| 研究領域 | 光の極限性能を生かすフォトニックコンピューティングの創成 |
| 研究課題/領域番号 |
22H05194
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| 研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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| 配分区分 | 補助金 |
| 審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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| 研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川上 哲志 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (20845523)
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| 研究分担者 |
VARGAS DANILO 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (00795536)
小野 貴継 九州大学, システムLSI研究センター, 准教授 (80756239)
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| 研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2025年度)
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| 配分額 *注記 |
118,820千円 (直接経費: 91,400千円、間接経費: 27,420千円)
2025年度: 20,800千円 (直接経費: 16,000千円、間接経費: 4,800千円)
2024年度: 20,670千円 (直接経費: 15,900千円、間接経費: 4,770千円)
2023年度: 20,280千円 (直接経費: 15,600千円、間接経費: 4,680千円)
2022年度: 36,010千円 (直接経費: 27,700千円、間接経費: 8,310千円)
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| キーワード | 光コンピューティング / 計算機システムアーキテクチャ / 大規模言語モデル / 光電融合計算機システム / 光物理リザーバー / 自己組織化動的方程式 / 光電融合回路 / 浮動小数点演算 / 光リザーバーコンピューティング / 脳模倣アルゴリズム / 機械学習 |
| 研究開始時の研究の概要 |
本研究では,光の物理現象を用いた次世代コンピューティング基盤の構築を目的とする.具体的には,光微分演算器技術をベースとし光電融合計算機システムとして昇華させることで,光の極限性能を生かすフォトニックコンピューティング技術の発展に貢献する.また,電気メモリを含めた光演算器との融合によってより効率的な光電融合計算機アーキテクチャを構築する.さらに,システムレベルでの最適化と汎用性向上のための処理の近似変換を実現するソフトウェア実行基盤を構築する.以上により,光基盤と応用の最適結合を実現するシステム構造の研究を完遂する.また,本研究は領域全体が指向する光コンピューティング研究を加速させる基盤となる.
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| 研究実績の概要 |
本研究では,光電融合計算機の構築に向けて,デバイス/回路/アーキテクチャ/アルゴリズムを横断的に扱う統合的な評価環境の構築と,その環境を用いたシステム設計空間探索を推進している. 2024年度は,光計算の実効性能および電力性能を多面的に検討するため,(1)各種光演算器の設計およびシステムレベル性能評価,(2)ノイズを考慮した精度とスケーラビリティ評価,(3)光物理現象を活用したロバストな新アルゴリズムの創出を実施した. (1)では,[a]光電融合浮動小数点乗算器および[b]波長・空間多重を活用した光行列演算器を提案し,それらの性能・電力評価を行った結果,[a]最大88%のレイテンシ・最大42%の消費エネルギー削減と[b]188TOP/sの高スループット実証を達成した.これらは従来CMOS技術では実現困難であり,光の本質的な並列性・高速性の優位性を定量的に示した成果である. (2)では,光演算器の物理誤差に基づく大規模精度評価シミュレータを構築し,各種光演算器の実機測定に基づくノイズモデルを統合した精度評価を行った.また,量子化・誤差耐性向上に向けた学習アルゴリズムの初期設計も進めており,今後の応用に向けた精度最適化の展望を示した. (3)では,光物理リザーバーと自己組織化力学方程式(SODE)を融合した新しい分類パラダイムを提案し,ノイズ耐性と適応性に優れることを確認した.従来のMLPやESNに比べて高いロバスト性を示し,最適化に依存しない新たな計算モデルの実用化可能性を提示した. これらの研究により,光電融合計算機のスケーラブルかつ実効的な設計指針と,物理現象に基づく新たな計算原理の基盤が明確化されつつある.
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2024年度は,光電融合計算機の実効性能とスケーラビリティをより高精度かつ多面的に検証するため,回路・アーキテクチャ・アルゴリズムの各階層にわたり,複数の拡張と検証を行った. まず,(1)光演算器の設計においては,従来の浮動小数点乗算器に加え,新たに加算器の回路提案,および波長・空間多重を統合した光行列演算器の設計を行い,いずれもシステムレベル性能・電力評価を通じて,大規模LLM処理を含む次世代AI応用に対する実効性を確認した.領域外の共同研究先との協業により,実機測定に基づくPoCも実施した. (2)精度評価では,光演算器のノイズ特性を抽象化して大規模モデルを迅速に評価可能なシミュレータを開発し,NTTとの共同による実機測定ノイズを統合することで,シミュレーションの現実性と汎用性を大幅に向上させた.さらに,量子化・誤差耐性向上に向けた新たな学習アルゴリズムの設計にも着手しており,今後のモデル展開にも対応可能な基盤が整いつつある. (3)光物理リザーバーと自己組織化力学方程式(SODE)を融合した分類モデルを提案し,ノイズ付加や入力撹乱下でも高精度を維持する頑健性を示した.この研究は,他計画研究代表者および新規分担者との連携によって創出されたものであり,当初計画にはなかった研究展開が新たに加わった点でも重要である. これらの成果の一部は既に国際学会や論文誌にて発表・掲載されており,残りも投稿準備を進めている.回路・システム・アルゴリズムのすべての観点で当初計画以上の進展が見られ,本研究は飛躍的に深化していると判断される. 以上から,本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる.
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| 今後の研究の推進方策 |
来年度は,(1)光演算回路と周辺回路を統合した光電融合計算機システムの実効性能評価,(2)精度・電力トレードオフを考慮した学習アルゴリズムの設計,(3)光物理リザーバーによる計算アルゴリズムの応用展開を実施する予定である. (1)では,これまでに設計・評価してきた光浮動小数点演算器(加算・乗算)および超並列光VMMに加えて,メモリ,ADC/DAC,制御回路などを含む電気系を統合したシステム評価環境を高度化する.この評価環境により,従来は回路単体レベルにとどまっていた評価を,実効性能・システムエネルギー・設計上の制約などを含む全体設計空間の中で行えるようにする. (2)では,特にADC精度や量子化の影響が大きい光電融合システムに対して,ノイズ耐性と精度を両立させる学習アルゴリズムを設計する.すでに実測ノイズに基づいた精度評価環境は構築済みであり,今後はこの環境を用いたノイズ条件下でのロバスト学習法の探索や,モデル量子化によるエネルギー最適化と精度保持のトレードオフ分析を行う予定である.また,これらの学習法は,大規模LLMモデルへの拡張性を念頭に置き,学習済みモデルの量子化転送に最適化された手法とする. (3)では,SyncMapとSODEをベースとした最適化不要の分類・意思決定モデルをさらに発展させ,教師なし学習や生成モデルへの展開を試みる.具体的には,特徴抽出や前処理を省略した純物理層でのクラスタリングや予測機構の設計を進めるとともに,入力変数の構造に応じて自己組織的に反応するアルゴリズム設計に取り組む.加えて,C-01班やB-01班と連携し,これらのアルゴリズムの光デバイスへの実装・実験的評価にも着手する予定である. 以上により,システム・アルゴリズム・デバイスの観点から,光電融合計算機の実装可能性と汎用性を飛躍的に高めることを目指す.
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