研究領域 | 動的な生殖ライフスパン:変動する生殖細胞の機能と次世代へのリスク |
研究課題/領域番号 |
23H04949
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 克彦 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20287486)
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研究分担者 |
加藤 譲 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任講師(常勤) (60570249)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
143,520千円 (直接経費: 110,400千円、間接経費: 33,120千円)
2024年度: 23,140千円 (直接経費: 17,800千円、間接経費: 5,340千円)
2023年度: 48,620千円 (直接経費: 37,400千円、間接経費: 11,220千円)
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キーワード | 卵母細胞 / 卵巣 / 原始卵胞 / 発生休止 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、卵母細胞の発生休止に必須な遺伝子・ゲノムネットワークと体細胞環境を明らかにして、その破綻が生殖ライフスパンにおける卵母細胞の質的・量的な制御に与える影響を検証する。これと同時に、体外培養および生体内において卵母細胞の発生休止状態を可視化するライブイメージングシステムを開発することにより、その動態を観察する。この研究は生殖ライフスパンにおいて生殖細胞が機能性を獲得するメカニズムの理解に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究では卵母細胞の発生休止に十分な転写因子ネットワークおよび細胞ネットワークを再構築するとともに、発生休止状態を可視化するライブイメージングシステムを構築する。また同定された転写因子・細胞ネットワークに摂動を加えることにより、その後の生殖ライフスパンにおける影響を解析することを目的としている。 本年度において、発生休止を再現できる再構築系を用いて、FOXO3の標的遺伝子の候補を時系列的遺伝子発現およびATAC-seqにより単離した。これらの遺伝子の中から代謝に関わる遺伝子が多く得られたので、それらの機能的な解析を進めている。 また卵巣の再構築系および生体内の卵母細胞の発生休止状態を観察できるライブイメージングシステムを開発している。具体的には、まず生体の卵巣を用いて発生休止状態を長く維持できる培養条件を決定した。この条件下では、胎仔卵巣(通常の条件下ではほとんどの卵母細胞は発生休止しない)の卵母細胞に効果的に発生休止を誘導でき、数ヶ月に渡り発生休止状態を維持できる。またこれと同時に再構築した卵巣における卵胞形成を可視化できるマイクロデバイスを開発した。このマイクロデバイスは顕微鏡に設置可能で、焦点深度の深い観察を可能とする。今後はこれらの培養条件とマイクロデバイスを用いて、卵胞の可視化を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初の目的は、卵母細胞の発生休止に必要な遺伝子・細胞ネットワークを明らかにして、その破綻が生殖ライフスパンに与える影響を検証することである。具体的には、以下の3つの目標を設定している。(1)卵母細胞の発生休止に十分な転写因子ネットワークを明らかにして、それらの標的となるゲノム領域の変化が卵母細胞の質的・量的な制御に与える影響を検証する。(2)卵母細胞の発生休止に必要な体細胞環境を再構築して卵母細胞との相互作用を明らかにして、その破綻が卵母細胞の質的・量的な制御に与える影響を検証する。(3)体外培養および生体内において卵母細胞の発生休止状態を可視化するライブイメージングシステムを開発して、発生休止に伴う非膜性構造体の動的変化やオルガネラの局在変化を観察するとともに、卵母細胞における転写や代謝状態の変化との関連付けを行う。 これらの目標に応じて本年度では(1)FOXO3を中心とした遺伝子ネットワークの解明、(2)卵母細胞の発生休止を長期間に渡り維持できる培養条件の決定、(3)ライブイメージングをするためのマイクロデバイスの開発、を行なった。これらは本研究の目的を達成するための基盤であり、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
発生休止を制御する遺伝子ネットワークの解明については、FOXO3の標的遺伝子のうち代謝に関係する遺伝子に着目して、その機能を解析する。具体的にはFOXO3が結合するゲノム領域を欠損させた細胞およびマウスを用いて、卵母細胞の発生休止状態や卵母細胞の成熟および発生能の変化について検討する。これによりFOXO3を中心とした遺伝子ネットワークの機能解析を進める。 発生休止の再構築については、現在までに胎仔卵巣を用いた培養条件が決定している。今後はこの培養条件が再構成卵巣(生殖細胞および卵巣体細胞がともに多能性幹細胞から誘導された卵巣)においても卵母細胞の発生休止を誘導するかを検討する。これらが誘導された場合には遺伝子発現解析により、培養条件下と生体内での卵母細胞の発生休止の類似性について確認する。 ライブイメージングについては、これまで開発したマイクロデバイスを用いて、発生休止状態の卵母細胞を長期間に渡りライブイメージングするための条件検討を行う。特に卵母細胞内のオルガネラを標識できる細胞を用いて、その間の卵母細胞の状態などについて可視化できるようにする。
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