研究領域 | 「学習物理学」の創成-機械学習と物理学の融合新領域による基礎物理学の変革 |
研究課題/領域番号 |
22H05112
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京女子大学 (2024) 大阪国際工科専門職大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
富谷 昭夫 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (50837185)
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研究分担者 |
大野 浩史 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (20734396)
柏 浩司 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (50612123)
櫻井 鉄也 筑波大学, システム情報系, 教授 (60187086)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
143,260千円 (直接経費: 110,200千円、間接経費: 33,060千円)
2024年度: 27,430千円 (直接経費: 21,100千円、間接経費: 6,330千円)
2023年度: 26,910千円 (直接経費: 20,700千円、間接経費: 6,210千円)
2022年度: 31,460千円 (直接経費: 24,200千円、間接経費: 7,260千円)
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キーワード | 素粒子理論 / 格子QCD / 機械学習 / 格子ゲージ理論 / 自己学習モンテカルロ法 / トランスフォーマー / 負符号問題 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / ニューラルネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
計算物理学は大規模計算機を用いて物理学の諸問題を解く分野であり、機械学習は現状試験的 に導入され始めている段階にある。本研究班では、現在の大規模計算機をもってしても解くことが困難な計算物理学上の問題を、機械学習を用いることで解決し、物理学の更なる発展に貢献することを目的とする。具体的には、マルコフ連鎖モンテカルロ法に現れる臨界減速及び負符号問題という 2つの問題の解決を目指す。その際、理論物理学の知識と機械学習フレームワークを融合させることで、理論物理学に適した機械学習手法を開発し、計算物理研究の革新的な加速を実現する。
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研究実績の概要 |
2023年度も、昨年度に引き続き、計算物理学と機械学習の融合を目指し、特にマルコフ連鎖モンテカルロ法における臨界減速及び負符号問題の解決に向けて研究を進めた。昨年度の研究成果を基盤に、さらに詳細な解析と応用を行った。 まず、マルコフ連鎖モンテカルロ法においては、自己学習モンテカルロ法と対称性を保つトランスフォーマーを組み合わせる手法を開発した。具体的には、物性系において対称性を保つトランスフォーマーを用いた自己学習モンテカルロ法を適用し、従来の手法に比べて計算効率を飛躍的に向上させることに成功した。ゲージ共変トランスフォーマーにはまだ至っていないが、物性系での成功は今後の発展に大いに寄与するものと考えられる。スパースモデリングを応用したQCDスペクトル関数の研究も行った。 次に、負符号問題に対しては、経路最適化法を用いた研究を深化させた。具体的には、連続自由度を持つ量子場理論における負符号問題を機械学習で制御するために提案された経路最適化法を、離散自由度を持つスピンモデルに適用した。ハバード-ストラトノヴィッチ変換を用いてスピンを動的変数に置き換え、和を積分に変換することで、経路最適化法を適用した。この手法を複素結合定数を持つ一次元の模型に適用し、負符号問題を弱めることに成功した。この結果、統計誤差を制御しつつ解析値を再現できることを確認した。 研究の推進にあたり、若手研究者の育成にも力を入れた。昨年度に引き続き研究会や集中講義を開催し、次世代の研究者が最新の技術や知識を習得する機会を提供した。これにより、学際的な研究コミュニティ全体のさらなる発展に寄与した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題はおおむね順調に進んでいる。特に、トランスフォーマー型ニューラルネットの有用性を見つけたことで、研究の方針を一部変更したが、この変更により当初の予測を上回る成果を得ることができた。具体的には、自己学習モンテカルロ法と対称性を保つトランスフォーマーを組み合わせる手法を開発し、物性系での適用に成功した。これにより、従来の手法に比べて計算効率が飛躍的に向上し、物性系での成功は今後のさらなる発展に寄与するものと考えられる。また、負符号問題に対する経路最適化法の研究も進展し、一次元のスピンモデルにおいて負符号問題を効果的に緩和する手法を確立した。この結果、統計誤差を制御しつつ解析値を再現することができた。これらの成果により、研究の進捗はおおむね順調といえるものであり、今後の研究活動にも良い影響を与えると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、ゲージ共変トランスフォーマーの構成を目指しつつ、その実装に伴う計算コストの問題に対処するための効率的なアルゴリズムの開発を検討する。また、経路最適化法におけるトランスフォーマーの適用可能性も探ることで、負符号問題のさらなる解決策を模索する。引き続き、若手研究者の育成にも注力し、研究会や集中講義を通じて次世代の研究者が最新の技術や知識を習得する機会を提供する。これらの取り組みにより、計算物理学と機械学習の融合を一層推進し、学際的な研究の発展に寄与することを目指す。
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