研究領域 | 生体反応の集積・予知・創出を基盤としたシステム生物合成科学 |
研究課題/領域番号 |
22H05121
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
渡辺 賢二 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (50360938)
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研究分担者 |
岡本 拓実 静岡県立大学, 薬学部, 研究支援員 (90885245)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
83,590千円 (直接経費: 64,300千円、間接経費: 19,290千円)
2024年度: 15,730千円 (直接経費: 12,100千円、間接経費: 3,630千円)
2023年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
2022年度: 17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
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キーワード | ソラノエクレピンA / ジャガイモシストセンチュウ孵化誘因物質 / ステロール / 生合成 / 農薬 / solanoeclepin A / シストセンチュウ孵化誘因物質 / 天然物 / Micro-Tom / ナス科植物 / 生合成メカニズム / ジャガイモシストセンチュウ / ステロイド / 予知生合成 / 植物 / 孵化誘因物質 |
研究開始時の研究の概要 |
植物由来天然物の生合成遺伝子は微生物のようなクラスター構造とは異なり、植物染色体上に散逸した生合成遺伝子を過不足なく見出す汎用的方法論がないため、天然物生合成遺伝子を如何にして同定するか。また、極めて成功例の少ない植物由来天然物の物質生産を如何にして可能とするのか不明な点が多く存在する。そこで申請者はナス科植物で成長に関与する3種遺伝子の欠損によりモデル植物となったMicro-Tomの突然変異誘導体を利用することで、ソラノエクレピンAの生合成遺伝子を同定し生合成経路を解明する。
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研究実績の概要 |
我々はこれまでに、候補生合成遺伝子やシクロアルテノールを重要中間体とする生合成経路の推定を行ってきたが、生合成中間体に関する化学構造情報は現時点で解明されていない。植物科学的研究では変異体を用い最終生成物から遡ることで生合成経路を推定するのが一般的であるが、本研究では生合成上流から下流に向かう変換を有機合成での反応検証という方法論を用いた。本法では合成生合成品の活性を調べることで構造活性相関データも合わせて獲得可能となる。我々はダイズシストセンチュウの孵化誘因物質であるグリシノエクレピンAとソラノエクレピンAに類似した部分構造があることに着想を得た独自の生合成仮説に基づく合成法を立案した。すなわち、ソラノエクレピンAに特徴的な縮環構造の構築法を確立し、さらに種々の酸素官能基化による網羅的な類縁化合物の合成によって、推定生合成中間体の化学合成を行なった。我々はこれまでに大量入手が可能なγ-オリザノールを用いて、シクロアルテノール類縁体の合成とその水酸化手法を確立した。今回、架橋エーテルと七員環を含む炭素骨格の構築と、酸化度の異なる類縁体の合成に成功した。合成した化合物を用いて、シストセンチュウに対する孵化誘因活性評価を行った。さらにソラノエクレピンA推定生合成遺伝子のノックダウン体を2株作製した。これらがジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種となりうるかの評価を行なった。以上の研究進捗状況からジャガイモシストセンチュウ孵化誘因活性を有する化合物の探索およびジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種作出に一歩近づいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ジャガイモシストセンチュウ孵化誘因物質として単離されたsolanoeclepin A (1)の生合成解明に着手して様々な検討を行ってきた。これまでに複数の生合成遺伝子候補を見出しているが、生合成中間体の化学構造や生合成経路についての確かな根拠は、ほぼ得られていない状況である。本研究では候補遺伝子を用いる実験と協同して化学構造を根拠とした生合成解明を推進するために、推定生合成経路に着想した化学合成法の確立を目指すこととした。また、構造決定や酵素反応のための合成標品の供給だけでなく、孵化誘因物質の構造単純化アナログ創出を指向した、1の類縁化合物ライブラリーの構築も目的とした。 我々は今回、cycloartenol (2)を重要中間体とした推定生合成経路を立案している。2やその類縁体は様々な植物二次代謝産物の生合成経路へと流れるため、我々は1に特徴的な炭素骨格を有する化合物の供給が生合成解明の鍵を握るものと考えた。すなわち、主要な二次代謝経路とは独立していると考えられる、1の生合成の中盤以降をターゲットとして、化学構造が明らかな基質を用いた詳細な解析が必要と考えた。そこで初めに、2を起点としたsolanoeclepin骨格の構築法の確立を目指して、構造変換に必要な官能基以外を除いたシンプルな化合物3や4の合成に着手した。現在、D環側鎖のアルケンを足掛かりとした変換により、17位の位置および立体選択的な水酸化を達成し、さらに、CD環の二つのメチル基の転位反応を試み合成に成功した。さらにAB環に由来するビシクロエーテル環と七員環の構築を目指し、その合成にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまでに、候補生合成遺伝子やcycloartenol(2)を重要中間体とする生合成経路の推定を行ってきたが、生合成中間体に関する化学構造情報は全く解明されていない。植物科学的研究では変異体を用い最終生成物から遡ることで生合成経路を推定するのだが、本研究では生合成上流から下流に向かう変換を有機合成での反応検証という方法論を用い分子誘導型推定生合成の構築を目的として研究に着手した。本法では合成生合成品の活性を調べることで構造活性相関データも合わせて獲得可能となる。 我々はダイズシストセンチュウの孵化誘因物質であるglycinoeclepin A(3)とsolanoeclepin類に類似した化学構造があることに着想を得た独自の生合成仮説に基づく合成計画を立案した。すなわち、solanoeclepin類に特徴的な縮環構造の構築法を確立し、さらに種々の酸素官能基化による網羅的な類縁化合物の合成によって、推定生合成中間体(4)の化学合成を目指す計画である。我々はこれまでに大量入手が可能なγ- oryzanolを用いて、cycloartenol類縁体の合成とその17位の水酸化手法を確立した。今回、架橋エーテルと七員環を含む炭素骨格の構築と、酸化度の異なる類縁体の合成に成功した。さらに、合成した化合物を用いて、シストセンチュウに対する孵化誘因活性評価を行う。
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