研究領域 | 光合成ユビキティ:あらゆる地球環境で光合成を可能とする超分子構造制御 |
研究課題/領域番号 |
23H04959
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
坂本 亘 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (20222002)
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研究分担者 |
小澤 真一郎 岡山大学, 資源植物科学研究所, 特任助教 (80717538)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
111,540千円 (直接経費: 85,800千円、間接経費: 25,740千円)
2024年度: 18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2023年度: 36,400千円 (直接経費: 28,000千円、間接経費: 8,400千円)
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キーワード | チラコイド膜 / 膜リモデリング / 葉緑体 / 光合成 / タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ユビキタスな光合成超分子複合体の足場となるチラコイド膜の形成と維持(=リモデリング)に着目する。膜リモデリング超分子の構造に基づき、光合成生物が獲得したチラコイド膜の時空間的配置を司るメカニズムを詳らかにする。最近構造が明らかになったVIPP1タンパク質を中心に、膜リモデリング分子とチラコイド膜の構造生理、生化学的な研究を融合的に進め、光合成ユビキティを達成した環境適応機構を解明する。膜リモデリング超分子について、構造学的あるいは生化学的な従来までの研究にとどまらず、他の研究班との融合研究を実施し,光合成ユビキティを可能にしたチラコイド膜レベルでの環境適応原理を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、チラコイド膜リモデリングの主要分子であるVIPP1タンパク質のオリゴマー解析を進めた。シロイヌナズナにおいてVIPP1-GFPを発現してvipp1ノックアウト変異を相補する実験系を使い、いくつかのアミノ酸変異をVIPP1に導入し、それらの形質解析およびVIPP1-GFP超複合体のダイナミクスを共焦点レーザー走査顕微鏡で観察した。加えて本研究では、葉緑体形質転換によりVIPP1-GFPをタバコ葉緑体で高発現する個体を材料に用いて、超薄切片の透過電子顕微鏡CLEM観察を試み、VIPP1超複合体と予想される構造の観察に成功した。今後の構造解析の基盤となる知見を得ることができた。 上記の相補実験系で、GFPではなくHisタグを用いたVIPP1-Hisタンパク質の発現による相補系の構築も今年度は同時に進め、VIPP1-Hisとそれらにアミノ酸変異を導入したVIPP1-Hisでもvipp1を相補することを確認した。それらの個体を用いたVIPP1タンパク質の精製も進めたが、ネガティブ染色による透過電子顕微鏡の観察からは、単粒子解析に資する均一な複合体構造が得られなかった。VIPP1-Hisを発現する個体からは、Hisタグ精製により得られたフラクションの質量分析を進め、VIPP1と相互作用するタンパク質分子の解析を行なった。 ストロマチラコイドに局在するb6f複合体がPSIとサイクリック電子伝達に寄与すると示唆されている。サイクリック電子伝達を亢進させる条件から単離したサンプルを用いてプロテオミクス解析を行ない、LHCIサブユニットの酸化部位を特定し構造にマッピングした。サイクリック電子伝達に寄与するPSIの動的な分子構造を捉えることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に用いるVIPP1-GFPおよびVIPP1-Hisを発現させてvipp1変異を相補したシロイヌナズナ系統のライン化が整備されるとともに、推定NTP結合部位の変異E126Q/E179Q、および、N末端のαヘリックスの両親媒性を変化させる変異N16Iなどを導入したシリーズのライン化も予定通り進めることができた。これらの個体は全てvipp1を相補するが、VIPP1-GFPの形態とダイナミクスには若干の差異が生じていた。今後は、これらの材料を用いて、クライオ電顕トモグラフィーを用いたVIPP1の構造解析をA01栗栖班との共同研究で進める予定である。 加えて今年度は、トモグラフィー解析の布石として、タバコVIPP1-GFP高発現個体の固定サンプルによる透過型電子顕微鏡観察(TEM)を行い、VIPP1-GFP超複合体をTEMでも可視化できる可能性が示されたのは予想外の進展であった。来年度以降、このサンプルでトモグラフィーを試み、超複合体の三次元構築を行うとともに、クライオ切片にも応用できるかを検討する。
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今後の研究の推進方策 |
VIPP1の構造解析を視野に入れたHisタグによる精製は、精製のためには大量の植物育成が必要であるにも関わらず、均一な超複合体が得られず、予想していたよりも困難であることが明らかになった。このため、次年度以降はネガティブ染色での解析は継続するが、このフラクションは構造解析とは切り離し、相互作用因子解析に軸足をシフトして研究を進める。相互作用タンパク質の解析では、HSP70やMFP1などの候補因子が別の研究で見つかっており、同様のタンパク質が同定されるかどうかを、今後、検討する。 VIPP1-GFPの複合体解析とダイナミクスの観察は上にも述べた通り順調であり、かつ、固定した切片でのTEM観察において、CLEMをしなくてもVIPP1-GFP複合体の構造が観察できることが明らかとなった。次年度以降は、この解析を領域内共同研究でトモグラフィーに供し、VIPP1が構築する超構造の構造解析へと発展させる。
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