計画研究
学術変革領域研究(A)
「多種多様な物質の識別」は免疫系が獲得した最も特徴的な能力である。この能力は、生物 が様々な外敵を感知するために進化してきたと考えられているが、近年、自己成分の認識にも関与していることがわかってきた。我々はこれまで、免疫受容体が認識する分子の同定プラットフォームを構築し、複数の自己リガンドを発見してきた。本計画研究では、この方法論を領域内で共有し、免疫センサーが認識する自己成分の戦略的同定を目指す。また、新たに同定した自己相互作用がもたらす生体応答の功罪 を明らかにすることで「免疫受容体による自己認識」が担う高解像度な自己監視機構の実態と免疫学を超えた普遍的な生物学的意義の解明を目的とする。
C型レクチン受容体(CLR)は、病原体や自己の構成要素に存在する糖鎖を認識し、免疫応答を引き起こす。Dectin-1は病原体上のbeta-glucanを認識する最も特徴的なCLRであるが、Dectin-1の内因性リガンド(自己認識)は十分に理解されていない。本研究では、ヒトのDectin-1が、血小板上に発現するCLEC-2のリガンドであることを見出した。生化学的解析の結果、Dectin-1はストーク領域が高度にO-グリコシル化されており、ムチン様タンパク質であることがわかった。さらに、ヒトDectin-1のEDxxTモチーフに結合したシアリル化コア1糖鎖がCLEC-2のリガンド部位となることが判明した。ヒトDectin-1をマウスに発現させると、CLEC-2のリガンドとして知られるPodoplaninの欠損に起因するリンパ管形成不全と致死性表現系が解消された。この発見は、自然免疫受容体が生理的なリガンドとして機能し、糖鎖修飾によって生体恒常性を制御する初めての例である。このように、本研究では、C型レクチンファミリーDectin-1が、O型糖鎖修飾を受け、同じC型レクチンファミリーに属するCLEC-2と会合し、器官形成に寄与することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
免疫受容体が認識する自己標的を同定し、論文として発表した。
引き続き、自然免疫受容体、自然免疫型T細胞が認識する自己分子の同定を戦略的に行う。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (20件) (うち国際共著 6件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 7件、 招待講演 19件)
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