研究領域 | 1000テスラ超強磁場による化学的カタストロフィー :非摂動磁場による化学結合の科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04861
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
池田 暁彦 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (90707663)
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研究分担者 |
野村 肇宏 静岡大学, 理学部, 講師 (20845987)
米澤 進吾 京都大学, 工学研究科, 教授 (30523584)
野原 実 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 教授 (70272531)
大池 広志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (70725283)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
168,740千円 (直接経費: 129,800千円、間接経費: 38,940千円)
2024年度: 66,820千円 (直接経費: 51,400千円、間接経費: 15,420千円)
2023年度: 35,360千円 (直接経費: 27,200千円、間接経費: 8,160千円)
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キーワード | 1000テスラ超強磁場 / スピンカタストロフィー / 強相関電子系 / 構造相転移 / 準安定相 / スピン格子結合 / ポータブル100テスラ / ファイバー磁気光学系 / X線自由電子レーザー / ダイマー量子スピン |
研究開始時の研究の概要 |
電子スピンはすべての物質の構造安定性において重要な役割を果たしており、特にスピン格子結合が強い固体物質では1000テスラ強磁場を用いたスピン操作により新結晶構造発現などのスピンカタストロフィー(非摂動論的な巨大応答)が期待される。本研究では近年利用可能となった1000テスラ環境を用いて固体中のスピン操作を行い、スピン駆動の破壊的結晶構造変化から化学的カタストロフィーにおけるスピン格子結合の役割を解明する。
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研究実績の概要 |
初年度は1000テスラにおけるスピン格子結合の解明に向けて、実験手段における研究基盤を構築した。ポータブル100テスラ装置による120テスラ発生に成功し、ポータブル機として世界最高磁場を記録した。さらにこれを利用し、X線自由電子レーザー施設SACLAにおいて100テスラ強磁場かつ10ケルビンの低温環境において粉末X線回折実験のデータ取得に成功した。 1000テスラにおける新しい磁気光学的実験手法の開発にむけて、オールシングルモードファイバーによる磁気光学効果測定系の構築を行った。サンプル空間において金属パーツを排除すること、ファイバー内の磁気光学効果を排除することを目的として、中空ファイバー(フォトニック結晶ファイバー)を利用した。 目標とする、1000テスラにおける固体内の化学結合の切断を実現するための物質開発を行った。ThCr2Si2構造を有しSiサイトをPかAsが占有する物質を複数合成した。特にSrNi2P2のNiサイトへのFe置換効果を探索することで、Uncollapsed Tetragonal(ucT)からCollapsed Tetragonal(cT)への構造転移温度を低下させることに成功した。 ダイマー量子スピン系における超音波・磁歪計測を150テスラまで達成し、磁化の飽和化過程を始めて完全に解明した。その最中で新たな量子結晶状態を発見し、格子とスピンの結合状態を明らかにした。 1000テスラを利用した新物質状態の合成を目標として、急冷効果の探索を行うための実験手法開発を行った。パルス磁場中での電気抵抗測定とパルス加熱・急冷機能を持つプローブを製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ポータブル磁場発生装置として世界最高磁場の記録を更新し、実際にミクロ物性計測に成功した。150テスラにおけるスピン格子結合実験に成功し、ダイマー量子スピン系におけるスピン格子結合を解明できた。領域の目標である、1000テスラスピン格子結合実験に向けて、ゼロベースでスタートした計画も、初年度で大きく進展した。
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今後の研究の推進方策 |
100テスラX線実験が開拓された。これを利用して、固体酸素、LaCoO3、cT-ucT転移を起こす122系の超強磁場誘起新規結晶構造を探求する。1000テスラにおいてcT-ucT転移を起こす122系物質を中心として、新規結晶構造を探索する。この際に開発したファイバー磁気光学系、急冷効果実験系を利用する。
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