研究領域 | 行動変容を創発する脳ダイナミクスの解読と操作が拓く多元生物学 |
研究課題/領域番号 |
22H05159
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山川 宏 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 主幹研究員 (00417495)
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研究分担者 |
田和辻 可昌 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (40804505)
谷口 彰 立命館大学, 情報理工学部, 講師 (70831387)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
74,360千円 (直接経費: 57,200千円、間接経費: 17,160千円)
2024年度: 14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
2023年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
2022年度: 14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
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キーワード | 脳参照アーキテクチャ / 全脳アーキテクチャ / 仮説的コンポーネント図 / 機能実現グラフ / SCID法 / 脳情報フロー図 / 全脳参照アーキテクチャ / 統合分散実行環境 / BRA editorial system / 脳情報フロー |
研究開始時の研究の概要 |
本領域の他班による神経科学実験における脳内関心領域の解剖学的構造を抽出し、脳情報フロー(BIF)というデータ形式で一元的に格納する。次に、BIFおよび実験で得られた神経活動を制約として参照しつつ、特定の行動変化における課題毎にその解決に必要な機能を体系的に分解した仮説的コンポーネント図(HCD)を作成する。他班の一部の実験については、HCDを参照して実装した脳内ソフトウエアの挙動を、対応する実験課題を表現した仮想環境での行動・神経活動データと比較することで、HCDの妥当性を検証する。そして、BIFに記載された行動変容に関する複数のHCDの比較を通じて、普遍性の高い行動変容に関する知見を得る。
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研究実績の概要 |
脳情報フロー(BIF)データとは、脳参照アーキテクチャ(BRA)の一部であり、脳のメゾスコピックレベルの解剖学的構造における情報の流れを記述するものです。しかしながら、人手で構築することは工数的に困難であるため、その構築作業の効率化を目指しています。本年度の前半期においては、主に論文中の図面から読み取る方法を検討しました。これによると、フローチャートの様に分析しやすい図面については抽出可能であることを確認できました。 統合分散実行環境に関しては、脳におけるアクティブビジョンの機能をBRAデータ化し、主に強化学習の仕組みに基づいて実装しました。これが、視線移動タスクにおいて脳と同様の計算機構で実行可能であることを確認しました。今後はこれを発展させて、BRAで構築したアーキテクチャによって、ヒトが解決可能な眼球運動に関する様々なタスクを実行できる可能性があります。 さらに、BRA駆動開発によって作成したBRAデータの登録、審査、公開を一貫した手順で行うためのシステムとしてBRA Editorial System(BRAES)と公開用のポータルサイトを作成を行いました。これは、学術雑誌における査読管理システムに似たものですが、特に、BRAデータに特化したものです。この作成のためにまず、BRAデータの投稿・審査を中心とする共同作業フローを分析しました。さらにBRAESを利用するためのユーザマニュアルや、実装した環境を移行するための手順書なども作成しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
BIF構築においては、メゾスコピックレベルの脳器官の間の投射情報を得ることが最も重要な課題となります。計画時点では、この情報取得の半自動化は、解剖学的記述のある神経科学論文中の図面に基づいて行うことが効率的であると考えられていました。しかしながら、本年度後半から大規模言語モデル(LLM)を利用することが可能となりました。実際にLLMを用いて、論文の文章から必要な情報を抜き出す試みを行ったところ、その可能性が見いだせてきている。この方針変更のため、現時点では実用的なBIFデータの構築はあまり進んでいません。しかしながら、来年度以降において、その構築を大きく加速できるものと思われます。 統合分散実行環境の改善として、また、「BriCAコア」とは、機械学習器を含む様々な計算モジュールを多数結合してBriCAコアを用いた実装を進めました。BriCAは認知アーキテクチャとして実行するためのソフトウエアフレームワークです。主にその使い勝手を向上させるためにPortの次元数を外から指定できるよう修正するなどを行いました。 当初計画では、BRAデータの公開にむけた活動は、本計画の後半で行う予定でした。しかしながら、BRAデータの一部である仮説的コンポーネント図(HCD)の構築は多くの工数を要する作業であるため幅広く研究者の協力を得られる形にするのがよいと判断しました。このために大幅に前倒しを行い、初年度に、初期バージョンとしてBRAESとポータルサイトを完成しました。今後は、このサイトを運用しつつ、将来的には必要に応じてシステムのバージョンアップをはかる予定です。
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今後の研究の推進方策 |
今後においてBIFデータの構築については、本年において見通しが得られた大規模言語モデルの活用を本格的に進めるが、同時にその信憑性を評価するための技術的な工夫を行う予定です。 また、HCDデータの構築については、BRAデータの投稿サイトを利用して広く研究者からの投稿を促進するとともに、大規模言語モデルを活用してその構築を効率化する方法についても探ってゆく予定です。 脳型ソフトの開発については、主に、既にBRAが作成されている脳領域(海馬体、扁桃体など)を中心に、実装を試すことで、HCDに基づく実装の実現可能性について知見を蓄積し、HCD記述の改良などを行う予定です。 BRAデータの公開については、BRAESを利用して、既存のデータの審査を進めることや、学術研究会などにおいてデータ投稿を推進することでHCDの蓄積を行う予定です。
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