研究領域 | 細胞外情報を統御するマルチモーダルECM |
研究課題/領域番号 |
23H04934
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 (2024) 名古屋大学 (2023) |
研究代表者 |
鳴瀧 彩絵 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (10508203)
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研究分担者 |
秋元 文 (水谷文) お茶の水女子大学, 文理融合 AI・データサイエンスセンター, 准教授 (10585805)
秋吉 一成 京都大学, 医学研究科, 研究員 (90201285)
佐々木 善浩 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90314541)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
146,900千円 (直接経費: 113,000千円、間接経費: 33,900千円)
2024年度: 28,990千円 (直接経費: 22,300千円、間接経費: 6,690千円)
2023年度: 28,080千円 (直接経費: 21,600千円、間接経費: 6,480千円)
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キーワード | デザイナーマトリックス / ハイドロゲル / 粘弾性 / ナノゲル |
研究開始時の研究の概要 |
ECMはマルチモーダルな情報伝達を担っており、その役割について粘弾性等の物理的因子と化学的因子を分離しての本質的理解は困難であった。本研究では、モダリティの分離が可能となるよう設計された人工ECMのハイドロゲルを用いてECMの本質に切り込む。特に、細胞とECMの力学的カップリングで生じる非線形な粘弾性変化が、分子-細胞-組織に与える現象を理解する。さらに、他班で明らかになる細胞外情報分子等を、分子シャペロン機能を有する多糖ナノゲルに組み込んでハイドロゲルとともに構造化し、物理的因子と化学的因子が三次元的に制御されたデザイナーマトリックスを創製する。
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研究実績の概要 |
ECMはマルチモーダルな情報伝達を担っており、その役割について物理的因子 (粘弾性等) と化学的因子 (シグナル分子等) を分離しての本質的理解は困難であった。本研究では、モダリティの分離が可能となるよう設計された人工ECMタンパク質や合成高分子のハイドロゲルを用いてECMの本質に切り込む。今年度は、人工ECMタンパク質ナノファイバーを構成要素とするハイドロゲルが示す粘弾性が、細胞培養環境下でどのように影響を受けるかを、レオメータを用いた動的粘弾性測定により調べた。ショ糖水溶液で調製したハイドロゲルの溶媒を細胞培養用培地に置換するとゲルが収縮して貯蔵弾性率が上昇することを見出した。また、溶媒をショ糖水溶液とし、ゲルに細胞を分散させることでも貯蔵弾性率が上昇した。細胞運動を阻害するblebbistatinを添加した場合には粘弾性特性が変化しないことから、細胞とタンパク質ナノファイバーの相互作用が示唆された。これらの基礎的知見は、人工ECM タンパク質ゲル中における細胞のふるまいを議論するうえで重要となる。また、力学特性と分子透過性を切り分けて制御可能な人工ECMとして、親水性合成高分子が表面領域にのみグラフトされたコラーゲンゲルの合成を行った。さらに、ECMの生物学的因子であるECM関連タンパク質を表面吸着、固定化し得る、疎水化多糖ナノゲル基盤人工ECM(マイクロゲルやマイクロファイバーなど)の合成法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、タンパク質ナノファイバーを構成要素とするハイドロゲルが示す粘弾性、およびハイドロゲルへ細胞を混合した際の粘弾性について評価することができた。Strain Stiffening 現象の再現性が得られにくいという課題が見つかったため、まずはStrain Stiffening現象が確実に起きる標準サンプルを用いてレオメータを用いた動的粘弾性測定を行うことを検討している。一方、ショ糖水溶液で調製したハイドロゲルの溶媒を細胞培養用培地に置換するとゲルが収縮して貯蔵弾性率が上昇するという新たな知見が得られ、今後の応用展開の幅が広がった。また、モダリティの分離についても、弾性率と分子拡散性を独立に制御するための細胞培養用高分子ゲルを作製できた。デザイナーマトリックスの創製についても、種々の形状に加工した疎水化多糖ナノゲル基盤人工ECMを構築できた。A02-1永楽班とはデザイナーマトリックスを用いたオルガノイド創製に関する共同研究を開始している。以上の理由により、研究がおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質ナノファイバーを構成要素とするハイドロゲルが示すStrain StiffeningやStrain Softening 等の非線形粘弾性特性を、レオメータを用いた動的粘弾性測定により引き続き明らかにする。ハイドロゲルの粘弾性が非線形に変化するときのタンパク質ナノファイバーの変化を共焦点レーザースキャン顕微鏡等で直接観察する。さらに、ハイドロゲルへ細胞を混合した際の粘弾性と細胞の分化挙動について調べる。モダリティの分離については、弾性率と分子拡散性を独立に制御できる高分子ゲル内で細胞を培養し、モダリティが細胞挙動に与える影響を解析する。また、水を吐き出すゲルや生体組織のレオロジーを測定可能な自作レオメーターの開発を引き続き進める。デザイナーマトリックスの創製については、光造形3Dプリンティングを用い、光架橋型のマクロゲルを構築するためのバイオインクの開発を引き続き行う。また、ECM関連タンパク質を表面吸着および固定化し得る疎水化多糖ナノゲル基盤人工ECM(マイクロゲルやマイクロファイバー)を用い、A02-1永楽班と共にスフェロイド、オルガノイド形成機能の解析を行う。
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