研究領域 | アシンメトリが彩る量子物質の可視化・設計・創出 |
研究課題/領域番号 |
23H04869
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大槻 純也 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (60513877)
|
研究分担者 |
服部 一匡 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (30456199)
速水 賢 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20776546)
野村 悠祐 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20793756)
是常 隆 東北大学, 理学研究科, 教授 (90391953)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
193,050千円 (直接経費: 148,500千円、間接経費: 44,550千円)
2024年度: 33,410千円 (直接経費: 25,700千円、間接経費: 7,710千円)
2023年度: 15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
|
キーワード | アシンメトリ量子 / 多極子 / 交差相関 / 計算物質科学 / 物質設計 |
研究開始時の研究の概要 |
結晶中の電子が持つ対称性が破れ、非対称性(アシンメトリ)が現れることで、しばしば有用な機能が発現する。近年、結晶中の電子の持つ(非)対称性を網羅的に記述する「拡張多極子」の概念が発展している。この拡張多極子を用いることで、有用な機能の発現を理解し、新しい機能を開拓することが可能となる。本研究では、拡張多極子に関連した基礎理論を構築し、その理論を応用した大規模数値計算による未知物質の設計を行う。
|
研究実績の概要 |
本計画研究の内容は、計画(A)「基礎理論」、計画(B)「現象論から定量的記述へ」、計画(C)「物質設計」に分けられる。本年度は計画(A), (B)に取り組み、具体的に以下の成果を得た。 (1) 拡張多極子の枠組みに基づいた理論解析により、磁気トロイダル単極子を伴う反強磁性秩序状態が示す新しい時間反転スイッチング応答を明らかにした。具体的には、電場を印加することで磁気渦構造が誘起されること、磁場を印加することで回転歪みが生じること、両者を同時に印加することでキラリティが現れることをミクロな模型解析により示した。また、こうした磁気トロイダル単極子を内包する反強磁性体候補物質の理論提案を行った。 (2) 二次元三角格子上における非整合波数3重q四極子秩序に関する古典モンテカルロ解析を行った。四極子のボルテックスと半ボルテックスからなる格子が温度とともに変遷することや、非整合波数秩序相近傍に現れる部分秩序状態への転移のユニバーサリティクラスがAshkin-Teller模型の臨界線のものであることを見出した。また、カイラル秩序状態における電流誘起磁化の数値解析を行い、電流誘起磁化の温度依存性の起源について解析した。 (3) 第一原理計算により化合物の多極子秩序を導出するために、多極子感受率の計算プログラムを整備した。動的平均場法により計算されるスピン・軌道感受率を多極子の完全基底で表現することで、電気・磁気トロイダル多極子も含むすべての拡張多極子の揺らぎを網羅的に計算することが可能となった。 (4) アシンメトリ量子物質の取り扱いを念頭において、有効模型の対称性を取り扱うコードの整備を行った。さらに、磁性体において有効模型で磁気秩序を扱う上で効果的な模型構築の方法を提案した。また、強相関系の計算を効率的に行うため、クーロン相互作用のパラメータを導出するコードの汎用化も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画(A)基礎理論については、実際の化合物や測定を念頭に、多極子秩序における交差相関応答や秩序状態の解析を着実に行っている。計画(B)については、多極子感受率や結晶の対称性を考慮に入れた有効模型の計算コードの整備が進んでいる。よって「おおむね順調に進展している」と判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
計画(A)については、引き続き多極子秩序と交差相関応答に関する基礎理論の構築を行っていく。特に、実験グループ(A01・A02)との連携を強化していきたい。計画(C)の物質設計に向けて、計画(B)の定量計算法の整備を引き続き行う。次年度中に実際の化合物における多極子揺らぎや交差相関の定量計算まで進めたい。
|