研究領域 | 生体防御における自己認識の「功」と「罪」 |
研究課題/領域番号 |
22H05189
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
木村 元子 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00345018)
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研究分担者 |
那須 亮 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (30466859)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
100,750千円 (直接経費: 77,500千円、間接経費: 23,250千円)
2024年度: 20,670千円 (直接経費: 15,900千円、間接経費: 4,770千円)
2023年度: 20,280千円 (直接経費: 15,600千円、間接経費: 4,680千円)
2022年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
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キーワード | T細胞 / CD69 / γδT細胞 / 腫瘍免疫 / 組織特異性 / 抗腫瘍免疫 / 自然免疫型T細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
T細胞は免疫応答の中枢を担う細胞である。T細胞受容体を介した抗原認識によって活性化する一方で、その制御にはT細胞受容体以外の周辺分子(補助受容体と総称)が不可欠である。申請者は、レクチン様分子CD69が、T細胞上で自己成分を認識する補助受容体として機能することを初めて明らかにした。この知見に立脚し、本計画研究では、T細胞の補助受容体による自己成分認識がもたらす、「功」としての肺特異的な組織保護作用、「罪」としての炎症亢進作用、がん特異的T細胞の疲弊誘導の分子機構を明らかにすることで、これまで知られていない補助受容体を介した自己成分感知の実体とその生物学的意義の解明を目的とする。
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研究実績の概要 |
本計画研究では、「T細胞はどのようにして自己認識を介して自身の環境を把握し、適切な応答を惹起するのか」との問いを解明することを最終目的とし、具体的には以下の4つの課題に取り組むことで、領域全体としての学術変革への貢献を目指している。T細胞による組織や環境特異的な自己成分認識による機能調節機構を明らかにすることで、自己免疫疾患への治療法や、がん免疫療法の新たな方法論の確立と、各臓器に応じた組織常在型T細胞の機能制御へのアプローチも視野に入れた研究を行うことを目的とする。 課題1:自己成分センサーとしてのCD69の新規リガンドの同定では、CD69-CD3ζ導入2B4-NFAT-GFPレポーター細胞を作製した。内在性のCD69の影響を除く必要性を考えたが、その後の検討で、CD69レポーターとしての役割は十分に果たせることが判明したため、網羅的なリガンドスクリーニングを行うべく、共同研究先に細胞を提供した。 課題2:特定のγδT細胞サブセットの自己成分感知を介した恒常性維持機構の解明では、CD69欠損マウスで増加する特定のγδT細胞サブセットのTCRγ鎖、TCRδ鎖の配列を同定した。また細胞生物学的な解析、網羅的な解析により特定のγδT細胞サブセットの恒常性維持に関わる機構の解析を進めた。 課題3:CD69を介した生体の恒常性維持機構と疾患発症制御では、Treg細胞特異的CD69欠損マウスと野生型マウスの肺におけるTreg細胞のscRNA-seq解析、scTCR-seqを行い、CD69欠損により影響を受けている細胞クラスターを同定した。また、がん組織内、並びにがん所属リンパ節に存在するCD69野生型、欠損型がん特異的CD8T細胞のscRNA-seq解析、並びにscTCR-seq解析を行った。 課題4:がんに対する免疫寛容の成立とがんによる「擬自己」化戦略の解明(潜伏)では、担がんマウスにおいて胸腺がどのような影響を受けるのか解析し、腫瘍抗原特異的なT細胞分化への影響を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1:自己成分センサーとしてのCD69の新規リガンドの同定では、CD69-CD3ζ導入2B4-NFAT-GFPレポーター細胞を作製した。内在性のCD69の影響を除く必要性を考えたが、その後の検討で、CD69レポーターとしての役割は十分に果たせることが判明したため、網羅的なリガンドスクリーニングを行うべく、共同研究先に細胞を提供した。これは当初の予定通りの進捗である。 課題2:特定のγδT細胞サブセットの自己成分感知を介した恒常性維持機構の解明では、CD69欠損マウスで増加する特定のγδT細胞サブセットのTCRγ鎖、TCRδ鎖の配列を同定した。また細胞生物学的な解析、網羅的な解析により特定のγδT細胞サブセットの恒常性維持に関わる機構の解析を進めた。レポーター細胞の作成は完了しなかったが、当初の予定では計画していなかった、網羅的な解析を行ったことから、研究は概ね順調に進展したといえる。 課題3:CD69を介した生体の恒常性維持機構と疾患発症制御では、Treg細胞特異的CD69欠損マウスと野生型マウスの肺におけるTreg細胞のscRNA-seq解析、scTCR-seqを行い、CD69欠損により影響を受けている細胞クラスターを同定した。また、がん組織内、並びにがん所属リンパ節に存在するCD69野生型、欠損型がん特異的CD8T細胞のscRNA-seq解析、並びにscTCR-seq解析を行った。これは当初の予定通りの進捗である。 課題4:がんに対する免疫寛容の成立とがんによる「擬自己」化戦略の解明では、担がんマウスにおいて胸腺がどのような影響を受けるのか解析し、腫瘍抗原特異的なT細胞分化への影響を見出した。胸腺へ移動した樹状細胞のscRNA-seq解析は完了しなかったが、がん細胞による胸腺機能への影響は、複数の分子機構が介在していることを新たに見出しており、研究は概ね順調に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究領域「自己指向生免疫学」の目的に則り研究を進めていく。 第一に自己成分センサーによる認識リガンドの同定を目指す。具体的には、各種レポーター細胞を利用する。CD69レポーターは作成済みであり、γδT細胞レポーターは現在作成中である。領域内の網羅的なスクリーニングシステムにてスクリーニングを行う。 第二に、令和4年度に行った、Treg細胞特異的CD69欠損マウスと野生型マウスの肺におけるTreg細胞のscRNA-seq、scTCR-seqデータの詳細な解析を進めることで、CD69欠損により影響を受けている細胞クラスターの性質や詳細について明らかにし、肺の恒常性維持に関わる分子機構を明らかにしていく。 第三に、がん組織内、並びにがん所属リンパ節に存在するCD69野生型、欠損型がん特異的CD8T細胞のscRNA-seq、scTCR-seqデータの詳細な解析を進めることで、がん特異的CD8T細胞の分化運命決定機構について明らかにする。 第四に、がん細胞がどのように胸腺機能へ影響を与えるのか、結果として抗腫瘍免疫応答にどのような影響を与えるのか、詳細に解析を進めていく。
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