研究領域 | 分子触媒・反応場・反応解析法の革新と協奏:CO2光多電子還元の学理構築 |
研究課題/領域番号 |
23H03831
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 慧 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80755835)
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研究分担者 |
山内 幸正 九州大学, 理学研究院, 助教 (50631769)
中野 遼 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (30835731)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,980千円 (直接経費: 34,600千円、間接経費: 10,380千円)
2024年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2023年度: 15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
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キーワード | 二酸化炭素 / 分子光触媒 / 遷移金属錯体 / 多電子還元 / 炭素-炭素結合形成 / CO2変換 / 光多電子還元 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、光エネルギーおよび遷移金属錯体を用いた多電子還元/炭素-炭素結合形成反応に基づいて、CO2を原料として多様な炭化水素を合成する分子触媒技術の開発に取り組む。具体的には、[1]CO2の多電子還元によるC1炭化水素合成、[2]CO2あるいはC1還元種間の炭素-炭素結合形成によるC2炭化水素合成、[3]CO2とエチレン間の炭素-炭素結合形成によるCn炭化水素および共重合ポリマー合成を標的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は、光エネルギーおよび遷移金属錯体を用いる二酸化炭素(CO2)の多電子還元/炭素-炭素結合形成の基礎学理構築と、CO2を原料として多様な炭化水素を合成する分子触媒技術の開発を目的とする。初年度となる2023年度は、主として各標的反応を実現するための触媒分子の設計について検討した。研究の遂行に当たっては、オンラインにて定期的に班会議を開催し、各構成員の研究の進捗を共有するとともに、互いに助言を行うことで、班全体の研究の発展に努めた。 C1炭化水素への変換を目指すテーマ[1]では、CO2をメタノールやメタンへと変換することが期待される分子性触媒の設計を、これまでに得られている知見および量子化学計算により再検討した。その結果、CO2還元の副反応である水素生成を抑制するためには、金属錯体触媒の還元電位をより正に転じさせる環状配位子系の選択が有効であると判断した。そこで、適切な構造を有する環状配位子を新たに設計し、一連の合成検討を経てその合成に成功した。C2炭化水素への変換を目指すテーマ[2]では、まず種々の金属錯体のCO2雰囲気下における光反応挙動を調べ、C2還元種の生成を光化学的に達成するための研究指針について検討した。その結果、COを還元中間種とする触媒系の構築が有効であることが示唆された。そこで、CO2の二電子還元と、続く炭素-炭素結合形成の両反応を実現する触媒分子を探索し、適切な金属中心と支持配位子の組み合わせを見出した。Cn炭化水素への変換を目指すテーマ[3]では、主としてCO2・エチレンからアクリル酸を合成するピンサー型金属錯体の分子設計について検討した。種々の実験および量子化学計算の結果より、効率的にメタララクトンを形成する支持配位子の構造を明らかにし、光触媒反応開発の端緒となる結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C1炭化水素への変換を目指すテーマ[1]では、新たに設計した新規環状配位子の合成について、合成経路が未知であったこと、また多くのステップ数を要すると推定されたことから、その達成にある程度の困難を予想していた。しかし、検討が当初の計画以上に進捗した結果、年度中に合成を達成することができた。また、C2炭化水素への変換を目指すテーマ[2]では、標的反応の実現には至らなかったものの、触媒サイクルの最重要過程である、C1配位種間の光化学的な炭素-炭素結合形成を実現するための端緒となる結果を得ることができた。以上の経過を総合し、本計画研究の進捗は概ね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2023年度中に各構成員が定めた研究指針にしたがい、標的反応を実現するための触媒設計について検討を進める。 C1炭化水素への変換を目指すテーマ[1]では、新たに合成した環状配位子について、さらなる合成法の検討により収量の向上を図る。これと並行し、金属イオンの錯化反応に関する検討を行い、同環状配位子を有する新規金属錯体を合成する。さらに、得られた錯体の酸化還元挙動を電気化学測定により明らかにするとともに、CO2多電子還元反応におけるその触媒作用について評価する。C2炭化水素への変換を目指すテーマ[2]では、2023年度に決定した研究方針に基づき、COを中間還元種とする光触媒的なC2炭化水素合成の実現に取り組む。特に、金属錯体へのCO配位と光化学的な炭素-炭素結合形成過程に主眼を置き、分光学的および計算化学的手法に基づく触媒条件の最適化を行う。これと並行して、同錯体によるCO2の光還元過程について検討し、最終的には両素過程の融合による触媒サイクル構築を目指す。Cn炭化水素への変換を目指すテーマ[3]では、2023年度に最適化した配位子設計に基づき、ピンサー型金属錯体を用いた光触媒的アクリル酸/ラクトン合成の実現に取り組む。特に、CO2・エチレンの酸化的環化によって生成するメタララクトンの光化学的開環に主眼を置き、同過程が効率的に進行する触媒条件を明らかにする。
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