研究領域 | データ記述科学の創出と諸分野への横断的展開 |
研究課題/領域番号 |
22H05109
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
木村 正雄 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (00373746)
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研究分担者 |
岡本 敦 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (40422092)
武市 泰男 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (40636461)
赤木 和人 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (50313119)
稲田 康宏 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60242814)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
203,190千円 (直接経費: 156,300千円、間接経費: 46,890千円)
2024年度: 37,180千円 (直接経費: 28,600千円、間接経費: 8,580千円)
2023年度: 36,530千円 (直接経費: 28,100千円、間接経費: 8,430千円)
2022年度: 54,080千円 (直接経費: 41,600千円、間接経費: 12,480千円)
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キーワード | X線顕微法 / 構造材料 / 電池 / 鉱物 / パーシステントホモロジー / X線顕微鏡 / X線吸収分光 / Trigger sites / CFRP / 焼結鉱 / リチウムイオン電池 / CFRP |
研究開始時の研究の概要 |
材料のマクロ特性の変化(例えば、電池の機能劣化、構造材料の破壊)は、材料内で均一に進行するのでは無く、様々な不均一化が進行して、あるタイミングに何らかの起点(trigger sites)から突然進行するケースが多い。 そこで本課題では、X線分光顕微鏡を用いて材料中の微細組織と化学状態の不均一状態を可視化する高度計測技術を確立する。それを材料に適用して不均一状態の可視化を行い、その「かたち」や「うごき」の抽出を、基礎研究班、データ科学班、数理探索班、等と連係して進める。これにより、計測のビッグデータから材料のマクロ特性を決めるtrigger sitesを特定し、材料開発にフィードバックする。
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研究実績の概要 |
本課題では、(1)材料中の組織や化学状態のX線分光顕微鏡による解明、 (2)得られた多次元データの高次元可視化、 (3)様々な物性値の‘かたち’やその‘うごき’の観点から、材料の機能発現や機能劣化の起点(=“trigger sites”)を特定する数理的アプローチの開発、を進める。今年度は、社会インフラ構造材料の劣化・破壊、およびエネルギー関連材料(電池)の機能発現に加えて、新たな展開領域として地球科学分野の反応解析、を追加した。それぞれの分野での進捗は下記の通り。 ・航空機用の構造材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)について、2022年度に確立した放射光X線顕微鏡による観察を進め、亀裂の発生・進展挙動の最大の支配因子である炭素繊維の配列について、パーシステントホモロジーを用いた位相的データ解析による定量化が可能であることを見いだした。さらに亀裂の‘かたち’とその‘うごき’そのものの数理的記述法についても検討をすすめた。 ・化学状態をマッピングするための硬X線分光顕微鏡の空間分解能を1/10に高度化することに成功し、鉄鉱石(Fe-Ca-Oの複合酸化物)の還元に伴う変化を観察するのに必要な高空間分解能化を実現した。 ・X線分光顕微鏡を用いて充放電サイクル中のリチウムイオン電池の活物質内の充電相、放電相の‘かたち’の変化をパーシステントホモロジーを用いた位相的データ解析により定量化が可能であることを見いだし、化学種(リチウム)と電子の移動による電気化学反応メカニズムについて検討を進めた。 ・海洋底岩石圏の鉱物の生成反応について、様々なX線顕微鏡を用いて化学反応に伴う特徴的な鉱物組織の変化の可視化に成功し、それが過去に起こった反応のメカニズム推定に有力な新情報を提供可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度時点での計画において、5年間の2年目の今年は、初年度に高度化を進めたX線顕微鏡の計測技術を用いて、各材料系で、反応に伴う化学状態や微細組織の‘かたち’の‘うごき’の観察とその位相的データ解析を進めることとなっていた。 計画していた、(a) CFRP内での亀裂発生・進展挙動のX線顕微鏡ビッグデータについてのパーシステントホモロジーを用いた位相的データ解析、(b) 硬X線分光顕微鏡を用いた化学状態のマッピング技術の空間分解能の高度化(1/10を達成)、(c) リチウムイオン電池の活物質内の充電相、放電相の‘かたち’の変化の位相的データ解析、の三項目すべてについて目標とした研究内容を達成することができた。特に(a)については、研究加速のために当該分野の分担者を1名追加し、多次元の‘かたち’の‘うごき’について検討を進める等の目標以上の内容を達成できた。 更に、X線顕微鏡観察とそのビッグデータの位相的データ解析技術の新たな展開領域として地球科学分野へと応用を展開することができ、(d) 海洋底岩石圏の鉱物の生成反のX線顕微鏡観察、を追加で実施することができた(当該分野の研究推進のために分担者を1名追加)。本課題のアプローチが新たな分野へ展開できたことは、提案する研究内容の普遍性・新規性を示していると考え、今後も同分野での研究を継続して推進していく。
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今後の研究の推進方策 |
5年間の3年目となる2024年度は、初年度:X線顕微鏡の計測技術の高度化、2年目:各材料系への展開、に引き続いて、X線顕微鏡観察により得られた 反応に伴う化学状態や微細組織の‘かたち’の‘うごき’の位相的データ解析を進め、反応メカニズムとの関連性を解明していく。具体的には、以下の項目を推進していく。 (1) 材料の機能発現や機能劣化の起点(=“trigger sites”)を理解するために、多次元(=3D組織+エネルギー+反応軸+etc)のビッグデータの可視化技術を高度化する(数理探索班との連携)。(2) CFRPの炭素繊維配列の位相的データ解析を進め、亀裂の起点( “trigger sites”)が発生しやすい領域の特定につなげる。また、亀裂の‘かたち’とその‘うごき’から、亀裂発生のタイミングの数理的解析を進める。 (3) 鉄鉱石(Fe-Ca-Oの複合酸化物)について、X線吸収分光による化学状態マッピングと従来の結晶微細組織の情報複合による、還元反応の“trigger sites”の特定と予測を可能とするアプローチ法の研究を進める。 (4) リチウムイオン電池の活物質について、充放電サイクル中の充電相、放電相の‘かたち’の変化をパーシステントホモロジーを用いた位相的データ解析により、反応活性が高い領域の特徴抽出を行う(データ科学班との連携) (5) 海洋底岩石圏の鉱物の生成反応について、化学反応に伴う特徴的な鉱物組織の変化の可視化データから、位相的データ解析により反応モードの特定が可能かどうか、実験と合わせて検証を進める。
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