研究領域 | 炭素資源変換を革新するグリーン触媒科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04905
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金 雄杰 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00761412)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
29,900千円 (直接経費: 23,000千円、間接経費: 6,900千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
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キーワード | 固体光触媒 / 有機電解合成 / ラジカルの発生・制御 / 炭化水素 / 再生可能資源 |
研究開始時の研究の概要 |
持続可能社会の実現に向け、合成化学は従来の炭化水素を原料とするプロセスの効率化はもとより、バイオマスなど再生可能資源への原料の多様化が求められる。この要望に応えるためには、従来の熱エネルギーを利用したイオン反応に囚われず、再生可能な光・電気エネルギーを利用したラジカル的分子変換反応を開発する必要がある。本研究では、機能集積型光・電極触媒を創成し、含酸素化合物或いは炭化水素のラジカル的分子変換反応を開発する。開発したラジカルの発生・制御法及び分子変換反応を、領域内の連携により機能性分子の合成に適用し、真に力量のある触媒系に進化させる。
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研究実績の概要 |
本計画研究では、固体の光・電気化学特性を利用した含酸素化合物或いは炭化水素のラジカル的変換反応の開発を目的とする。2023年度にはTiO2とコバルト錯体のデュアル光触媒系を用いたカルボン酸、アルデヒド、あるいはアルコールからアルケンへの変換反応の開発を行った。TiO2触媒存在下UV光を照射すると、カルボン酸からアルキルラジカルが生成する。これをコバルト錯体が捕捉し、続く脱水素反応によりアルケンが生成する。本触媒系を用いると、カルボン酸のみならず、アルデヒドあるいはアルコールから末端アルケンへの変換反応も選択的に進行した。いずれの反応もカルボン酸を中間体として進行する。本触媒系は安価で入手容易なTiO2を光触媒として用いることから、高価な均一系Ir光触媒等を用いる従来系に比べて優位性を有する。 また、電解合成によるカルボン酸からアルケンへの変換反応も行った。興味深いことに、ジアルキルホスフェート塩を電解質として用いた場合、高い選択性で末端アルケンを与えることが明らかとなった。反応機構の検討により、電解質アニオンのドナーナンバーと末端アルケンへの選択性の間に相関があることが明らかとなった。上記光触媒系とは異なり、電解反応系において反応は第一級カルボカチオンを経由して進行することが分かった。この不安定な第一級カルボカチオンの反応性制御にドナーナンバーの高いジアルキルホスフェートが重要な役割を果たすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度はカルボン酸から末端アルケンへの選択的変換反応について、光反応あるいは電解反応系といった異なるアプローチにより検討を行い、それぞれ興味深い結果が得られた。具体的には、固体光触媒あるいは電極表面において反応性の高いラジカルあるいはカルボカチオンが生成し、金属錯体あるいは電解質アニオンを用いてその反応性を制御できた点は特筆に値する。現在、これらの成果に関して論文発表に向けて準備を進めている。また、固体触媒を用いた再生可能資源を原料とする有機合成という点で本課題と深い関連性のある含酸素化合物の還元反応について分光学的手法により触媒表面反応の機構検討を行い、関連成果を論文として発表した。以上のことから、本研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
カルボン酸、アルデヒドあるいはアルコールから末端アルケンへの変換反応を固体表面の光あるいは電気化学特性を利用して実現したが、基質によってはマスバランスが悪いゆえに、低収率にとどまっている。これは、反応性の高いラジカルあるいはカルボカチオン種が副反応を起こすためであると考えられる。よって、2024年度は固体光触媒の表面に金属錯体を固定化することで、固体表面で生成したラジカル種をより効率的に金属錯体が捕捉できるようにする。これにより、ラジカル種の反応性をより精密に制御し、反応の収率および選択性の向上を狙う。電解合成系においては、電解質アニオンの精密設計、特にアルキルあるいはアリールホスフェートアニオンの立体および電子状態のチューニングを行い、反応系の更なる高効率化を試みる。
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