研究領域 | 生体反応の集積・予知・創出を基盤としたシステム生物合成科学 |
研究課題/領域番号 |
22H05122
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
|
研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
丸山 千登勢 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (20452120)
|
研究分担者 |
長谷部 文人 福井県立大学, 生物資源学部, 助教 (30781801)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
87,100千円 (直接経費: 67,000千円、間接経費: 20,100千円)
2024年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2023年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2022年度: 49,270千円 (直接経費: 37,900千円、間接経費: 11,370千円)
|
キーワード | 中分子ペプチド / 非タンパク性アミノ酸 / 生合成 / 二次代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
微生物由来ペプチド系化合物に含まれる非タンパク性アミノ酸(NPAA)は、ペプチド化合物のプロテアーゼ耐性に寄与し、さらに多様性拡張にも寄与している。そこで本研究課題では、NPAAを豊富に含むペプチド化合物の生合成遺伝子クラスターを中心に解析し、強制発現技術によって新規ペプチド化合物の創製を目指す。さらに細胞膜を透過しにくいペプチド化合物に、申請者らが確立した「細胞膜透過性が改善技術」を適用し、微生物由来ペプチド化合物の潜在機能を覚醒させる。本研究成果は、多様なNPAA生合成に関与する生体触媒情報を酵素機能予測AIへ付与することに貢献し、効率的なペプチド化合物の構造多様性創出を達成する。
|
研究実績の概要 |
微生物ゲノムが躍進的なスピードで解読されたことにより、微生物が予想以上に多種多様な低分子・中分子化合物を生産する可能性を示してきた。特筆すべきことに、微生物は予想以上に非タンパク性アミノ酸(NPAA)を利用してペプチド化合物を生産する。NPAAは、プロテアーゼ耐性に寄与している重要な構成単位であるとともに、ペプチド化合物の多様性の拡張にも寄与している。そこで本研究課題では、NPAAを豊富に含むペプチド化合物の生合成遺伝子クラスターを中心に解析し、新規NPAAの発掘とNPAA生合成に関わる生体触媒情報の集積を目指す。 またもう一つの新規NPAAの探索源として、NPAAが、一次代謝産物を出発物質として生合成され、最終産物のNPAAに至るまでに多数のNPAAを経由する点に着目した。一次代謝で生産されるタンパク性アミノ酸でさえもまた、その生合成経路では数多くのNPAAを経由する。加えて、タンパク性アミノ酸の生合成は微生物種によっても触媒する酵素や生合成経路、中間体に違いがあり、未知の新規経路も存在すると言われている。すなわち、微生物のアミノ酸代謝は、NPAAとその生合成を担う生体触媒の宝庫といえ、新規アミノ酸生合成機構の解明からも新たなNPAAの発掘と生体触媒情報の集積を目指す。 さらに既存の生理活性を指標とした生理活性ペプチド化合物の探索では見逃されてきたペプチド化合物の発掘にもチャレンジする。申請者らが有する基盤技術である細胞膜透過性改善手法を用いて、微生物由来ペプチド化合物の隠れた潜在機能を覚醒させ、ガン細胞に対する毒性試験を指標に、有効なNPAA含有ペプチド化合物の探索を試みる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NPAAの一つであるβ-homolysine (β-hLys)は天然物では唯一、resormycin (RM)が含有するジアミノアミノ酸である。これまでに天然より見つかっているジアミノアミノ酸としては、炭素3つからなる2,3-diamino propanateから、炭素6つからなるL-lysineまでが見出されており、それぞれにその生合成経路も解明されている。しかし炭素7つからなるhLysについては全く知見がない。本研究ではRMの生合成遺伝子群から、β-hLys生合成遺伝子群の同定および生合成機構の解明を進めた。本年度の研究で我々は、β-hLys生合成に関わる7つの遺伝子を同定し、生合成中間体としてβ-hLysの前駆体であるα-hLysの末端アミノ基がグアニジド化された化合物(2-amino-7-guanidino-heptanoic acid, AGH)を経由する生合成経路を明らかにした。したがって本年度の研究で、NPAAであるβ-hLysの生合成研究から、新規NPAAであるAGHの同定に成功した。また興味深いことに、これまでに知られているジアミノアミノ酸の生合成では初めての例となる、L-Argを出発物質として生合成される経路を見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、L-Argを出発物質として、2つの炭素鎖の伸長反応を経てAGHが生合成された後、agmatinaseに相同性を示すOrf14によるグアニジド基の脱離を経て、α-hLysへと変換されることを明らかにした。今後の研究では、L-Argから炭素鎖が伸長する反応経路の同定を進める。これまでの研究ですでに、生合成に関わる7つの酵素遺伝子を同定しており、データベース検索による機能推定の結果から、4つの酵素遺伝子が炭素骨格の伸長反応に関与していると予想している。今後はこれらの組換え酵素を用いてin vitro反応を実施し、基質の同定および反応機構の解明を進める。
|