研究領域 | 光合成ユビキティ:あらゆる地球環境で光合成を可能とする超分子構造制御 |
研究課題/領域番号 |
23H04960
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
皆川 純 基礎生物学研究所, 環境光生物学研究部門, 教授 (80280725)
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研究分担者 |
田中 亮一 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20311516)
金 恩哲 基礎生物学研究所, 環境光生物学研究部門, 助教 (30836359)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
182,650千円 (直接経費: 140,500千円、間接経費: 42,150千円)
2024年度: 31,850千円 (直接経費: 24,500千円、間接経費: 7,350千円)
2023年度: 52,000千円 (直接経費: 40,000千円、間接経費: 12,000千円)
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キーワード | 光合成 / 緑藻 / 環境適応 / 構造 |
研究開始時の研究の概要 |
30億年前に地球上に出現して以来、光合成生物はさまざまな環境に適応し進化を遂げた。本課題では系統樹上重要な位置を占めるる植物や緑藻、さらには環境適応を解析する上での重要種やエコタイプにも着目し、それらの光化学系超複合体の高次構造を“観て”、その集光機能を“測り”、さらに得られた情報を領域内の力を結集して“繋ぐ”ことで、水中から陸上への進化、冬季耐性等の季節変動、乾燥等の環境変動に対する環境適応原理、特に光化学系ユビキティの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
植物の光合成におけるエネルギー伝達のうち、光合成系I(PSI)と光合成系II(PSII)間のメガ複合体を介して行われるタイプのエネルギー伝達について詳しく調べた。PSI-PSIIメガ複合体には直接結合型と架橋型の2種類があり、前者はPSIIコアとPSIコアが直接結合して高速のエネルギー伝達を、後者は集光アンテナ複合体を介して結合し遅いエネルギー分配を行う。ホウレンソウでは速いエネルギー伝達が観察されたが、イネでは遅いエネルギー伝達が支配的で遅延蛍光が観測された。一方、緑藻ではPSIサブユニットであるPsaBが追加で結合し、架橋型メガ複合体の形成が阻害されることが明らかとなった。このように植物種によりメガ複合体の形成や安定性に多様性があり、これが集光やNPQにおける構造的適応を担っていることが示唆された。また、RNA-Seqや質量分析から、緑藻MesostigmaやPyramymonasの光化学系Iのサブユニット構成が明らかになった。さらに、冬季の常緑樹(イチイ、ツルマサキなど)のチラコイド膜におけるエネルギー移動や林床の常緑植物であるササにおける光化学系のサブユニットの季節変化を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目全体に亘り展開を図っている段階だが、ほぼすべての研究項目において研究は順調に進展し着実に成果が得られている。そのうちの複数はすでに論文化された。本年度はPSI-PSII超複合体やそのメガ複合体の研究が進展したほか、今後、緑藻、陸上植物という緑色植物の二大系統の光環境適応戦略に研究を展開するための重要な布石も得られた。また適応に関しては、常緑植物が冬季の低温に適応するためには、光化学系IIのアンテナにおける熱放散の調節が重要と考えられてきたが、関与するタンパク質の精製と機能解析が進んだ。さらに緑藻から陸上植物への進化において重要な位置を占める緑藻(Mesostigmaなど)から光化学系複合体を精製することができた。A01班と共同で光化学系の構造解析が進んでいる。おおむね順調に研究が進展しており、期待どおりの成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
1.PSI/II超複合体の構造解析 -- 真核藻類のうち系統的に重要な緑藻を中心にPSI-LHCI/PSII-LHCII超複合体標品の分画手法を確立し、構造解析までを行う。すでに確立しているホウレンソウ、緑藻クラミドモナスの手法を標準として、非モデル植物・藻類へ技術展開する。特に冬季の裸子植物の葉はポリフェノールや多糖類の蓄積がPSII-LHCII超複合体の単離を妨害するので詳細な条件検討を行う。これまでに手法を確立したOstreococcus tauri, Mesostigma virideに加え、今後は以下の生物種もターゲットとする--Prasinoderma coloniale, Marchantia polymorpha, Physcomitrium patens, Chlorella ohadii, Taxus cuspidata, Abies sachalinensis, Euonymus fortunei 2.PSI/II超複合体の機能解析 -- 各生物種の超複合体の集光機能特性およびステート遷移機能の解析を行う。 集光機能解析--集光アンテナサブユニット結合力解析、超複合体の物理アンテナ/機能アンテナサイズ、結合色素種、色素量解析、エネルギー移動モデル解析; ステート遷移解析--低温蛍光スペクトル法、PAM法、リン酸化Western blotting法、超複合体構造解析(電顕負染色単粒子解析)、色素組成解析(HPLC)、蛍光誘導キネティクス解析(蛍光収率解析) 3.常緑植物の環境適応--常緑植物が冬季の低温に適応するためには、光化学系IIのアンテナにおける熱放散の調節が重要と思われる。これに関与するタンパク質の精製と機能解析を進める。
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