研究領域 | 細胞外情報を統御するマルチモーダルECM |
研究課題/領域番号 |
23H04928
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
藤原 裕展 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (20615744)
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研究分担者 |
関口 清俊 大阪大学, 蛋白質研究所, 寄附研究部門教授 (50187845)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
157,170千円 (直接経費: 120,900千円、間接経費: 36,270千円)
2024年度: 29,900千円 (直接経費: 23,000千円、間接経費: 6,900千円)
2023年度: 36,400千円 (直接経費: 28,000千円、間接経費: 8,400千円)
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キーワード | 基底膜 / 体表 / テレスコープモデル / 形態形成 / 基底膜ゲル |
研究開始時の研究の概要 |
上皮性器官の発生過程では、「細胞集団とECMとの相互作用」により、2次元の上皮シートから様々な3次元形態を持つ器官が形成される。しかし、これら多様な形の形成にECMがどのように関与しているかはほとんど解っていない。最近我々は、上皮形態形成の基本的な多細胞動態となりうる「テレスコープ動態」を見出した。本研究では、テレスコープ動態を基盤に、基底膜の構造や物理特性のダイナミクスが器官の形を制御する原理を、1) 基底膜-多細胞ダイナミクスの可視化と計測、2) 基底膜の機能モダリティの分離が可能な基底膜ゲルの開発とそれを用いた機能解析、3) 基底膜搭載型の多細胞数理モデルを組みわせて解明する。
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研究実績の概要 |
上皮性器官の発生過程では、2次元の上皮シートから毛包や乳腺などの様々な3次元形態を持つ器官が形成される。これら多様な形の形成には細胞集団とダイナミックに変化する基底膜との相互作用が関与していると考えられるが、その実態やしくみはほとんど解っていない。最近我々は、マウスの毛包が伸縮式の望遠鏡が伸びるような多細胞動態で発生することを見出し、それをもとに「テレスコープモデル」と呼ばれる新しい上皮形態形成のモデルを提案した。本研究では、このテレスコープモデルを基盤に、基底膜の構造や物理特性のダイナミクスが器官の形を制御するしくみを解明する。そのために、下記の3つの研究課題を実施する:(課題1)基底膜-多細胞ダイナミクスの4D可視化、計測、数理モデルによる解析、(課題2)基底膜ゲルの開発と基底膜パラメータの操作によるin vitro機能解析、(課題3)基底膜を操作して器官形態を操る。今年度は、発生毛包を用いて、基底膜と多細胞のダイナミクスを4次元で可視化し定量解析できる実験系を構築した。まず、研究代表者らが最近開発した基底膜イメージングマウスに、同じく研究代表者らが確立している胎仔皮膚のex vivo 4Dイメージング法を組み合わせた。ここにFRAP法を適用することで、基底膜分子(4型コラーゲン)のターンオーバー、基底膜の拡張・移動・変形、多細胞の分裂・移動、そして基底膜と細胞との相対位置の定量データを取得できる実験系を確立した。さらに、基底膜ゲルの開発のため、ラミニンのインテグリン結合活性を100%保持した組換え断片にパールカンのHS鎖担持ドメイン(HS鎖が増殖因子を捕捉)を連結した「次世代型ラミニン活性断片」を作製した。加えて、フィブリノゲンとラミニン活性断片を三本鎖同士で連結したフィブリノゲン-ラミニンキメラ蛋白質を作製し、ラミニン活性を組み込んだフィブリンゲルを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標であった、基底膜と多細胞のダイナミクスを4次元で可視化し定量解析する実験系の開発とラミニン活性を組み込んだ基底膜様ゲルのプロトタイプの開発は、ほぼ完遂できたと判断している。基底膜と多細胞の4次元可視化法とFRAP法を組み合わせることで、基底膜分子、細胞、組織、器官と言う多階層をまたぐダイナミックなイベントを4次元的に同時に捉えることが可能となった。このような実験系の構築を可能とする基底膜のライブイメージングマウスやES細胞は、本学術変革研究領域内での共有が進んでおり、ヒト初期発生を模倣するオルガノイドやがんのin vivoイメージングにおいて活用され始めている。また、フィブリンゲルにラミニン活性を組み込んだ基底膜様ゲルは、その中でヒトiPS細胞を安定に継代培養することが可能であり、マトリゲル代替品のプロトタイプとしての利用が今後期待される。このように、本計画研究内で当初予定されていた今年度の研究計画はほぼ達成された。加えて、構築された基底膜のイメージング系や基底膜様ゲルは、本研究領域内の他の研究課題の進展にも貢献することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、基底膜の拡張・移動・変形などのダイナミクスが、毛包の上皮前駆細胞の分裂や移動にどのように関与するのかを明らかにしていく。特に、基底膜の拡張を支える分子メカニズムや、基底膜の拡張と細胞分裂軸の関係に着目する。さらに、上皮前駆細胞と基底膜との相互作用を担うラミニンとインテグリンのダイナミクスを解析するために、これらタンパク質のライブイメージング法の開発に着手する。また、分担者である関口グループが開発している基底膜ゲルや、基底膜を模した人工接着基質を機械的に伸展させた際の多細胞の分裂挙動をイメージングにより解析していく。加えて、A03-1の長山グループと共同で、毛包の発生過程における細胞と基底膜との力学相互作用を解析できる3D数理モデルの開発を進める。基底膜モダリティの分離には、分子組成と物性を自由に調整できる基底膜ゲルの開発が不可欠である。今後は、ラミニンのインテグリン結合活性を100%保持した組換え断片にパールカンのHS鎖担持ドメイン(HS鎖が増殖因子を捕捉)を連結した「次世代型ラミニン活性断片」を活用し、これをフィブリノゲンと三本鎖同士で連結したフィブリノゲン-次世代型ラミニンキメラ蛋白質(P-LM-FBGキメラ蛋白質)を作製する。さらに、次世代型ラミニン活性断片を組み込んだフィブリンゲル(P-LM-FBGゲル)を試作し、その活性評価を行う。
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