研究領域 | タンパク質寿命が制御するシン・バイオロジー |
研究課題/領域番号 |
23H04926
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
出水 庸介 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 部長 (90389180)
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研究分担者 |
伊藤 拓水 東京医科大学, 医学部, 客員准教授 (30533179)
山中 聡士 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 特定助教 (50853884)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
130,130千円 (直接経費: 100,100千円、間接経費: 30,030千円)
2024年度: 24,180千円 (直接経費: 18,600千円、間接経費: 5,580千円)
2023年度: 31,200千円 (直接経費: 24,000千円、間接経費: 7,200千円)
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キーワード | PROTAC / CRBNモジュレーター / アプタマー / E3ユビキチンリガーゼ / ステープルペプチド / CRBN / IQGAP1 / E3アダプタータンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
PROTAC、CRBNモジュレーター等により人為的に細胞内の標的タンパク質をユビキチン化しプロテアソームで分解する技術、所謂、ケミカルプロテインノックダウン技術の開発が、近年、活発化している。本研究班では、これらのケミカルデグレーダーを活用したケミカルノックダウン技術により細胞内タンパク質の寿命を人為的に制御することで「タンパク質寿命の原理をシン(新/真/深)に理解する」ことに貢献する。
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研究実績の概要 |
出水は、FLT3阻害剤であるギルテルチニブを利用したPROTACを開発した。CRBNをリクルートするPROTACは、FLT3、EML4-ALK、NPM-ALKを効率的に減少させた一方、VHLをリクルートするPROTACはすべての標的タンパク質に対して分解活性が見られなかった。IAPをリクルートするPROTACは、NPM-ALKに対する分解活性を示さないものの、EML4-ALKを効率的に減少させ、IAPがEML4-ALK分解医薬品の開発に利用できることを明らかとした。本研究により得られた知見は、ALK融合タンパク質を分子標的としたPROTACの最適なE3リガーゼの選定とリンカー構造の最適化を行う上で有用となり、創薬展開やケミカルツールとしての利用が期待される。また、これまでに開発したデコイ核酸型PROTACの構造最適化により長時間において分解活性を有するPROTACの開発に成功した。本年度、伊藤分担者は、まずCRBN結合性リガンドの探索を行った。細胞抽出液からの新規リガンドを発見することは出来なかったが、代わりに東北大学情報科学研究科からdiffusion modelを用いてリガンドを探索するDIFFDOCKについて教わり、それを用いてCRBN結合化合物をKEGGの2000化合物から分析し、最終的に三種類の結合因子候補を見つけることに成功した。加えて、新規CRBN結合因子を探索したところ分解されないIQGAP1という細胞内の足場タンパク質として細胞骨格の配向制御や細胞遊走などに関わる多機能因子が発見された。この因子をRNAiでノックダウンすると、レナリドミドのタンパク質分解活性が増強されることが分かった。本因子はどのCRBN結合化合物を処理しても全く分解がおきず、CRBNユビキチンリガーゼの分解指向性を明らかにする上で重要な手掛かりになりうる因子である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに開発したデコイ核酸型PROTACの構造最適化により、転写因子の分解を長時間において達成できた。低分子型PROTACを効率的に合成できる固相合成法の開発に成功した。また、E3リガーゼリガンドを選択することで、がん特異的融合タンパク質を選択的に分解できるPROTACを開発した。まだ論文化には至っていないが、外部刺激によりタンパク質分解をコントロールできるPROTAC開発にも成功している。加えて、細胞内に目的化合物を効率的に輸送できるステープルペプチドの開発に成功した。当初の計画のHPLCなどの方法では見つけられなかったが、AIツールを利用することにより候補リガンドを見つけることに成功した。また新たな未報告のCRBN結合因子IQGAP1を発見するに至った。IQGAP1の発現量や結合量などがCRBN結合薬剤によるタンパク質分解活性を変動させている結果が得られたので、これは大変興味深い結果であり、IQGAP1自体は195 kDaとかなり大きいタンパク質であるが(見つかっている基質の多くは100 kDa未満が多い)、既存のいかなるCRBN結合薬剤でも分解がおきなかったので、分解を妨げている機能など未知の機構がそこに存在していることが示唆され、CRBNの真の機能を明らかにする上でそれなりの前進が見られた。以上、タンパク質寿命を制御するためのケミカルデグレーダーをデザイン、合成、評価できる技術を構築できつつある。以上のことから、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
外部刺激によりタンパク質分解をコントロールできるPROTACについては、各種評価を行い、論文化を目指す。標的タンパク質分解分子に利用できるE3リガーゼを増やすため、これまでPROTACに利用されていないE3のリガンドとのキメラ分子の合成を行う。さらに、NFκBを標的とした核酸アプタマー型PROTACの開発を行う。また、組織・細胞選択的にPROTACの輸送が可能なDDS技術を開発する。本年度は伊藤分担者が2か月で転出してしまうことから期間が短く限られるが、その間にCRBN研究実績やノウハウおよび前年度にAIを利用したドッキングツールであるDIFFDOCKを用いることによってCRBNリガンドの探索をさらに行うのとCRBNのE3活性の強い組織における細胞抽出液よりCRBN結合因子探索を継続して実施し、薬剤や天然リガンド候補を処理した際に相互作用が変化する因子も探索するのも続ける。また本年度で明らかにしたIQGAP1の機能解析もすすめていく予定である。 領域内共同研究として、各評価に必要なケミカルプローブの開発を行う。
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