研究領域 | 生体反応の集積・予知・創出を基盤としたシステム生物合成科学 |
研究課題/領域番号 |
22H05120
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
葛山 智久 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30280952)
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研究分担者 |
小川 哲弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40323480)
吉田 彩子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90633686)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
130,130千円 (直接経費: 100,100千円、間接経費: 30,030千円)
2024年度: 22,750千円 (直接経費: 17,500千円、間接経費: 5,250千円)
2023年度: 21,710千円 (直接経費: 16,700千円、間接経費: 5,010千円)
2022年度: 36,270千円 (直接経費: 27,900千円、間接経費: 8,370千円)
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キーワード | 生合成 / 酵素 / 反応機構 / 天然有機化合物 / ポリケチド / ホスホン酸 / 天然物化学 / 生合成酵素 / テルペン |
研究開始時の研究の概要 |
本計画研究では、微生物由来の新規テルペン合成酵素と、微生物由来の新規ポリケチド合成酵素を主な標的として集積し、生物有機化学的、生化学的、構造生物学的に解析することで、未踏の天然有機化合物を取得する。計算科学の手法を駆使して、遺伝情報や構造情報を機械学習等の処理技術で解析することで、未利用の天然有機化合物の構造や生合成経路を理論的に予知するシステムを構築する。このシステム構築により、これまでの「探す」天然物化学から「創る」天然物化学の実現に向けて、飛躍的な展開を図る。
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研究実績の概要 |
本年度は、放線菌が生産する特殊アミノ酸、cispentacinの生合成機構の解明を目指した。 cispentacinを部分構造として含む唯一の天然有機化合物としてamipurimycin (APM) が知られており、Streptomyces sp. SN-C1(C1)が有するAPM生合成遺伝子クラスター (amc cluster) が同定されていた。 まず、amc cluster中のamcB-amcH を導入した異種放線菌の形質転換株を用いてcispentacinの異種生産を達成することで、cispentacinの生合成に関与する遺伝子を同定することに成功した。 次に、7種類のAmc酵素と脂肪酸合成酵素の組換えタンパク質による酵素反応の解析を通じて、cispentacin生合成経路のすべての反応段階を生化学的に明らかにし、cispentacinの生合成経路の全容を解明した。さらに、既知のII型ポリケチド合成酵素(PKS)による生合成機構に存在しない、2-oxoglutarateをスターター基質とする新規アデニル化酵素AmcH及びAmcF (ケトシンテース、KS) -AmcG (環化因子, CYF, cyclization factor)酵素複合体を介した前例のない五員環骨格形成反応を含め、sp2炭素での脱炭酸反応を触媒する酵素AmcEやACP結合基質を利用するPLP依存性アミノトランスフェラーゼAmcCなど、一連の特異な酵素反応と酵素を同定した。 さらには、cispentacin生合成遺伝子をクエリーとする種横断的なゲノムマイニングを行うことで、amcGのホモログ遺伝子の探索を通じて五員環骨格形成機構を有する遺伝子クラスターを効率的に検出できることを見出し、未知の天然化合物の生産を担う推定生合成遺伝子クラスターを例示した。 以上、本研究はcispentacinの生合成経路の全容を明らかにするとともに、非芳香族のシクロペンタン構造の生産を担う新たなII型PKS様の生合成機構を提案した。さらには、ゲノムマイニングを通じた新たな天然化合物の探索を通じて、天然物生合成研究における新たな論点を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、構造多様性一挙構築型生体反応の集積・予知・創出にかかる研究のうち、ポリケチドの生合成に関与する生体反応の集積・予知・創出を目指し、放線菌の一種であるStreptomyces sp. C-1株 が生産する非タンパク質性のアミノ酸であるシスペンタシンを選抜した。研究成果として、シスペンタシンの生合成の全容解明に成功するとともに、これまで知られていなかったII型ポリケチド合成酵素の新たなサブファミリーを同定することができ、二次代謝産物の生合成酵素レパートリーの拡大に貢献ができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、構造多様性一挙構築型生体反応の集積・予知・創出にかかる研究のうち、ポリケチドの生合成に関与する生体反応の集積・予知・創出に関して成果を上げることができた。次年度は、テルペンの生合成に関与する生体反応の集積・予知・創出にかかる研究を推進するため、シアノバクテリア由来のテルペン環化酵素や古細菌由来のポリケチド基転移酵素の同定と反応機構の解明を目指す予定である。
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