研究領域 | 力が制御する生体秩序の創発 |
研究課題/領域番号 |
22H05170
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
柴田 達夫 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (10359888)
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研究分担者 |
奥田 覚 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (80707836)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
173,550千円 (直接経費: 133,500千円、間接経費: 40,050千円)
2024年度: 28,860千円 (直接経費: 22,200千円、間接経費: 6,660千円)
2023年度: 28,210千円 (直接経費: 21,700千円、間接経費: 6,510千円)
2022年度: 58,110千円 (直接経費: 44,700千円、間接経費: 13,410千円)
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キーワード | バーテックスモデル / フェーズフィールドモデル / 反応拡散系 / オルガノイド / メカノケミカルフィードバック / 細胞骨格 / 細胞膜 / 数理モデル / 理論モデル |
研究開始時の研究の概要 |
複雑な形態形成は、細胞や組織における力学的過程と化学的過程の協調的な相互作用であるメカノケミカルフィードバックを基盤にしており、力学と化学のパターン形成によって生体は自律的に秩序化する。その背後にあるロジックを解明するためには、自律的秩序化プロセスの数理科学による統合的理解の構築が必要不可欠である。本研究では、細胞の力学誘導性のパターニング機構や、それが細胞集団で協調することによって生まれる管腔形成やシートの折れ畳み形成とその機能発現に着目し、多階層に渡る数理モデルの構築によって、生体の自律的秩序化の普遍的な原理を解明する。
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研究実績の概要 |
本年度は,細胞骨格が細胞膜と力学的相互作用をしてどのように細胞の形が決まるのかを理論的に解明するために、フィラメントやそれに結合して力を生成する分子モーターが細胞膜に囲まれた粗視化分子動力学モデルを開発した。まず最初に細胞膜が変形しない場合における細胞骨格の動態を明らかにする研究に取り組んだ。分子モータの力が十分に小さくフィラメントがほとんどランダムに運動をしている場合、フィラメントは枯渇力によって膜の周辺に近寄る確率が減少する。分子モーターの力を大きくすると、フィラメントはこの枯渇力に打ち勝って膜の周辺に近寄ることが出来る。さらに、フィラメントは膜に沿ってネマチック秩序を形成して細胞膜の周辺に集積し、細胞コーテックス様の構造を形成することを明らかになった。次に、細胞膜がフィラメントとの相互作用によって変形する場合を検討した。モーターの力が弱い場合、膜は収縮して細胞の形は不規則になった。モーターの力を上げていくと細胞の形はより円形に近くなり、モーターの力と共にその直径は大きくなっていった。これらのことから細胞の形はフィラメントと分子モータによる細胞膜を押す力と、細胞膜自身の収縮力とのバランスによって決まっていることが明らかになった。
また、本年度は力学過程から生化学過程への作用を定量的に評価するため、培養環境下で立体組織に対して機械的な変形を加えるため力学試験機を開発した。また、この力学試験機を用いた実験により、曲げ変形に対する上皮組織の適応的な機械特性の一端を明らかにした。さらに、サブセルラーレベルの構造や物性から多細胞の長時間動態を予測するための非保存系流体膜モデルを開発した。これらの実験系の構築と数理モデルの開発により、器官形成過程における力学・生化学過程の相互作用を解明する基盤が整いつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,細胞骨格や細胞骨格に関連した因子と細胞膜の力学的な作用により細胞の形が決まる過程を解明するための数理モデルの開発に着手した。アクトミオシン系と微小管系のパラメータのいずれの場合においても数理モデルが動くことを確認した。いずれの場合においても、分子モーターの作用によりフィラメントが運動をし、膜付近に集積を作り出すことが明らかになった。
また、器官形成過程における力学・生化学過程の相互作用を解明するため,実験系の構築と数理モデルの開発に着手した.実験系では,力学過程から生化学過程への作用を定量的に評価するため,培養環境下で立体組織に対して機械的な変形を加えるため力学試験機を開発した.また,この力学試験機を用いた実験により,曲げ変形に対する上皮組織の適応的な機械特性の一端を明らかにした.さらに,数理モデルでは,サブセルラーレベルの構造や物性から多細胞の長時間動態を予測するための非保存系流体膜モデルを開発した.
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今後の研究の推進方策 |
細胞の形態が細胞骨格と細胞膜との力学的相互作用によりどのように決まるのかを解明するために、細胞膜に取り囲まれた細胞骨格モデルにおいて細胞膜が変形するようにモデルを拡張する。また、実際の細胞においてはフィラメントの重合脱重合が重要な役割を果たしているので、それらの過程をモデルに組み入れる。さらに、クロスリンカーを導入することで、細胞骨格の配向や、バンドルを形成する過程を明らかにする。
器官形成過程における力学・生化学過程の相互作用の理解を進めるため,本年度に開発した実験系と数理モデルを用いて,多細胞の力学動態の解析を進める.特に,曲げ変形に対する上皮組織の適応的な機械特性とその分子制御機構の解明に着手する.また,本年度に開発した非保存系流体膜モデルに対して細胞間接着と細胞分裂を導入することで多細胞動態へ拡張する.
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