研究領域 | 光の螺旋性が拓くキラル物質科学の変革 |
研究課題/領域番号 |
22H05140
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
細川 千絵 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60435766)
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研究分担者 |
土井 謙太郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20378798)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
102,310千円 (直接経費: 78,700千円、間接経費: 23,610千円)
2024年度: 19,240千円 (直接経費: 14,800千円、間接経費: 4,440千円)
2023年度: 20,670千円 (直接経費: 15,900千円、間接経費: 4,770千円)
2022年度: 30,030千円 (直接経費: 23,100千円、間接経費: 6,930千円)
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キーワード | ナノバイオ / 生物物理学 / 光渦 / 生物物理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、超螺旋光と生体分子との相互作用による新たな細胞機能操作の実現を目指す。神経細胞シナプス部位に局在する分子群を対象として、超螺旋光をトリガーにして細胞内分子のキラル秩序化のダイナミクスを明らかにする。また、超螺旋光によって一過性の微小穿孔を細胞表面に形成し、高い時空間分解能で生体組織を刺激する手法を開発する。超螺旋光が誘起する様々な外力を駆使し、生体分子や細胞の時空間操作を達成するとともに、その学理を探求する。
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研究実績の概要 |
本研究では、超螺旋光の一つの形である光渦を利用することにより、生体分子を超螺旋光で操作し、新たな細胞機能操作の実現を目指す。光渦をトリガーにした細胞内分子のキラル秩序形成ダイナミクスや光渦の軌道角運動量が転写された分子集合体の振舞いを理論と実験の両面から明らかにする。 今年度は、昨年度に引き続き超螺旋光による細胞内分子操作について検討した。超螺旋光の力学摂動による細胞内分子動態の過渡応答を計測可能な顕微分光システムを構築し、レーザー集光領域における神経細胞内分子動態変化をラマン散乱スペクトルのピーク強度により明らかにした。超螺旋光による生体組織への刺激を目的として、培養神経細胞を対象とした研究を進めた。ナノ秒光渦照射に伴う神経活動の誘発を蛍光カルシウムイメージングにより確認し、そのメカニズムを明らかにした。フェムト秒光渦照射による光硬化性樹脂の二光子重合反応により、光渦の光電場強度を反映した構造が形成され、光渦の軌道角運動量の物質への転写に起因した表面構造の作製に成功した。 さらに、イオン、分子、ナノ粒子と光渦場の相互作用に注目し、実験と理論の両面から現象の解明を目指す研究を展開した。電解質溶液中の微粒子に光圧が作用するとき集合化構造の形成が確認されたことから、粒子の分極および周囲濃度場を明らかにするため、局所的なイオン濃度場を測定するための微小プローブを作製するとともに光学系の改良を進めた。現象の詳細を明らかにするため、理論モデルおよびシミュレーション手法の開発も推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、(1)超螺旋光による細胞内分子操作、(2)超螺旋光による生体組織への刺激、(3)超螺旋光による生体組織化過程の時空間操作について取り組む。超螺旋光による細胞内分子操作について検討するため、昨年度に引き続いて力学摂動による細胞内分子動態の過渡応答の顕微ラマン分光計測に取り組んだ。神経細胞内タンパク質の振動モード由来のラマンピークを含む生体分子由来のカウント値がレーザー照射に伴い増加することを示し、ガウスビームの光圧により神経細胞内分子が集光位置に捕捉され、集合することを示した。(2)超螺旋光による生体組織への刺激を目的として、蛍光色素で標識した神経細胞膜表面にナノ秒光渦レーザーを照射し、光渦照射に伴い一過性の微小穿孔が生じる機構がガウスビーム照射と異なること示し、光渦の軌道角運動量の物質への転写に起因すると考察した。フェムト秒光渦による神経細胞の刺激についても検討を開始した。(3)超螺旋光による生体組織化過程の時空間操作について、フェムト秒光渦照射による光硬化性樹脂の二光子重合反応により光渦の光電場強度を反映した構造体が形成され、ガウスビームにより作製した構造と比較して形状の違いがみられた。表面構造において光渦の軌道角運動量の物質への転写に起因した構造が認められた。 さらに、超螺旋光による分子秩序形成過程を明らかにするための光学系と可視化手法の構築を進めた。微粒子と周囲イオン濃度場の関係を明らかにするため、局所的な濃度場を測定する微小プローブおよびナノ流路を設計製作した。液中の微粒子の吸光と分極の関係を明らかにするための数値解析を行い、ポリスチレン粒子と金粒子の差異を確認した。光渦場における微粒子の秩序形成を明らかにするシミュレーション手法の開発に着手した。 以上より、おおむね当初の計画通りに進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
顕微分光計測により光渦照射に伴う細胞内分子動態変化を検出し、超螺旋光による細胞内分子操作を実現する。超螺旋光に誘発された外力により駆動される生体分子の秩序化過程を理論的に扱うための方法論について引き続き検討を行う。モデル系として光渦場の影響を受ける電解質溶液中のナノ粒子に着目し、ナノ粒子の秩序構造形成過程を可視化解析により明らかにする。電解質イオンの有無が微粒子の集合化に影響を及ぼすことから、電解質濃度依存性についても明らかにする。粒子径や粒子の物性の差異と秩序構造の関係を明らかにするため、粒子の吸光と周囲イオン濃度場の変化を考慮した離散粒子径のシミュレーションを開発実行して実験結果と比較する。 超螺旋光による生体組織への刺激に関して、フェムト秒光渦を神経細胞に短時間照射して誘発された神経活動の電気生理学的解析を行う。超螺旋光による生体組織化過程の時空間操作について、光硬化性樹脂を対象として超螺旋光を照射し、光渦の軌道角運動量が転写された微細構造体の作製とその形成メカニズムの解明を進める。
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