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動物の自己意識とこころの検討:魚類、頭足類、甲殻類の鏡像自己認知研究から

計画研究

研究領域複雑な社会を維持する知性の源流を探る「認知進化生態学」の創成
研究課題/領域番号 23H03872
研究種目

学術変革領域研究(B)

配分区分補助金
審査区分 学術変革領域研究区分(Ⅳ)
研究機関大阪公立大学

研究代表者

幸田 正典  大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特任教授 (70192052)

研究分担者 高野 裕治  人間環境大学, 総合心理学部, 教授 (00424317)
吉田 将之  広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (70253119)
関澤 彩眞  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (50769065)
武山 智博  岡山理科大学, 生物地球学部, 准教授 (70452266)
松本 一範  香川大学, 教育学部, 教授 (90452664)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2025年度)
配分額 *注記
26,390千円 (直接経費: 20,300千円、間接経費: 6,090千円)
2025年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2024年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
キーワード内面的自己意識 / 内省的自己意識 / 知性 / カンブリア爆発 / 意識 / 鏡像自己認知 / 非言語的思考 / 自己概念 / レムノンレム睡眠 / エピソード記憶 / 概念形成 / 写真自己認知 / 自己意識 / 真の個体識別 / 顔認識神経
研究開始時の研究の概要

複数の小型魚類、マダコ、ザリガニの鏡像自己自己認知、写真自己認知実験を行なっていく。これにより、無脊椎動物を含めた動物の自己意識の起源がどこまで遡れるのか、その解明に挑戦する。特に、魚類の自己意識・自己認識に関与する脳神経の役割の解明は脊椎動物の中でも魚類だからこそできる面もあり、その成果が期待される、また、これらの具体的実験成果をも踏まえ、動物全体としての自己意識の起源は相当に古くまで遡るだろう、との理論的枠組みを構築する。
また、自己意識がメタ認知が不可欠であると考えられるため、メタ認知そのものの研究、さらに思考に不可欠なエピソード記憶の実証も魚類、マダコで行っていく。

研究実績の概要

研究の遂行は概ね順調に進んでいる。ホンソメワケベラを対象とした、レムノンレム睡眠は昨年の経験を踏まえ、高精度でのビデオ撮影ができた。現在解析を進めているが、この成果で魚類で初めてのレムノンレム睡眠が行動睡眠から言えそうである。さらに昼間の恐怖体験が睡眠に与える成果も予想通りの成果で、恐怖体験した夜の睡眠は「うなされる」ことが多いことがわかり、いかにも夢を見ているかのような印象である。
また鏡像自己認知を利用した、自己意識の形成と維持過程についても、初年度としては大きな前進があった。大脳を除去した個体は鏡像自己認知をすることができない。しかし、鏡像自己認知ができた個体の大脳を除去しても、その個体は鏡像自己認知の能力を維持していたのである。このことは、鏡像自己認知の形成には大脳が必要であるが、その能力は大脳以外で保持されていることが示された。これは我々が考えている、「中央実行系」が中脳に存在するとの仮説に沿うものであり、次年度ではさらに突っ込んだ実験を実行していく。
鏡像自己認知をアメリカザリガニ・メダカで行う実験も一定進んでいる。ザリガニでは、同種個体と鏡像に対する反応に明らかな違いがある。この違いは、鏡像自己認知している可能性が高いことを示唆している。次年度はマークテストのマークを改良しと入り組む。また、メダカも顔認識が鰓蓋の「小判模様」であることがほぼ示された。マダコの鏡像自己認知についても、マークの開発が課題である。
概念は動物の内的側面を探る上で極めて重要であるが、これまで動物で十分に示されたことはない。それは、これまで連合学習を示す実験系でなされてきたからである。今回概念形成を示す予備的実験を行い、一定の成果を得た。
ハイギョの歩行に関する自己意識に関する研究も開始した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

いくつかの項目のうち、魚類の睡眠及び脳神経科学実験においてはほぼ予想通りの成果を得ることができた。これら2点は本班研究課題の中でも新規性が高く、かつ最も重要な研究項目であり、本班の研究は概ね順調に進んでいると判断できる。ザリガニやメダカでの鏡像自己認知に関する研究は、マークテストでのマークの開発には経験的実験過程が必要であり時間がかかる側面があるものの、期間内には実現可能であると考えている。
睡眠は記憶形成に深く関与している。その記憶は動物の概念形成や思考の基盤である。魚類でレムノンレム睡眠が確認されれば、記憶の質が哺乳類や鳥類と同じエピソード記憶であることを強く示唆するものであり、今後の心理学、脳神経科学への波及効果は大きい。そもそも、鏡像自己認知ができるということは、高次の思考過程を伴っており、エピソード記憶が当然予想されていた。その意味で、レムノンレム睡眠は確認されて当然であるが、魚類でのレムノンレム睡眠は全く新たな研究成果ということができる。また、昼間に恐怖体験をさせた場合、夜間に「うなされる」事例は、夢を見ているような状態である可能性が高く、今後この夢の問題も検討してゆきたいと考えている。
脳神経科学的実験も、概ね順調に進んでいる。初めての試みであり失敗も多く成功例が2例と少ないが、次年度で例数は確実に増やすことができる。今後の展開でも述べるが、大いに期待できる研究である。

今後の研究の推進方策

基本的には初年度の研究を継続させる。鏡像自己認知は予定通り、マダコ、魚類のメダカで実施する。脳神経解析では、大脳の右半球か左半球だけを除去した実験を考えている。魚も鏡像自己認知をする場合、自己顔を自分だと認識しているし、顔の倒立効果も確認されている。このことは、顔という視覚刺激の処理過程に魚とヒトで相同なものが存在すると考えられる。この点から、大脳の左半球か右半球を除去した実験、鏡像ではなく隣人を提示する実験などを行って行きたい。ホンソメワケベラを対象とした魚類の行動睡眠から見たレムノンレム睡眠は、ビデオ解析を継続し、新たな疑問点が出るなどした場合、新たな実験を組む。
鏡像自己認知という再高次の思考ができる魚類にも、哺乳類と同様な睡眠が存在することから、エピソード記憶の存在が示唆されることを踏まえ、概念について検討したい。入力された刺激は抽象化されエピソード記憶として保存される。さらにそのエピソード記憶を抽象化したものが「概念」である。そしてこの概念には、単なる相関関係の把握ではなく、因果関係の概念も含まれる。ホンソメワケベラは、鏡像自己認知の際、鏡像が自分であるとの「仮説検証」を行なっており、因果関係の概念の形成がすでになされていると思われる。この点で、次年度から、魚類の概念形成の実施う研究も含めていきたい。
AIは今後進化すれば、感情や心を持つことが言われるが、それは多分違うだろう。最も大きな違いが、AIには概念形成ができないことである。いくら処理情報が莫大になっても、処理速度、処理量は、さらに早くなるだろう。しかし、この概念形成はできないと思われる。このためAIには心はない。A=BかつA≠Bができる場合、概念を形成しているということができる。具体的方法は考案ずみであり、この概念の検証も取り込みたい。おそらく動物でも前例のない検証例になると思われる。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [国際共同研究] Dr. William Sowersby/Department of Environment, Energy,,/Melbourne(オーストラリア)

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] Punishment from dominant breeders increases helping effort of subordinates in a cooperatively breeding cichlid2024

    • 著者名/発表者名
      Hidaka Ryo、Sogawa Shumpei、Kohda Masanori、Awata Satoshi
    • 雑誌名

      Animal Behaviour

      巻: 211 ページ: 99-109

    • DOI

      10.1016/j.anbehav.2024.02.020

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cleaner fish recognize self in a mirror via self-face recognition like humans2023

    • 著者名/発表者名
      Kohda Masanori、Bshary Redouan、Kubo Naoki、Awata Satoshi、Sowersby Will、Kawasaka Kento、Kobayashi Taiga、Sogawa Shumpei
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 120 号: 7 ページ: 7-7

    • DOI

      10.1073/pnas.2208420120

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] How and when animals establish mirror self-recognition: A case study from cleaner fish2024

    • 著者名/発表者名
      Kohda M et al.
    • 学会等名
      ISBE (International Society of Behavioral Ecology)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Three-spined sticklebacks do not attack but bite to eat red-belly of the model: Providing no evidence of sign-stimulus2024

    • 著者名/発表者名
      Sogawa S, Awata S, Huneno N, Kohda M
    • 学会等名
      ISBE (International Society of Behavioral Ecology)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Cleaner fish identify self in a mirror via self-face recognition like humans: what does this mean?2023

    • 著者名/発表者名
      Kohda M
    • 学会等名
      Animal Consciousness Conference
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] Reconsideration of premise of study of animal consciousness2023

    • 著者名/発表者名
      Sogawa S, Kobayashi T, Bshary R, Sowersby W, Awata S, Kohda M.
    • 学会等名
      Animal Consciousness Conference
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2025-06-20  

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