研究領域 | 炭素資源変換を革新するグリーン触媒科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04908
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 眞浩 東北大学, 理学研究科, 教授 (50217428)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
79,950千円 (直接経費: 61,500千円、間接経費: 18,450千円)
2024年度: 13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
2023年度: 14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
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キーワード | 酸触媒 / 光反応 / ラジカル反応 / 不斉合成 / フロー反応 / 有機分子触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、温和でメタルフリーな反応条件下、安価で豊富な化学原料から高付加価値な化合物を構築する環境調和型分子変換法の確立を目的とする。その実現に向け、キラルブレンステッド酸触媒の作用によって生じる有機カチオン種を光励起し、強力な一電子酸化剤として機能させることで、従来困難であったキラルブレンステッド酸触媒による非極性官能基(ドナー分子)の不斉変換を可能とする新たな触媒反応系の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、温和でメタルフリーな反応条件下、安価で豊富な化学原料から高付加価値な化合物を構築する環境調和型な分子変換法を確立することを目的とし、従来困難であったキラルブレンステッド酸触媒による非極性官能基(ドナー分子)の不斉変換を可能とする新たな触媒反応系の開発を目指す。この実現に向けてキラルブレンステッド酸触媒の作用によって生じる有機カチオン種を光励起し、強力な一電子酸化剤として機能させることを考案した。再生可能エネルギーである光照射下、安価で豊富な炭素資源である芳香族炭化水素や単純オレフィンをドナー分子として用い、励起有機カチオン中間体への一電子移動を起点としたラジカル種の発生、続くキラルブレンステッド酸触媒が構築する不斉反応場における結合形成によって、グリーン触媒科学と呼ぶに相応しい不斉光反応系の開拓を目的としている。 この開発にあたりキラルリン酸触媒によるベンゾピリリウムカチオンの発生と、生じたこのカチオン種を光励起し、ドナー分子としてトルエンを用いてトルエンの一電子酸化を起点とする反応開発を行った。その結果、トルエンの一電子酸化で生じたラジカルカチオンからキラルリン酸の共役塩基によって脱プロトン化が進行してラジカル種となり、このベンジルラジカルがベンゾピリリウムカチオンにラジカル付加反応が進行し、良好な収率で生成物を与えることを見出した。この際、ベンゾピリリウムカチオンとイオン対を形成したキラルリン酸の共役塩基存在下でラジカル付加反応が進行した考えられる光学活性な生成物が中程度のエナンチオ選択性で得られた。依然としてエナンチオ選択性は十分ではないが、今後、キラルブレンステッド酸触媒のさらなる分子設計が進めば高選択的な反応開発につながる可能性を秘めた重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、温和でメタルフリーな反応条件下、安価で豊富な化学原料から高付加価値な化合物を構築する環境調和型分子変換法の確立を目的とする。その実現に向け、キラルブレンステッド酸触媒の作用によって生じる有機カチオン種を光励起し、強力な一電子酸化剤として機能させることで、従来困難であったキラルブレンステッド酸触媒による非極性官能基(ドナー分子)の不斉変換を可能とする新たな触媒反応系の開発を目指しているが、そのきっかけとなる極めて重要な結果を得ることに成功している。 特に、キラルリン酸触媒によるベンゾピリリウムカチオンの発生と、生じたこのカチオン種を光励起し、ドナー分子としてトルエンを用いてトルエンの一電子酸化を起点とする反応開発では、中程度はあるがエナンチオ選択性が発現することを見出した。この結果は、トルエンのような非極性官能基の不斉変換が可能であることを示した極めて重要な成果である。エナンチオ選択性が発現したことからベンゾピリリウムカチオンとイオン対を形成したキラルリン酸の共役塩基存在下でラジカル付加反応が進行したことを示唆する極めて重要な結果でもある。現段階では高いエナンチオ選択性の実現はできていないが、今後、キラルブレンステッド酸触媒を種々検討することで、エナンチオ選択性は改善されるものと期待される。よって、当初の計画どおり、有機カチオンの高次制御を目的とした光反応の開発に一定の成果を挙げることに成功しており、概ね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
キラルブレンステッド酸触媒によるベンゾピリリウムカチオンの発生と、生じたカチオン種を光励起し、ドナー分子としてトルエンを用いてトルエンの一電子酸化を起点とする反応開発を引き続き行う。これまで、トルエンの一電子酸化で生じたラジカルカチオンからキラルリン酸の共役塩基によって脱プロトン化が進行してラジカル種となり、このベンジルラジカルがベンゾピリリウムカチオンにラジカル付加反応が進行し、良好な収率で生成物を与えることを見出している。この際、ベンゾピリリウムカチオンとイオン対を形成したキラルリン酸の共役塩基存在下でラジカル付加反応が進行した考えられる光学活性な生成物が中程度のエナンチオ選択性で得られている。依然としてエナンチオ選択性は十分ではないため、今後はキラルブレンステッド酸のさらなる分子設計が鍵となると考えている。キラルブレンステッド酸としては現在、キラルリン酸を主として探索しているが、新たな視点に基づくキラルブレンステッド酸触媒の開発が重要と考えている。例えばキラルスルホン酸などより強力な酸性官能基を有するキラルブレンステッド酸を設計開発することで、ベンゾピリリウムカチオンにとどまらずに様々なカチオン種の生成に活用し、より広範な反応系の開拓を目指したい。
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