研究領域 | 超セラミックス:分子が拓く無機材料のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
22H05147
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀毛 悟史 京都大学, 理学研究科, 教授 (70552652)
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研究分担者 |
廣井 善二 東京大学, 物性研究所, 教授 (30192719)
山本 隆文 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (80650639)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
176,280千円 (直接経費: 135,600千円、間接経費: 40,680千円)
2024年度: 34,060千円 (直接経費: 26,200千円、間接経費: 7,860千円)
2023年度: 38,870千円 (直接経費: 29,900千円、間接経費: 8,970千円)
2022年度: 33,020千円 (直接経費: 25,400千円、間接経費: 7,620千円)
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キーワード | 相転移 / 機械的特性 / 界面物性 / 不均一触媒 / セラミックス / 力学特性 / ハイブリッドペロブスカイト / 超伝導 / 超セラミックス / 相変化 / 伝導性 |
研究開始時の研究の概要 |
陶磁器など、身の回りにあるセラミックスは硬く、割れやすいという特徴を持つ。本研究ではセラミックスの性質や機能をもちながらも、より柔らかく、低い温度で成形加工が可能なセラミックスを見出してゆく。そのためにはセラミックス材料の中に分子を入れてゆく必要がある。他の研究者と連携し、内部の分子がどのように働くのかを明らかにする。また機能の一つとして、イオンや電気が流れる伝導性に着目し、応用につなげる。
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研究実績の概要 |
<相転移を示す超セラミックスの合成と物性> ボールミルを用いた非晶質処理により、プルシアンブルー誘導体がガラスになることを発見した。配位ネットワークがガラスでも保たれるため、半導体特性が維持され、一方力学特性変化が大きく、一軸プレスでも緻密なバルクモノリスが作れることを確認した。またAg+イオンとジニトリルからなる二次元結晶構造においては、動的な配位結合に由来した結晶融解が見られ、冷却によって速やかに元の結晶相に戻ることが観測された。再結晶の解釈に有機高分子で幅広く使われるアブラミの式を適用したところ、核生成とそれに伴う1次元的結晶成長のモデルによく従うことがわかった。 <新規ハイブリッドペロブスカイトの合成と物性> チオシアン酸を有機無機ハイブリッドペロブスカイトに導入し、欠陥制御の研究を進めた。FAPbI3にチオシアン酸を導入したところ、チオシアン酸の異方的な分子構造に由来して無機ペロブスカイト骨格に柱状欠陥が発生し、その柱状欠陥が規則的に整列した新規化合物FA6Pb4I13.5(SCN)0.5を見出した。この物質は、ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上に関するペロブスカイト構造の安定化にも寄与する化合物であることも明らかとなった。低分子性であるが多彩な配座を示す分子ユニットが新しいハイブリッドペロブスカイト構造を構成することを明らかにした。 <表面超電導の観測> 超セラミックスの母体となるノーダルライン半金属NaAlSiにおける表面超伝導の可能性について、良質な単結晶を作製し、電気抵抗における超伝導転移の磁場方位依存性を精密に測定した。磁場が伝導面に平行な条件でのみ、バルクとは異なる超伝導成分が観測されることがわかった。この第二の超伝導成分は強い二次元性を有するため、結晶表面に由来する可能性が高い。外圏超セラミックスによる物性変調における有用な物質系を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超セラミックスの分子ユニットについて、相転移/力学特性制御という視点に立ち、新規物質および既知の結晶構造両面から幅広く物質探索を行い、着実な成果を蓄積できた。遷移金属-ニトリル系においては、従来ガラスになりえないと考えられる物質系のガラス化の実現、あるいは有機高分子の相転移に近い現象を発見し、従来のセラミックスと本質的に異なる分子の役割を見出している。またハイブリッドペロブスカイトについては、チオシアン酸添加によるペロブスカイト構造の系統的制御の手法を構築している。チオシアン酸イオン添加によって現れた柱状欠陥は、チオシアン酸イオンの異方的な分子構造に由来した「結合終端」の機能によって発現することを明らかとした。チオシアン酸が欠陥生成剤として機能している。単原子イオンにはない分子の異方性から生み出される新自由度をうまく利用した結果であり、超セラミックスの概念を明確に形作る多彩な物質系と物性に関する知見を蓄えられている。
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今後の研究の推進方策 |
超セラミックスの相転移/力学特性の特異性については、とくに結晶融解を司る分子ユニットの役割を定量的に明らかにしてゆく。特にエントロピー項がもたらす変化に着目し、分子ユニットの挙動を観察してゆくことで、室温~100度に融点やガラス転移点を持つ物質系を構築する。このような低温挙動においては、弾性・塑性挙動がより顕著になると考えられ、超セラミックスの成形加工性と材料機能発現における大きな進展を生み出せる。またハイブリッドペロブスカイト系においては、チオシアン酸イオンの欠陥生成剤としての機能を利用して、さらに物質探索を推し進める。チオシアン酸イオンの添加量を変えることによって様々な秩序相が得られることが期待されるため、固相合成や液相合成を使って合成を進める。さらに欠陥量や配位の方向が変わることでバンドギャップなどの電子構造も変化するため、得られた物質に関して動的挙動観察や物性測定も並行して進めていく。表面超伝導においては、これまで見出したNaAlSiの電子状態を明らかにするため、量子振動実験・第一原理計算を行い、バンド構造の特徴を明らかにする。また関連化合物であるNaAlGeは同じ結晶構造と電子状態を有する事が分かっているが、予備的な実験から、NaAlGeは低温で超伝導ではなく絶縁体的な性質を示すことが分かっている。両者の比較を通して、これらの物質系の特徴を明らかにし、超セラミックスのライブラリ拡張を進める。
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