研究領域 | 炭素資源変換を革新するグリーン触媒科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04912
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大宮 寛久 京都大学, 化学研究所, 教授 (40508876)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
110,110千円 (直接経費: 84,700千円、間接経費: 25,410千円)
2024年度: 17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 24,960千円 (直接経費: 19,200千円、間接経費: 5,760千円)
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キーワード | 光エネルギー / 有機合成 / ラジカル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、光エネルギーを利用したラジカル反応により、立体的に嵩高い分子同士の結合形成を可能にし、有機合成化学に自在性をもたらすグリーン炭素資源変換を実現する。可視光により駆動される触媒を活用した1電子の授受により、二つ原料(分子)の狙った位置にラジカルを発生させ、これら異なる二つのラジカル種の安定性に基づいたラジカル-ラジカルカップリングにより結合を形成する。反応位置、官能基選択性、立体化学などの各種因子を、能動的かつ精密に制御していく。化学修飾核酸の合成や高分子ポスト機能化に展開する。
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研究実績の概要 |
本年度は、以下に述べるような研究成果が得られた。 1)青色 LED照射下、有機硫黄化合物(フェノチアジン誘導体)と第三級脂肪族カルボン酸誘導体を用いることで、二つのデオキシリボヌクレオシド構造と脱離基を持つ亜リン酸エステルのリン原子第三級アルキル化が進行することを見出した。有機硫黄化合物と脂肪族カルボン酸誘導体に青色LEDを照射することで、カルボカチオン等価体が発生する独自の手法を活用した。具体的には、青色 LED照射により、有機硫黄化合物から脂肪族カルボン酸誘導体へ一電子が移動し、一電子を受け取った脂肪族カルボン酸誘導体は分解して炭素ラジカルを与える。その後、生じた炭素ラジカルが一電子を有機硫黄化合物に渡すことでカルボカチオン種を与える。 2)青色LED照射下、光酸化還元触媒とコバルト錯体触媒を組み合わせた協働触媒系を活用することにより、弱酸であるコリジンハロゲン化水素酸塩を用いた、アルケンのヒドロハロゲン化によるsp3炭素-ハロゲン原子結合形成反応を開発した。イリジウム光酸化還元触媒、コバルト錯体触媒、脂肪族アルケン、コリジンハロゲン化水素酸塩それぞれを、青色LED照射下反応させたところ、ハロゲン化アルキル生成物が高収率で得られた。本反応では、光触媒とコバルト触媒の協働触媒系によるコバルトヒドリド種の発生を起点とし、コバルトヒドリド種とアルケンの反応によるラジカルの発生、続くコバルト触媒によるラジカルのハロゲン化を経て進行する。コリジンハロゲン化水素酸塩のハロゲンイオンを変更することで、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を導入することが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
光エネルギーを使用した温和な条件で発生させたカルボカチオン種を活用することで、核酸リン原子の第三級アルキル化反応の開発に成功し、Nature Communications誌に報告した。本成果はかさ高い第三級アルキル基が導入された化学修飾核酸の合成を通じて、新たな核酸医薬品の創出に繋がることが期待される。また、光酸化還元触媒とコバルト錯体触媒を組み合わせた光駆動型協働触媒系を活用することで、弱酸であるコリジンハロゲン化水素酸塩を用いたアルケンの位置選択的ヒドロハロゲン化反応の開発に成功し、JACS誌に報告した。本反応では、光酸化還元触媒による一電子移動とコリジンハロゲン化水素酸塩によるプロトン移動を活用して、活性種であるコバルトヒドリド種を形成させることができることから、化学量論量の酸化剤や還元剤を必要としない、温和な有機合成技術である。
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今後の研究の推進方策 |
光エネルギーによるラジカルの発生と続くラジカル-ラジカルカップリングを制御することで、複雑かつ嵩高い分子の自在変換を開発し、本領域の推進に貢献する。領域内協創研究を積極的に実施しながら、本研究を強力に推進していく。たとえば、複雑かつ嵩高い生物活性化合物を基質として用いた、変換を反応を積極的に検討していく。
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