| 研究領域 | 1000テスラ超強磁場による化学的カタストロフィー :非摂動磁場による化学結合の科学 |
| 研究課題/領域番号 |
23H04860
|
| 研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
| 配分区分 | 補助金 |
| 審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
|
| 研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
大和田 謙二 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 放射光科学研究センター, グループリーダー (60343935)
|
| 研究分担者 |
松田 康弘 東京大学, 物性研究所, 教授 (10292757)
加藤 大地 京都大学, 工学研究科, 助教 (40906921)
平井 大悟郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80734780)
塚田 真也 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (90570531)
|
| 研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
| 研究課題ステータス |
交付 (2025年度)
|
| 配分額 *注記 |
170,040千円 (直接経費: 130,800千円、間接経費: 39,240千円)
2025年度: 33,280千円 (直接経費: 25,600千円、間接経費: 7,680千円)
2024年度: 35,750千円 (直接経費: 27,500千円、間接経費: 8,250千円)
2023年度: 40,560千円 (直接経費: 31,200千円、間接経費: 9,360千円)
|
| キーワード | 超強磁場 / 化学結合 |
| 研究開始時の研究の概要 |
化学結合の視点に立ち、超強磁場中で発現する新たな固体結晶の探索・解明を戦略的に行う。共有結合やイオン結合、水素結合の観点から化学結合への磁場効果を捉え、より微視的な分子軌道描像・電子分布から理解することで、化学結合への非摂動磁場効果を量子力学的に解明する。これまで磁場効果の研究対象とはならなかったBaTiO3やPbTiO3などの強誘電体、VO2などの分子軌道結晶をはじめとした量体化物質、水素結合が重要となる鉱物結晶であるボルボサイトやKDPなどの誘電体について、1000 テスラ超強磁場中での結晶構造相転移の探索を、電気的、磁気的、光学的(X線を含む)測定から明らかにする。
|
| 研究実績の概要 |
磁場は自然界の形成機構理解に不可欠だが、凝縮系への磁場効果は摂動的理解にとどまり、化学結合への直接的影響は未解明である。本班は化学結合に着目し、1000テスラ級超強磁場下でのみ現れる非摂動的磁場効果の解明と新奇結晶相の探索を戦略的に進める。 600 T誘電率測定技術の開発により、ストリップラインなしでの高周波測定が可能となり、実験準備が整った。BaTiO3では分極と磁場方向を制御した測定手法を確立し、P//B方向に限って100 T近傍で誘電率が減少する新現象を発見した。これは強誘電相の磁場安定化に起因すると考えられるが、微視的機構の解明が課題である。KF置換BaTiO3でも測定を進めたが、感度向上が必要であると判明した。関連して、分極ドメインの計測法として高分解能X線回折トポグラフィ法の開発を実施した。 ビスマス系Bi2MO4ClではMサイズによる歪みでBi-O結合が切断されること、中間組成で高対称な2次元構造が現れリエントラント相転移を示すことを明らかにした。 可搬型パルス磁石と信号発信機を用いたラマン測定の同期制御に成功し、20 Tまでの測定を実施。BaTiO3粉末では室温下での格子振動変化は観測されなかったため、相転移温度付近での測定が重要とされ、試料温度制御が可能な温調ステージを新たに開発した。 CsW2O6では60 Tで磁歪異常が再現され、伝導率変化も得られたが予測と逆の符号であり、さらなる解析が必要である。RuAsでは60 Tまでで変化が見られず、RuPではFe置換によって転移温度を下げた試料を合成し、低磁場での相転移観測が期待される。
|
| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
BaTiO3の100 Tで観測された誘電率減少は、特定のTi-O間共有結合の強化による強誘電相の磁場安定化を示唆しており、これは中性子星等で予測される共有結合の破壊とは逆の現象であり、固体中の化学結合における磁場効果理解の一助となる可能性がある。 想定通り、20 Tまでのパルス磁場下ラマン散乱測定に成功した。パルス磁場下ラマン散乱測定の報告は、我々の知る限り存在しないので、科学にとって大きな進展であると考える。また、高分解能検出器を用いたトポグラフィによるドメイン観察にも成功し、高分解能かつデジタルというトポグラフィとして新しい境地を切り開いた。 Bi2MO4Cl固溶体では、1次元構造の競合によりリエントラントな構造変化が観測され、磁場による結合制御が期待される。20 Tまでのパルス磁場下ラマン散乱測定にも成功し、これまで報告のない測定手法として科学的意義が大きい。 分子軌道への磁場効果では、現時点で明確な磁場誘起相転移の観測には至っていないが、測定手法や試料条件に関する知見が蓄積されつつあり、200 T領域での超強磁場測定に向けた体制が整ってきている。物質選定や今後の実験設計に向けて、有用な情報が得られている。 全体として研究は順調に進展している。
|
| 今後の研究の推進方策 |
(1)共有結合への磁場効果:破壊型超強磁場下での誘電率測定法を用い、大型単結晶BaTiO3に対し600Tまでの磁場で強誘電相転移の探索を行う。100Tでは誘電率減少を確認しており、磁場による強誘電相の安定化を示唆する。常誘電-強誘電相転移を磁場で誘起できればその実証となり、600Tでの誘電率測定により可能性が期待される。2025年度中に実験を計画している。ラマン散乱測定によりBaTiO3の相転移温度近傍で格子振動の磁場変調を調べ、新規材料の探索も並行して進める。ナノ結晶BaTiO3やリラクサー強誘電体との比較も行う。Bi2MO4Cl系については、結合開裂ギリギリの状態での磁場効果を検討する。 (2)分子軌道への磁場効果:CsW2O6では磁場中の抵抗変化を精査し、RuPではFe置換試料により磁場誘起相転移の探索を行う。150Tの知見を踏まえ600T超で研究を進める。SmSでは200T下での価数転移と新構造の可能性を調査する。
|