研究領域 | 複雑な社会を維持する知性の源流を探る「認知進化生態学」の創成 |
研究課題/領域番号 |
23H03869
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
佐藤 成祥 東海大学, 海洋学部, 講師 (40723854)
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研究分担者 |
杉本 親要 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 助教 (00813718)
小野 廣記 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (40867602)
岩田 容子 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (60431342)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
23,790千円 (直接経費: 18,300千円、間接経費: 5,490千円)
2024年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2023年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 頭足類 / 認知 / 繁殖生態 / 摂餌戦略 / 防御 / 摂餌探索 / 摂餌トリップ / マダコ / ヒメイカ / 精子貯蔵 / 求愛 / スナダコ / 脳構造 |
研究開始時の研究の概要 |
霊長類や鯨類等の高等脊椎動物は、群れ内の複雑な社会関係を背景に認知機能が発達し、高度な知性を獲得したと言われている。頭足類は脊椎動物とは独立に高い認知能力を進化させているが、頭足類においても認知能力と社会性とは直接的な関係は見られない。本研究は、非常に発達した認知能力を示すにも関わらず単独性であるタコ類等を含む、様々な頭足類を対象に、摂餌や繁殖、対捕食行動などの生存に直接関係するイベントにおける縄張りや互恵行動といった個体間相互作用によって社会認知能力は進化してきたことを検証し、頭足類の高度に発達した知能が進化した過程、独自に獲得した中枢神経基盤の解明により、社会的知性仮説の再定義を目指す。
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研究実績の概要 |
墨を使った対捕食者行動を通した高度な認知能力の検証についての研究テーマでは、イイダコを対象に、どのような場合で墨を吐き出すかの行動実験をおこなった。底に座っている状態では墨は吐かず、遊泳中に墨を吐くことが確認できた。しかし、どのような状況で墨をどう利用するかについては突き詰めることはできなかった。 次に、タコ類の野外での社会関係の検証と探索行動への影響に関する成果として、マダコが営巣する隠岐の島沿岸での二枚貝を中心とした貝類相とその資源量を調べるとともに、野外観察によって、そのうち資源量が多いシラオガイを好んで利用していることを明らかにした。さらに、水中タイムラプスカメラによって、マダコの摂餌トリップに長時間と短時間の二種類があること、またクジャクガイなどの固着性二枚貝を多く持ち帰っていることを明らかにした。 繁殖における他個体のステイタス認知検証においては、オーストラリア沿岸域に生息するオーストラリアヒメイカを飼育環境において繁殖行動を観察し、これまでに知られていない特別な精子貯蔵器官を保有し、そこに雄が精子塊受け渡す際は、雌が特別なボディパターンを示していること。一方、雌がこのようなボディパターンを見せない場合は、この特別製の精子貯蔵器官ではなく、体外に精子塊を受け渡していることを発見した。 また、社会認知や生殖に関する脳神経領域の今日発達の検証についての研究テーマでは、その飼育実験の基盤となる種として、イイダコとスナダコがふさわしいことが予備観察によって明らかとなり、飼育系を確立させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タコの野外観察と、繁殖におけるステイタス認知に関する二つの研究テーマでは、明確な研究成果を得ることができた。墨についても今後の指針となる結果は得られたように思われる。さらに、飼育環境の設備が課題であった脳神経領域と社会認知に関する研究テーマにおいても、まだ本実験はスタートしていないものの、予備実験において対象種とその飼育手法を絞ることができた。よって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度から、水中ドローンとラジオ発信機を使って、マダコの摂餌トリップをより詳細に観察する。すでに必要な物品はめどが立っているため実行自体は問題ないと思われるが、受信機による位置情報の精度や、発信機の脱落などの不安要素があるため、その様子を見る一年とする予定である。 昨年度の知見を踏まえて、脳神経領域の実験は今年度から本格的に始動する。飼育から、実際に脳を固定できるまでが最低限の目標である。 また、イイダコを使った対捕食者行動の実験については、カメラを近接用と広角用の二つのカメラを用意することで、その利用方法を詳しく解析する。ただし、これに関してはまだしっかりとした実験手法が確立できていないため、それに付随して防御に対する認知機能の影響を見るために、現在着手中のアオリイカによるボディパターンの研究もこの研究テーマに加え、同時に実験を実施する予定である。
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