための議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間トランスクリプトーム解析は、従来では困難だった空間情報を保持して遺伝子発現量の測定を可能にする技術である。一方で、現在代表的な空間トランスクリプトーム解析においては空間解像度に課題が残っており、ある程度の大きさのスポット内の細胞集団の遺伝子発現量をまとめて測定するため、観測データは複数種類・複数個の細胞集団の平均的な値となってしまうという問題がある。細胞コミュニティの解析に必要な情報を抽出するには、各スポットにおける細胞種の存在比率を推定する必要がある。空間トランスクリプトームデータの各スポットにおける細胞の種類と存在比率を計算する問題を、線形計画問題として定式化し、良好な結果を得られたので論文投稿の準備中である。 また、細胞動画像から細胞の位置を継続的に追跡するための方法を開発した。細胞コミュニティの解析には、各細胞がいつどこに存在し、どのように移動してきたかという履歴の情報が必要である。この問題に対して強化学習を用いた汎用的に利用可能な細胞追跡手法を開発・評価し、学会発表や論文投稿を行った。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞を観察する解像度は著しく高まり続けており、細胞の種類や状態は連続体(スペクトラム)として捉えられるようになっている。細胞の集団を規定する生化学的マーカーの同定などは精力的に行われており、依然として重要な課題である。しかし、細胞種に固有と思われていた特徴が集団間で共有されることもあり、また、細胞間の情報伝達機構の多様性や複雑さも考慮すると、細胞社会の営みは要素還元的な理解のみではなく、適度に抽象化された方法によって行うこともまた重要であると考えられる。俯瞰と注視の中間層である「つながりとコミュニティ」の解像度で細胞社会を理解するという視点は、細胞生物学のみならず、データ量の増大し続けている人間の情報化社会にとっても重要な課題であり、すなわち情報科学的意義も大きい。 最終年度である次年度には、これまでに開発した細胞動画像の特徴量の抽出と、空間トランスクリプトームデータによる細胞間相互作用の抽出と形態情報との紐づけを行うアルゴリズムの成果報告を行う。また他の計画班との連携により細胞コミュニティの理解に向けた議論を行う。
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