研究領域 | 活イオン液体の科学 |
研究課題/領域番号 |
23H03825
|
研究種目 |
学術変革領域研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岩橋 崇 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (30402423)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
32,110千円 (直接経費: 24,700千円、間接経費: 7,410千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 28,470千円 (直接経費: 21,900千円、間接経費: 6,570千円)
|
キーワード | イオン液体 / 非線形分光 / 表面・界面 / 濃厚電解液 / 深共晶溶媒 / 電気二重層 / 活性化エネルギー / 電位応答 / SEI / 電子状態 / 電極電位 |
研究開始時の研究の概要 |
反応に寄与するイオン「活イオン」を高濃度に含む「活イオン液体」は、既存の液体材料を変革し得る新奇液体材料群である。二次電池電解液や有機/無機反応媒体として、活イオン液体が実現する特徴的な反応・機能は、超高濃度活イオン・自由溶媒不在の特異な「活イオンリッチ反応場」に由来する。しかし、当該反応場の反応・機能要因の物理化学的な理解は極めて不十分である。本研究は、分光計測各種を用いて活イオンリッチ反応場の構造を解明し、“活イオン液体の物理化学”の端緒を開く。そして、活イオンリッチ反応場の構造-機能相関を明らかとし、活イオン液体の基礎学理を幅広い応用展開へと繋ぐ橋渡し役を担う。
|
研究実績の概要 |
本研究は、活イオンリッチ反応場の物理・電子構造をin situ計測することで、活イオン液体の特異な反応・機能要因を明らかにすることを目指す。2023年度は活イオンリッチ界面のin situ計測技術の確立を試み、下記成果を得た。 ・赤外-可視和周波発生振動分光(SFG)系の構築:活イオンリッチ界面の分子配向・数密度の定量解析と微視的環境を検討するため、SFG分光系を構築した。モデル活イオンリッチ界面のイオン液体/電極界面におけるイオン吸着脱離の電位応答をSFGにて追跡し、当該界面におけるイオン脱離の活性化エネルギーの定量化を実現した。当該定量化技術は電気化学反応に寄与する活イオンの脱溶媒和エネルギーの定量化にも適用でき、特異な電気化学反応要因の定量的検討の実現が期待できる。本成果をまとめた学術論文が一報公開された。 ・表面増強赤外/ラマン分光(SEIRAS/SERS)系の構築:活イオンリッチ界面の反応追跡を目的として、SEIRAS分光系を構築した。充放電反応に寄与する固液界面相(SEI)形成をSEIRASにて追跡し、活イオン液体の負極表面SEIが活イオンに溶媒和したアニオン由来であることを明らかとした。また、ラマン分光系を構築して活イオン液体の一種である深共晶溶媒の溶液構造を評価し、水素結合ドナー・アクセプター混合比に依存して活イオンの溶媒和構造が変化することを明らかとした。SERS分光系は現在測定条件を最適化している。 ・活イオン液体の光電子分光計測技術の確立:反応に寄与する活イオンの電子構造計測から、活イオン液体中Li+の1s軌道エネルギーが活イオン濃度に依存して変動することを明らかとした。これは、活イオン液体のリチウムイオン濃度に依存した、リチウム酸化還元電位の特異的シフトと相関すると考えられる。現在は分子動力学計算も用いて電子構造と酸化還元電位との相関性を精査している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記述したとおり、活イオンリッチ界面のin situ計測技術の確立は概ね完了した。なお、当初技術確立を予定していた軟X線発光分光(SXES)と第二次高調波発生分光(SHG)について、SXESは放射光施設のビームラインの都合により一時的に中断、SHGは分光器・検出器の精度の問題で未達であるが、代替としてX線光電子分光による活イオンの占有準位の電子構造計測、逆光電子分光によるLUMO、あるいは活イオンの非占有準位の直接計測の技術確立を並行して進めており、これらが実現すれば当初予定以上の成果が期待される。以上から、当初の研究計画の大きな遅延はなく、進行状況は「概ね順調に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記述したとおり、2023年度は活イオンリッチ界面のin situ計測技術各種の確立を試み、当該界面の物理構造・電子構造計測を概ね実現するにいたった。そこで、2024年度は引き続きSERS分光系の構築、ならびにXPS・IPESによる活イオン液体の占有準位・非占有準位の電子構造計測の実現を図る。これと同時に、下記のように活イオン液体の応用展開を担うB班と協同することで、確立した計測技術群を実用的な活イオンリッチ界面の物理・電子構造のin situ計測に展開する。 【B01班(山田)との協力】高性能な二次電池の充放電反応場となる活イオンリッチ界面のin situ計測 → 溶媒和活イオンの吸着・脱溶媒和過程のin situ計測に基づく高機能な固液界面相(SEI)形成、ならびに充放電反応の物理構造要因の理解 → 電解液中活イオンの電子構造の直接計測に基づく充放電電位の特異なイオン濃度依存性の要因解明 【B02班(鈴木)との協力】難溶性の生体関連材料を溶解させる活イオン液体の固/液界面のin situ計測 → 固体材料の溶解現象の起点となる固/液界面の微視的構造・相互作用計測に基づく溶解メカニズムの解明 【B03班(西)との協力】特異な無機ナノマテリアル合成を可能とする活イオン液体の液/液界面構造のin situ計測 → 溶媒和活イオンの吸着構造・相互作用のin situ計測による特徴的な無機化学反応の要因解明 上記から活イオン液体が可能とする多様な活イオンリッチ反応場の機能要因を解明し、B班にフィードバックすることで、用途に応じた活イオン液体の適切かつ明瞭な構造設計指針の構築を目指す。
|