研究領域 | 細胞外情報を統御するマルチモーダルECM |
研究課題/領域番号 |
23H04937
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大槻 純男 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (60323036)
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研究分担者 |
木村 剛 東洋大学, 生命科学部, 教授 (10393216)
岸田 晶夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (60224929)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
103,220千円 (直接経費: 79,400千円、間接経費: 23,820千円)
2024年度: 18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2023年度: 28,080千円 (直接経費: 21,600千円、間接経費: 6,480千円)
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キーワード | 脱細胞化マトリクス / プロテミクス / 細胞外マトリクス / 液性因子 / 微粒子 / プロテオミクス / 脱細胞化マトリックス / 細胞外マトリックス |
研究開始時の研究の概要 |
生体組織から細胞成分を除去して得られる脱細胞化マトリックスは新しい医療用材料として期待されている。脱細胞化マトリックスのプロテオームを解析することで、ECMに含まれる細胞外情報を担うタンパク質の同定および数値化が期待できるが、脱細胞化組織を構成するタンパク質は難可溶性であるため解析が困難である。本研究では、プロテオーム解析と脱細胞化マトリックスの独自技術を融合し、ECM情報タンパク質を明らかにし定量化することで、脱細胞化マトリックスならびにECMの機能の包括的な理解とデザイナーマトリックス構築の基盤を築くことを目指す。
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研究実績の概要 |
生体組織から細胞成分を除去して得られる脱細胞化マトリクスは、新しい医療用材料として期待されている。脱細胞化マトリクスのプロテオームを解析することで、ECMに含まれる細胞外情報を担うタンパク質の同定および数値化が期待できるが、脱細胞化組織を構成するタンパク質は難可溶性であるため解析が困難である。そこで、令和5年度は脱細胞化マトリクスから質量分析装置で解析が可能な消化ペプチドを調製する技術の開発を行った。複数の界面活性剤・変性剤による可溶化に加えて、タンパク質の切断をおこなう化合物の検討を行った。さらに高圧抽出機を導入し、高圧処理条件を検討した。その結果、短時間で効率よくタンパク質を抽出する条件を決定し、ラット脳の脱細胞化マトリックスから4000分子以上のタンパク質を同定することができた。本解析法はさまざまな組織由来の脱細胞化マトリクスの構成タンパク質の定量データを得る有用な方法である。また、脱細胞化マトリクス結合液性因子およびマトリックス結合膜小胞(MBV)の解析のために小腸、膀胱、血管組織を脱細胞化し、溶出物の収集と分析を行った。MBVの精製においては、用いる組織・臓器の種類によりMBVの含有量が異なることが明らかとなった。また、MBVの精製プロセスにおいて、用いるECM分解酵素の種類により精製効率が異なることが明らかとなった。しかしながら、MBVの分離精製の効率は十分ではなかったため、次年度も引き続きMBVの分離精製効率の改善に取り組む。一方、MBVはECMに結合した細胞外小胞の総称であるが、MBVとECMの結合についての詳細なメカニズムは明らかとなっておらず、また、得られるMBVの収量が制限されている。このため、細胞成分からなる人工の細胞外小胞を大量に作成する方法の開発に着手し、細胞由来のナノオーダーの小胞の作製する方法の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脱細胞化マトリクスのプロテオーム解析技術に関しては順調に開発が進んでいる。当初計画で想定していなかった化合物と高圧抽出が脱細胞化マトリクスからのタンパク質抽出に非常に有用であることが明らかとなった。また、用いる組織・臓器の種類や脱細胞化方法の違いにより得られる脱細胞化マトリックスに差異が生じる可能が示唆され、この点についてさらなる理解を要すると考えられた。脱細胞化マトリックスに含有されるナノスケールの脂質二重膜であるMBVの細胞機能への影響について、内皮細胞の増殖促進効果などのいくつかの細胞機能への影響が示されており、他の細胞機能への影響を検討している。MBVの分離精製に関しては、想定以上の困難さが認められ来年度も引き続き技術開発を継続する。これについて、新たに細胞由来のマイクロからナノオーダーの小胞を大量に作製する事に成功し、本技術はECMと細胞外小胞の結合解析やMBVに含有する機能性分子の解析等への応用を目指し、さらに研究を展開していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
脱細胞化マトリックスの調製について、用いる組織、臓器と脱細胞化方法の組み合わせを検討し、残存する細胞外マトリックスのプロテオーム解析等を行う。また、脱細胞化マトリックスを凍結融解、加熱処理などの加工を施し、MBV含有量、組織組成・構造等への影響を検討するとともに、in vitroおよびin vivo評価系において生体適合性等への寄与についてマトリックス組成・構造等と関連させて検討する。特に、今年度は、免疫細胞を用いた脱細胞化マトリックスの炎症性について理解を深める。
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