研究領域 | 生体防御における自己認識の「功」と「罪」 |
研究課題/領域番号 |
22H05191
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 昌平 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50392113)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
94,770千円 (直接経費: 72,900千円、間接経費: 21,870千円)
2024年度: 20,670千円 (直接経費: 15,900千円、間接経費: 4,770千円)
2023年度: 20,280千円 (直接経費: 15,600千円、間接経費: 4,680千円)
2022年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | 免疫寛容 / 制御性T細胞 / 自己免疫疾患 / 抗原特異性 / T細胞受容体 / 自己抗原 |
研究開始時の研究の概要 |
制御性T細胞は、T細胞受容体を介して自己抗原を認識して分化・活性化し、自己を傷害する病原性T細胞の反応を抑制して自己に対する免疫寛容を確立・維持している。本研究では、免疫応答を制御する側とされる側のT細胞受容体が認識する自己の分子的実体を同定し、制御性T細胞が自己に対して特異的に免疫寛容を成立させる分子基盤を解明する。そして、制御性T細胞の自己反応性が非自己、擬自己に対する免疫応答に与える影響を解析し、その「功」と「罪」を明らかにする。
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研究実績の概要 |
以下の3項目につき研究を進めた。 (1) 組織選択的自己免疫疾患の抑制に紐付いたTCRクロノタイプの機能解析:野生型マウス肺に浸潤してクローン増殖し、Foxp3 A384T変異マウス肺で欠損するTCRクロノタイプのうち、Th2型Treg選択的に発現する#4について、TCRレトロジェクニックマウスの作製・解析を進めた。#4導入Tregは、ポリクローナルな野生型Tregが分化する競合条件下では肺所属リンパ節には集積し活性化するものの肺には集積できなかったが、ポリクローナルなA384T Tregとの競合条件下では肺にも集積しTh2型Tregに選択的に分化した。このことから、#4 Tregは野生型Tregとニッチを競合するために肺に集積できないのに対し、A384T変異によりニッチが空くことで肺に集積すると考えられた。 (2) Th1型Tregサブセット分化における抗原特異性の寄与:Th1型の表現型を示すTreg TCRクロノタイプ#1についてレトロジェニックマウス作製・解析を進めた。ポリクローナルな野生型Tregが分化する競合条件下で、#1導入TregはTh1型Tregに選択的に分化したことから、TCR配列(抗原特異的シグナル)依存的なTh1型Treg分化メカニズムの存在が示唆された。 (3) 末梢リンパ組織におけるTreg TCRレパトア選択機構:Tregの分化成熟段階を追ってTCRレパトアを比較した。その結果、Tregのレパトアは、末梢への移出や末梢での成熟よりも、活性化に伴い最も大きく変化することがわかった。さらに、活性化とともに増殖するTregクローンは個体間で異なるものの、個体間で共通して選択される、類似した配列からなるTCRクラスターが存在することを見いだした。このことから、これらTCRクラスターは個体間で共通する自己抗原を認識して選択される可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着目しているTCRクロノタイプについて、研究計画に従ってレトロジェニックマウスの実験系を確立し、機能解析を進めてきた。クロノタイプ#1については、肺組織選択性はないものの、Th1型Tregに選択的に分化することを明らかにし、従来提唱されている抗原非特異的シグナル(サイトカインシグナル)によるTh1型Treg分化メカニズムとは異なった、抗原特異的シグナル依存的なTh1型Treg分化メカニズムが存在することを明らかにした。クロノタイプ#4については、肺組織選択的に集積・活性化し、Th2型Tregに分化すること、肺においてはポリクローナルな野生型Tregと競合することを見いだし、組織における「Tregニッチ」の存在を明らかにした。「Tregニッチ」の分子実体の一つは抗原であると考えられる。 また、これら当初計画した研究に加え、リンパ組織TregのTCRレパトア解析から、個体間で共通して増幅された、類似したTCR配列からなるクラスターを同定した。これらはエフェクター・メモリー型Tregに選択的に発現し、リンパ組織の樹状細胞に反応することを示唆する予備的知見を得ており、これら類似したTCRが共通の自己抗原を認識する可能性が示唆された。 以上の経緯・結果から、本研究は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
着目しているTCRクロノタイプにつき、TCRレトロジェニックマウスの作製・解析を進め、炎症抑制機能を賦与できるか検討する。また、詳細な解析を可能にするためにTCRトランスジェニックマウスの作製も進める。そして、これらTCRクロノタイプ(特に#4)を発現するTregがどのようなTCRを発現した通常型T細胞を抑制するのか、#4発現Tregの存在下と非存在下でA384Tマウス肺のTconvのTCRレパトア解析を行い、#4発現Treg存在下でクローン増殖が抑制されるTCRクロノタイプを同定する。抗原同定については、リンパ組織のエフェクター・メモリー型Tregに発現するTCRクロノタイプについては、末梢リンパ組織の抗原提示細胞に提示されたペプチド・ライブラリーのスクリーニングを行う。肺組織TregのTCRクロノタイプについては、和泉グループと共同研究を進め、肺組織から抽出したタンパク質をペプチドに断片化して分離・分取し、目的のTCRを発現させたハイブリドーマを活性化させる画分を同定し、そこに含まれるペプチドを質量分析により決定する。
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