研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
22H05133
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
江原 正博 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 計算科学研究センター, 教授 (80260149)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
59,800千円 (直接経費: 46,000千円、間接経費: 13,800千円)
2024年度: 13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2023年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | キラル光物性 / 量子逆設計理論 / 螺旋光 / 局在表面プラズモン / キラル機能化・秩序化 / キラル動的制御 / 金属ナノクラスター / 分子集合系 / キラル秩序化・機能化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、超螺旋光と物質の相互作用を理解し、分子から生体組織まで様々な空間スケールの物質のキラル光物性やキラル機能化・秩序化の理論解析・設計を行うことを目的とする。キラル光物性の量子逆設計理論の開発を行い、分子―金属ナノ粒子系や分子集合系の高度なキラル光物性を示す系の理論設計を実施する。また、発光デバイスの開発や生体組織系のキラル機能化・秩序化に関する基礎研究を実施する。超螺旋光に基づく様々な光機能系を理論設計する基礎学理の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題では,超螺旋光と物質の相互作用を理解し,分子から生体組織まで様々な空間スケールの物質の螺旋光物性(キラル光物性)やキラル機能化・秩序化の理論解析・設計を行うことを目的としている。令和5年度は,下記の研究を実施し,研究発表で示す研究成果を得た。 (1)螺旋光と物質の相互作用を解析し,螺旋光が駆動する電子状態・物性を研究する。螺旋光をパルス波として照射する実時間Kohn-Sham DFT法とMaxwell方程式を結合した方法の開発を行った。本方法のプログラム開発を行い,試行計算としてL-アラニン等の中規模分子への螺旋光照射に適用し,物理量の時間変化等を調査した。 (2)キラル分子の左手型と右手型の変換を動的に制御することは近年の分子技術で注目されている。しかし,変換速度を制御することは容易ではない。三重螺旋構造をもつニッケル三核メタロクリプタンドを合成し,アルカリイオンによって,左手型(M体)から右手型(P体)の変換速度を1000倍制御することに成功し,円二色性等の理論解析を実施した。 (3)金属ナノクラスターは発光機能や触媒活性を示し,近接場の化学事象でも注目されている。近年,アニオンをテンプレートとした金属クラスターが開発されているが,その構造や電子状態は十分研究されていない。硫黄および塩素アニオンを核とする新規なアニオンテンプレート銀クラスターを創成し,その電子構造や電子スペクトルの理論解析を実施した。 (4)修飾単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は,強い近赤外領域の強い発光を示すことが見出されている。 (6,5)-SWCNTを環状フルオロアルキル化することで,最長発光波長1320 nmの近赤外発光を選択的に発現させることに成功し,その理論解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,螺旋光と物質の相互作用を解析し,螺旋光が駆動する電子状態・物性を研究する。螺旋光をパルス波として照射する実時間Kohn-Sham DFT法とMaxwell方程式を結合した方法の開発に成功した。 (1)本研究の中心課題である螺旋光と物質の相互作用を解析するための方法を開発することができた。現在,超螺旋光と物質の相互作用の結果,どのような化学事象が起きるか検討中である。 (2)キラル分子の左手型と右手型の変換を動的に制御できるニッケル三核錯体の構造,電子構造,円二色性について研究を行った。さらに基盤に担持されたキラル三核錯体の構造とキラル光物性についても理論解析を行った。 (3)硫黄および塩素アニオンを核とする新規なアニオンテンプレート銀クラスター金属クラスターの合成に成功し,その構造と電子状態について理論解析を行った。 (4)環状フルオロアルキル化したSWCNTが通信波長領域の発光を示すことを見出し,その置換位置と近赤外発光の起源について理論解析を実施した。 以上のとおり,超螺旋光と物質の相互作用や光機能分子のキラル光物性に関する研究について順調に進展しており,研究発表も順調にできている。以上から,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では,螺旋光と物質の相互作用が本質的に重要である。螺旋光をパルス波として照射する実時間Kohn-Sham DFT法とMaxwell方程式を結合した方法の開発に成功した。(1)開発した方法を実験で実現可能な条件の下で実在系に適用し,螺旋光と分子の相互作用でどのような現象が実現するか,より具体的な検討を行う。(2)円偏光発光を示す三核金属錯体について,その構造や電子状態,動的制御について理論解析を行う。(3)数種のアニオンを核とする銀ナノクラスターの電子状態および光物性の理論解析を実施する。(4)様々な置換基で修飾したSWCNTの電子状態と光物性について理論解析を実施する。
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