研究領域 | データ記述科学の創出と諸分野への横断的展開 |
研究課題/領域番号 |
22H05105
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白井 朋之 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (70302932)
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研究分担者 |
Escolar EmersonGaw 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (20850499)
本多 正平 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (60574738)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
163,150千円 (直接経費: 125,500千円、間接経費: 37,650千円)
2024年度: 34,580千円 (直接経費: 26,600千円、間接経費: 7,980千円)
2023年度: 33,930千円 (直接経費: 26,100千円、間接経費: 7,830千円)
2022年度: 24,570千円 (直接経費: 18,900千円、間接経費: 5,670千円)
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キーワード | 最適輸送理論 / MDS / パーシステント加群 / 確率場・確率過程 / 距離空間の埋め込み / データ記述子 |
研究開始時の研究の概要 |
現代社会においては,各種のビッグデータが存在しており,そのデータ解析をいかに効率よく実行するかは重要な課題である.この多様なビッグデータを「うごき」と「かたち」という点に着目して詳しく解析するために,距離空間のユークリッド空間への埋め込みと最適輸送,パーシステントホモロジーのマルチパラメータ化,確率過程・確率場などの基礎研究を中心に推進しながら,その知見を分野横断的に具体的問題へ応用することを目指す.また,そのフィードバックをもとに理論研究の新たな展開に取り組むことにより,データ記述科学という新しい学問分野を創出することを目標とする.
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研究実績の概要 |
無限MDSの3変数版はそのトレースをとることで従来の無限MDS(2変数版)が従うことがわかった.同様に多変数版の可能性も模索した.これらの考察はMDSに限らず一般のカーネル法による埋め込みでも適用可能であるので,その可能性についても調べた.一方で,ガウス型の測度を持つ直線上で無限MDSを考察し,無限MDSの具体的な計算の難しさが理解できた.またMDSと測度集中現象の関係も見えてきたので,他グループと議論を行い,今後の方向性を探った.例えばこれまでは平坦なところでその関係を見ていたが,正曲率で考える方向性が見えた.パーシステントホモロジーのマルチパラメータ化において,区間表現による分解および区間近似のための理論基盤の整備がある程度できた.特に,区間分解次元の有限性と単調性や区間被覆の直和因子に関する単射性など,これらの概念の良い性質を示すことができた.さらにここまでの研究によって,マルチパラメータ化への大きな一歩の可能性を秘めているバイパス・パーシステントホモロジーを新たに発見した.これらは新たなデータ記述子の構築に使えると考えられる.さらに,パーシステントホモロジーの研究において様々な特徴量が提案されてきたので,これらと区間表現による特徴量の関係をより明確にしなければならないため,加法不変量及び圏論の枠組みを使って調べ始めた.確率場に対するパーシステントホモロジーのマルチパラメータ版を考察するため,ポアソン点過程から定まる区間・非区間表現の現れる確率について比較検討を始めた.二部グラフの成長モデルに付随して,ベッチ数を固定したときの連結成分の個数の数え上げの問題を調べるとともに,その拡張に相当する立方格子複体の全域非輪体の数え上げを実行した.また,画像の生成モデルの機械学習的アプローチにあらわれる確率微分方程式の係数学習について、ガウス過程による定式化について考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3変数MDSの可能性を模索することができ,また,従来の無限2変数MDSをカーネル法の立場からよく理解することができている.正曲率の世界の測度集中現象とMDSの関係の模索もスタートすることができた.今最も必要なのは無限MDSの変種で,期待される埋め込みのよい性質を持つものを見つけることであり,それに取り組んでいる.パーシステントホモロジーのマルチパラメータ化について,その複雑さを測るための指標である区間次元の導入,理論基盤の整備及びソフトウェア実装がある程度でき,さらにその研究によって新たな概念であるバイパス・パーシステントホモロジーが発見された.これらはマルチパラメータ化の発展に繋ぐことが期待できる.二部グラフにおいてベッチ数を固定したときの連結成分の個数や立方格子複体の全域非輪体の数え上げの問題を実施して結果を得た.また,ポアソン点過程に関するパーシステントホモロジーのマルチパラメータ化は一般の点過程に対する同様の研究のプロトタイプになると期待される.
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今後の研究の推進方策 |
無限MDSで有限MDSの類似として予想されていた結果が,例え空間に高い対称性があったとしても,成り立たないことがStepanovらのグループによって見つかっている.よってそのような例がどれくらいあるか,また,期待される性質を持つ空間全体の性質は何か,そして無限MDSの変種で期待される性質を持たせることは常にできるか,ということに取り組む.ここまでの研究によって新たに発見したバイパス・パーシステントホモロジーは,マルチパラメータ化への大きな一歩の可能性を秘めており,その性質や特徴を解明していく.また,データ解析での活用のため,アルゴリズムの開発及びデータへの応用に向けて,他の班のメンバーと引き続き議論を重ねていく.画像の生成モデルの機械学習的アプローチについて,ガウス過程や微分方程式による定式化について考察を進める.また,上記のマルチパラメータ化のアルゴリズムを用いた具体例の計算も進めて,点過程のマルチパラメータ版パーシステントホモロジーにおいて独自な現象を見つけることも重要である.
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