研究領域 | マルチスケール4D生物学の創成 |
研究課題/領域番号 |
23H03846
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
片岡 直也 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (20572423)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2024年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
2023年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
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キーワード | 非侵襲神経細胞イメージング / in vivo 4D イメージング / 心身相関 / ストレス / 老化 / 機能低下開始ポイント / 低侵襲神経ネットワークイメージング / 非侵襲的in vivo イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
長期ストレス暴露に伴う生体機能の低下した動物はストレス耐性の低下から様々な疾患に病態が進行するが、生体の機能低下が始まるメカニズムは未だ明らかになっていない。本研究計画では、若齢から老齢まで同一個体から長期間にわたって脳内神経ネットワーク様式の変容を全脳包括的に捉えるため、全時間スケールと全空間スケールをカバーするライトフィールド技術を応用し、非侵襲 in vivo 4D 神経ネットワークイメージング開発を行う。様々な情動刺激に対する神経活動変化情報と、体温や血圧・脈拍変化などの末梢生理機能情報を統合し、AI・機械学習を用いて「生体機能低下ポイント予測モデル」構築を行う。
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研究実績の概要 |
加齢や長期ストレス暴露に伴う生体機能の低下した動物はストレス耐性の低下から様々な疾患に病態が進行するが、生体の機能低下が始まる(機能低下開始ポイント)メカニズムは未だ明らかになっていない。老化や心理ストレスの指標が曖昧であり、ストレス負荷による神経ネットワーク変容の解析が困難であることがメカニズム解明を難しくしている原因と考えられる。そこで、本研究計画では、若齢から老齢まで同一個体から長期間にわたって脳内神経ネットワーク様式の変容(破綻)を全脳包括的に捉えるため、ライトフィールド技術(LF 技術)を応用し、非侵襲 in vivo神経ネットワークイメージング開発を行う。様々な情動刺激に対する神経活動変化情報と、体温や血圧・脈拍、ストレスホルモン放出などの末梢生理機能情報を統合し、AI・機械学習を用いて「生体機能低下ポイント予測モデル」構築を行う。我々はストレス神経回路研究を行ってきた経験から、高齢者の心身機能低下の原因も「こころ」と「身体」をつなぐ視床下部を中心とした神経路の機能低下(破綻)が要因ではないかと仮説をたてた。老化は個人差も大きく、心理ストレスも主観的であるため、視床下部をハブとするストレス神経路の機能低下開始ポイントを明確に捉えることが出来れば、様々な疾患に移行する前に備えることが可能になると考えるに至った。 本研究計画では、若齢から老齢まで経時的に同一個体から生体機能低下ポイントを正確に把握するため、前頭前皮質を中心とした脳内神経ネットワーク様式の変容(破綻)イメージング解析情報(マルチファイバーフォトメトリ)と、体温やストレスホルモン放出などの末梢生理機能情報を統合し、低侵襲網羅的神経ネットワーク解析技術開発を行う。さらに、若齢から高齢マウスまで同一個体で3D観察するための技術開発を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、本研究計画では、社会的敗北ストレスや拘束ストレス、電気ショックストレスなど様々な情動刺激に暴露したマウスの神経活動情報と末梢生理反応記録を若齢マウスから老齢マウスを用いて行う計画であった。複数の脳領域の神経活動を同時記録可能なマルチファイバ-フォトメトリーと末梢生理反応計測ソフトウェアを同期させたシステム構築を行った。当初は、全く異なるメーカー間の機器の接続方法に様々な問題が生じ、その解決に時間を要してしまった。しかしながら、昨年度末から安定して神経活動と末梢生理反応の同時記録が行えており、項目1とした低侵襲網羅的神経ネットワーク解析技術開発は計画通り行う事ができた。しかし、活動記録が現在は若齢マウスのみになっていることから、次年度は老齢マウスも心理ストレスに暴露することで、神経活動と末梢生理反応記録を行う計画である。 さらに、脳深部3Dイメージングの為の技術開発の準備として、実体顕微鏡を導入し、脳の外からGFPなどのシグナル観察が可能かどうか検討を行った。AAVを用いてマウス海馬神経細胞群にGFP を発現させ、潅流固定した脳組織の観察を行った。脳の外から蛍光観察するため、1細胞ごとの神経細胞イメージングは不可能であるが、神経細胞に発現したGFPの蛍光(バルク蛍光)の観察を行う事ができた。本研究計画は解像度の良い神経イメージングの必要は無いものの、安定した蛍光イメージングが可能になるようにCMOSカメラの撮影条件の検討などを継続する。また、海馬より深い脳領域にGFPを発現させた脳サンプルでは蛍光観察が困難であったことから、今後は励起光強度の調整などを検討する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度に完成した低侵襲網羅的神経ネットワーク解析技術を用いて、若齢マウスから老齢マウスに様々な心理ストレスを与え、神経活動と末梢反応を経時的に記録を行う。特に老齢マウスは送信機の埋め込みやウイルス注入など侵襲性の高い手術に対して脆弱な可能性があることから、手術時は慎重に作業を行う必要がある。 また、脳深部3Dイメージングについても、条件検討を重ねる。現在は固定脳サンプルを用いたGFPの観察にとどまっているが、今後はGCaMP6 などを脳に発現させた生きたマウスの脳深部イメージングを開始する。GECIを観察するためには励起光が必要であるが、この励起光を脳内に届けるため、励起光強度の検討を行う。本研究はLF技術の応用を視野に入れていることから、瞬時に3D観察可能なLF撮影を行える励起光強度を調整する。また、現在用いている実体顕微鏡の対物レンズは非常に太く、励起光を照射するとマウス全体に励起光が照射されてしまう。これを避けるため、今後は対物レンズとマウスの間に3Dプリンタで作製した励起光を局所に照射する筒を導入する。研究開発当初はまず神経細胞の発光観察を行う予定にしていたが、固定サンプルを用いて脳の外からGFPが観察できたこと、発光では時間分解能が悪いことなどを考慮し、今後はGCaMP などのGECI を用いた蛍光イメージング開発を行うこととした。さらに時間分解能に優れるLF観察は光毒性なく蛍光イメージングを行うことが可能なことからも、今後は蛍光イメージング開発に集中して開発を継続する。LFを用いない脳イメージングの先行研究では、より侵襲性の低い方法として頭蓋骨を残したままCa2+イメージングを行う方法も存在することから、頭蓋骨の有無やその撮影条件の検討も行う予定である。
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