研究領域 | 冬眠生物学2.0:能動的低代謝の制御・適応機構の理解 |
研究課題/領域番号 |
23H04940
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山口 良文 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (10447443)
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研究分担者 |
渡邊 正知 福山大学, 薬学部, 准教授 (30306203)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
223,470千円 (直接経費: 171,900千円、間接経費: 51,570千円)
2024年度: 35,750千円 (直接経費: 27,500千円、間接経費: 8,250千円)
2023年度: 76,830千円 (直接経費: 59,100千円、間接経費: 17,730千円)
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キーワード | 冬眠 / ハムスター / 概日リズム / 低温応答 / 休眠 / 体温 / 遺伝子 / シリアンハムスター |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、冬眠哺乳類シリアンハムスターの個体・細胞で逆遺伝学的手法により遺伝子改変操作を行うことで、冬眠達成に必要な遺伝子・分子を明らかにする。まずこれまでに作出した冬眠発動に異常を示すハムスター遺伝子改変個体の詳細な生理学・生化学的検討を進めるとともに、冬眠達成に必要な低温耐性や体の変換に関わると予測される遺伝子の冬眠における機能を明らかにする。これら一連の研究により冬眠達成の分子機構に迫る。
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研究実績の概要 |
本研究課題の先行研究(学術変革領域研究(B))において得た冬眠発動そのものに異常を示すハムスターDEG1 (Differentially Expressed Gene 1)遺伝子変異体について、その体温変動パターンについて詳細な解析を行った。その結果、冬眠発動までのタイミングだけでなく、深冬眠や中途覚醒の継続時間、冬眠期間の長さなど、冬眠表現型の多くにおいて、正常個体とは明らかに異なる変化を認めた(論文投稿準備中)。 この解析の過程で、比較対照となる野生型個体の冬眠時の体温変化も詳細に解析し、冬眠明けには体温日周リズムの夏型回帰(長日化)が外界環境に関わらず生じることを見出し報告した(Nakagawa & Yamaguchi, Proc B, 2023)。こうした年単位にわたる膨大な時系列体温データを簡便に解析するため、体温変動解析プログラムの開発も進めた。またDEG1の遺伝子産物であるタンパク質の冬眠時の挙動についても解析を進め、体温変化に伴う変化を見出した。さらに冬眠の際の体温変化によって生じるmRNA末端の構造変化についても見出したので報告した(Sone et al, BBRC, 2023)。 一方、冬条件と夏条件との間で大幅に発現変動するSDGs (Seasonal Difference Genes)についても、その機能変異体の作出準備を進めた。 さらにこれら新たに作出する遺伝子変異体を用いて安定した冬眠誘導実験を行うため、冬仕様の条件での飼育が可能な冬眠誘導専用の低温飼育室を増設するとともに、その対照となる夏仕様条件での飼育が可能な恒温恒湿飼育室も新設した。これらにより、研究が加速する態勢が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の先行研究(学術変革領域研究(B))において得た冬眠発動そのものに異常を示すハムスターDEG1 (Differentially Expressed Gene 1)遺伝子変異体について、その体温変動パターンについて詳細な解析を行った。その結果、冬眠発動までのタイミングだけでなく、深冬眠や中途覚醒の継続時間、冬眠期間の長さなど、冬眠表現型の多くにおいて、正常個体とは明らかに異なる変化を認めた。この解析の過程で、年単位にわたる膨大な時系列体温データを簡便に解析するため、体温変動解析プログラムの開発も進めた。またDEG1の遺伝子産物であるタンパク質の冬眠時の挙動についても解析を進め、体温変化に伴う変化を見出した。さらに変異個体や新たに作出する遺伝子変異体を用いて安定した冬眠誘導実験を行うため、冬仕様の条件での飼育が可能な冬眠誘導専用の低温飼育室を増設するとともに、その対照となる夏仕様条件での飼育が可能な恒温恒湿飼育室も新設した。これらにより、さらに研究が加速する態勢が整った。
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今後の研究の推進方策 |
DEG1遺伝子が冬眠発動に関わる分子機構の解析をさらに進めるとともに、生化学的解析を進め体温変化に伴うその変動の意味を明らかにするための実験を検討する。また、冬眠発動に関与すると予想されすそのほかのDEGsやDEG1の制御に関わるシグナル系に関しても、その機能操作が可能な遺伝子変異体の作出およびアデノ随伴ウイルスを用いた機能検証系の構築を進めることで、それらの冬眠への関与を検討していく。
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