研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
22H05136
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
押切 友也 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (60704567)
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研究分担者 |
和田 健彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20220957)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
85,930千円 (直接経費: 66,100千円、間接経費: 19,830千円)
2024年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2023年度: 18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2022年度: 24,050千円 (直接経費: 18,500千円、間接経費: 5,550千円)
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キーワード | プラズモン / 超螺旋光 / 近接場 / キラリティ / 光―物質相互作用 / 強結合 / 不斉反応 / 秩序化 / 光電子顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
自由空間を伝播する光と比較して、金属ナノ構造近傍に局在化する「超螺旋光」は、その光電場の螺旋と分子の空間スケールが近いため、分子と極めて強く相互作用する。本計画研究では超螺旋光の発生源である金属ナノ構造を設計・作製し、その近傍での光と分子の相互作用をトリガーとしたマクロな空間スケールでの物質のキラル秩序化を行う。同時に、各過程でのキラリティー発現・転写機構を定量的に観察し、その原理と制御因子を理解することを目的とする。 具体的には、①超螺旋光を発現する金属ナノ構造の設計・作製、②多光子光電子顕微鏡による超螺旋光の観測、③超螺旋光による物質のキラル秩序形成、に主眼をおいて研究を推進する。
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研究実績の概要 |
自由空間を伝播する光と比較して、金属ナノ構造近傍のナノ空間に局在化する「超螺旋光」は、その光電場の螺旋と分子の空間スケールが近いため、分子と極めて強く相互作用する。本計画研究では超螺旋光の発生源である金属ナノ構造を設計・作製し、その近傍での光と分子の相互作用をトリガーとしたマイクロ・ミリメートルオーダーの空間スケールでの物質のキラル秩序化を行う。同時に、各過程でのキラリティ発現・転写機構を定量的に観察し、その原理と制御因子を理解することを目的とする。2022年度は、キラリティを有する近接場の設計のためのシミュレーション環境の整備を行った。それをもとに、金属ナノ構造の偏光特性を計算した。その結果、アキラルな金ナノ構造に円偏光を照射した際の近接場がキラルな特性を示すことを明らかにした。また、金属ナノ粒子のプラズモンと半導体/金属膜からなるファブリ・ペローナノ共振器との強結合が有する「量子コヒーレンス効果」に着目し、粒子の集団的振る舞いが発現する超螺旋光について検討した。その結果、量子コヒーレンス状態にあるアキラルな金属ナノ粒子を、2次元キラルな配列で設置すると、量子コヒーレンス効果が無い場合と比較して著しい円二色性の増大を示すことを見いだした。これは、量子コヒーレンス効果によって多数の粒子が巨大な光学モードを形成したためであると考えられる。これらの計算結果をもとに、電子線リソグラフィを用いた微細加工によって金属ナノ構造の試作を行った。 2023年度は設計した構造を基にした微細加工技術によるナノ構造を作製、光電子顕微鏡や近接場顕微鏡を用いた近接場計測、金属ナノ構造での不斉分子反応について注力して進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近接場の有する偏光特性と、物質との相互作用の様式については未解明な点が多いが、オプティカルカイラリティ(OC)と呼ばれる物理量が強く関与しているとの提案がなされている。代表者の押切は、保有しているシミュレーションソフトウェアではOCの直接の計算が出来ないため、OCの導出に基礎パラメータを抽出してOCを計算し、空間分布を出力するプログラムを構築した。 これを用いてアキラルな金ナノ構造に円偏光を照射した際の近傍のOCを計算したところ、構造に局所的なOCが発現しており、入射円偏光の向きによってそれが反転することが明らかとなった。また、円形の金ナノディスクを3回対称の風車型に配置して同様の計算を行ったところ、単純な誘電体上では隣接粒子間で電場増強が生じたものの、遠方場では円二色性は観測されなかった。それに対し、金属反射膜上に誘電体を配置し、その上に同じ構造を担持したところ、粒子群の外周部で強く電場増強を示し、さらに遠方場でも大きな円二色性を示した。これは、プラズモン粒子と、半導体/金属反射膜の示すファブリ・ペローナノ共振器との強結合に基づく量子コヒーレンス効果により、粒子が集団として振る舞うことに由来すると考えられる。量子コヒーレンス状態にある金属ナノ粒子の超螺旋光については世界でも報告の例がなく、光と物質の角運動量相互作用の新たな展開に繋がると期待される。これらの計算結果を基に、金属ナノ構造の作製法について着手している。また、分担者の和田は、金属ナノ構造の電場増強部位に選択的に分子を結合させる方法論の開発、また、可視光で光分解可能な不斉分子の合成を行った。 以上より、本研究はおおむね想定通り推移している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は設計した構造を基に微細加工技術を用いてナノ構造を作製し、分子共存下で光照射を行い、その光化学的相互作用について評価する。構造作製方法としては従来用いられてきた電子線リソグラフィだけでなく、高スループットかつ大面積に均一な構造作製可能なナノインプリントリソグラフィも活用する。ナノインプリントリソグラフィで金属ナノ構造を精度良く作製する方法論はまだ確立されておらず、その開発も平行して行う。例えば、金属膜上のレジストにナノインプリントモールドのパターンを転写し、ドライエッチングにより加工する方法や、予めパターン転写したレジスト上に金属膜を成膜してリフトオフする方法などが考えられる。 反応に用いる分子としては可視光にて光異性・光分解可能な分子を用い、選択的光異性化や脱ラセミ化を行う。高感度分光や液体クロマトグラフを用いて光反応性を評価する。 また、近接場顕微鏡や光電子顕微鏡を用いて近接場の光学的評価を行う。円偏光照射下での近接場の電場増強の空間分布、スペクトル、および緩和時間は過去に測定実績があり、作製した構造についても同様の評価を行う。 また、学術変革A「光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革」の計画班、公募班の各員との共同研究についても着手した段階である。具体的には、計画A班中嶋の合成した光異性不斉分子を押切が作製したナノ構造上で反応させ、超螺旋光の評価を行う。また、公募C班新家と共同での近接場設計を行う。
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