研究領域 | 生体防御における自己認識の「功」と「罪」 |
研究課題/領域番号 |
22H05185
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
和泉 自泰 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70622166)
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研究分担者 |
宇田 新介 山口大学, 情報・データ科学教育センター, 准教授 (20599609)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2025年度)
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配分額 *注記 |
96,590千円 (直接経費: 74,300千円、間接経費: 22,290千円)
2025年度: 20,800千円 (直接経費: 16,000千円、間接経費: 4,800千円)
2024年度: 20,670千円 (直接経費: 15,900千円、間接経費: 4,770千円)
2023年度: 20,280千円 (直接経費: 15,600千円、間接経費: 4,680千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
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キーワード | 自己認識 / 自己成分 / 免疫センサー / オミクス計測 / 数理解析 / マルチオミクス / メタボロミクス / リピドミクス / プロテオミクス |
研究開始時の研究の概要 |
免疫系は専ら非自己病原体を認識して排除する生体防御システムとして考えられてきたが、その後、自己成分(=自己リガンド)も認識することが明らかとなってきた。この現象には、自己を攻撃する有害な「罪」の面だけでなく、生体に有益な応答をもたらす「功」の要素があることが明らかになりつつある。本計画研究では、世界最高レベルの分離・分析・分取技術を用いて、免疫センサー分子が認識する未知の自己成分を包括的に同定する。さらに、同定した自己成分と免疫センサー分子の定量情報および高精度オミクスデータを取得し、自己認識を介した免疫ネットワーク形成の数理モデルの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は、昨年に続き「免疫センサー分子群が認識する自己成分の包括的同定」の課題を中心に研究開発を行った。インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞は一部の糖脂質の立体構造を識別し、免疫を制御していることが知られており、これまで様々な研究が行われてきた。いくつかのα体糖脂質がiNKT細胞を活性化することが明らかになっているものの、哺乳動物はα体糖脂質を合成することができないことが一般的であり、哺乳動物の内因性脂質リガンドは明らかではなかった。 一般的に幅広い脂質分子のクロマト分離には液体クロマトグラフィー(LC)の逆相モードが用いられるが、立体異性体の認識は難しい。そのため、糖脂質の立体異性を識別するiNKT細胞が有するT細胞受容体のリガンド探索には不適である。近年、超臨界流体二酸化炭素を移動相とした超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)が新たな脂質分析技術として発展している。SFCは脂質のような疎水性化合物の分離に優れているが、特に光学活性医薬品の分離など立体異性体分離に優れた分離技術である。脂質リガンドの構造を迅速かつ正確に決定するために、今年度新たにSFCの分離技術と高分解能タンデム質量分析(HRMS/MS)を基盤とした分取・分析・レポーター細胞アッセイを融合した解析プラットフォーム(SFC-FRC/HRMS/MS)の開発に取り組んだ。SFC-FRC/HRMS/MSシステムおよびin-house リピドミクスデータベースにより構成される解析プラットフォームを駆使することにより、哺乳動物の血清、胆汁、組織サンプル中からiNKT細胞を活性化する内生の脂質リガンドの検出と構造決定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題(1)の「免疫センサー分子群が認識する自己成分の包括的同定」については、液体クロマトグラフィー高分解能タンデム質量分析 (LC/HRMS/MS) を基盤とした代謝物の分取・分析システムとレポーター細胞アッセイを融合した解析プラットフォームの開発に加えて、立体異性体の分離が可能な超臨界流体クロマトグラフィー高分解能タンデム質量分析 (SFC/HRMS/MS)システムの開発にも成功しiNKT細胞のリガンドを発見した。概ね解析プラットフォームが構築できたことから、領域内の先生方と広く共同研究をスタートさせた。 研究課題(2)の「自己認識を介した免疫ネットワーク形成の数理モデルの構築」については、研究分担者の宇田らとともに、予備データの取得に着手し、実験デザイン(どのようなデータをどの規模で取得する必要があるのか)および具体的な数理解析法について定期的に議論を重ねながら研究を進めている。 また、領域内のオミクス計測(メタボロミクス・リピドミクス・プロテオミクス)についても、今年度、3件の共同研究が完了し(Oka S, J. Am. Chem. Soc., 2023; Ito E, Sci. Immunol., 2024; Tomiyasu N, Anal. Bioanal. Chem., 2024)、14件のプロジェクトが進行中である。 以上のことから、現時点では、「当初に計画以上に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題(1)の「免疫センサー分子群が認識する自己成分の包括的同定」については、引き続き、「高感度迅速分離・分析・分取・レポーター細胞アッセイ統合解析システム」の高度化や代謝物ライブラリーの拡充を図るとともに共同研究を積極的行う。さらに、開発した解析プラットフォームを使用して、山崎・三宅・改正・木村と共同で全ての自然免疫受容体に対して、あらゆる臓器由来抽出物を用いた総当たり相互作用解析を行い、自己リガンドパネルの網羅的同定を進める。 研究課題(2)の「自己認識を介した免疫ネットワーク形成の数理モデルの構築」については、宇田らと協議しながらオミクスデータの取得および予備データを用いた数理解析の検証を推進していく予定である。 また、領域内の先生方との共同研究(オミクス計測)についても引き続き精力的にサポートしていく。
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