研究領域 | 1000テスラ超強磁場による化学的カタストロフィー :非摂動磁場による化学結合の科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04865
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡 隆史 東京大学, 物性研究所, 教授 (50421847)
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研究分担者 |
那須 譲治 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40610639)
富田 裕介 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50361663)
笠松 秀輔 山形大学, 理学部, 准教授 (60639160)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
109,460千円 (直接経費: 84,200千円、間接経費: 25,260千円)
2024年度: 21,710千円 (直接経費: 16,700千円、間接経費: 5,010千円)
2023年度: 16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
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キーワード | 強磁場 / 量子物質 / 電子状態 / 強相関効果 / 電子相関 / 構造相転移 / 磁場誘起現象の理論 |
研究開始時の研究の概要 |
1000テスラという強磁場により電子やイオンは10オングストローム程度の半径で回転し続けるサイクロトロン運動を行います。量子力学の観点からみると、本来、電子などは波と粒子の両面性を持っているのですが、磁場下では「回転する粒子」としての性質が強くなります。これにより、波としての性質を強く反映していた化学反応や固体結晶の成り立ち、さらには物質の性質が大きく変化します。本課題では計算機やモデル解析を通じてこれらの新奇現象について研究していきます。
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研究実績の概要 |
本年度は、1000T磁場下の量子物質を理解するための基礎的なモデルの構築を目指しました。磁場下の電子状態の理解は限定的です。これは、電子が磁場下では並進対称性を失うため、現在の電子状態理論の基礎であるバンド理論を使うことが難しくなるからです。今年度は本領域で行われている実験から特徴的なものをいくつか選択し、それぞれの状況にあったモデル計算を試みました。①強相関電子系における構造相転移を伴う金属絶縁体転移を理解するために強束縛模型を元に磁場の印可するゼーマン項の効果を解析し、実際に磁場誘起相転移が引き起こされることを示しました。②さらに、第一原理計算を用いて固体中のスピン分極変化に由来する構造変化を検討し、強磁場印加によってそれが誘起可能か見積もりました。③また、誘電体転移や、構造相転移が関わる現象を巨視的に理解するための有効モデルを構築しました。モンテカルロ法を用いて秩序の生成に磁場がどのような影響を及ぼすのかを解析しました。④そして、フォノンの回転運動が電子に及ぼす影響をフロッケ・エンジニアリングの手法を用いて定式化しました。特に、ディラック電子系における強相関効果に着目し、磁場によってどのような秩序が現れるのかを解析しています。さらに、これらの結果を基盤とし、遷移金属酸化物などの強相関電子系に対して、強磁場を印加することで現れる多量体化の崩壊など新規現象の起源を、多軌道性に注目して明らかにしました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は領域会議や班間連携セミナーを通じて多彩な磁場誘起現象について議論を深めた。理論模型の構築も実施し、磁場誘起秩序についての計算を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
特任助教が着任する令和6年度は、当初計画されていた研究を更に強力に推進する。具体的には、磁場中のランダウ準位が誘起するディラック電子系を考え、そこで電子間相互作用により電荷密度が実現する可能性について検討する。また、電荷密度波がスライドする時に起きる断熱ポンピングについても議論を進める。
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