研究領域 | 炭素資源変換を革新するグリーン触媒科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04916
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
信田 尚毅 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20839972)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
30,160千円 (直接経費: 23,200千円、間接経費: 6,960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
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キーワード | 電解合成 / 典型元素 / 電極メディエータ / グリーンケミストリー / 触媒 / 有機電解合成 / ラジカルカチオン / 分子触媒 / 電気化学測定 |
研究開始時の研究の概要 |
電気化学的分子変換は、再生エネルギーと組み合わせることで極めて環境負荷の小さな物質合成を可能とする手法である。所望の反応を選択的に進行させる、あるいは電極における直接電子移動では困難な分子変化を達成するためには、反応を媒介する電極メディエータの利用が不可欠である。本研究では、高活性ゆえに極めて不安定である典型元素ラジカルカチオンの積極的安定化を主戦略として、効率的な電気化学的分子変換を達成する新たな電極メディエータを開発する。典型元素ラジカルカチオンの反応性を適切に飼い慣らし、温和な条件で高難度分子変換を可能とする電解反応系を実現する。
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研究実績の概要 |
電気化学的分子変換は、再生エネルギーと組み合わせることで極めて環境負荷の小さな物質合成を可能とする手法である。本研究では、高活性ゆえに極めて不安定である典型元素ラジカルカチオンを利用することで、効率的な電気化学的分子変換や、新たな電極メディエータを開発する。本年度は、「ラジカルカチオンの安定化を鍵とする触媒開発」と「ラジカルカチオンを中間体とする新規電解反応開発」にそれぞれ取り組んだ。 触媒開発においては、15-17族元素をを含む様々な化合物の電気化学的レドックス挙動を調査した。特に、Csp2から成るπ拡張におけるラジカルカチオンの非局在化により、1電子酸化状態の安定化と適切な反応性を併せ持つ触媒の探索を行い、候補化合物を選定することができた。さらに、これらの化合物の電気化学的レドックス過程において、アニオン種の配位がラジカルカチオンの安定性に大きく影響することを確認し、所望の電気化学的触媒反応の達成には、分子設計のみならず、電解液の設計も重要であることが示唆された。 また、新規電解反応として、ラジカルカチオン状態を経由する環拡大反応を見出した。この反応では、ピロールのような5員環に対する直接的な原子挿入によりピリジンのような6員環化合物を得ることが可能である。ここで、原子の挿入位置がこれまでに多く報告されている3位ではなく、ほとんど報告例のない4位で進行することが明らかとなっている。従来の反応は2電子反応型のメカニズムであるのに対し、本反応は1電子型、すなわちラジカルカチオンを経由する点で異なっており、これが特異な選択性を実現していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に電極メディエータとして用いる候補化合物の選定が完了し、これまでに報告例のない新規触媒の開発に着手できる段階にある。また、反応開発では偶然にこれまでに前例のない選択性に基づく原子挿入反応を開発することができており、この新知見に基づくことでラジカルカチオンに特異的な様々な反応系の開拓が期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ラジカルカチオン状態を鍵とした分子触媒の開発、並びに反応開発を行う。ラジカルカチオンの自在発生と反応性制御を鍵とし、広く研究を展開する。ラジカルカチオン状態は、求電子性、ラジカル性の他、初年度の検討にて示されたように2電子反応系とは異なる特異な選択性を発現することが期待できるため、この点に着目した反応開発にも注力する。さらに、ラジカルカチオン状態での分子の不安定化(結合の弱化)に基づく触媒反応の開発などにも取り組む。
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