研究領域 | 光合成ユビキティ:あらゆる地球環境で光合成を可能とする超分子構造制御 |
研究課題/領域番号 |
23H04961
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉田 啓亮 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40632310)
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研究分担者 |
桶川 友季 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (10582439)
園池 公毅 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30226716)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
114,270千円 (直接経費: 87,900千円、間接経費: 26,370千円)
2024年度: 20,280千円 (直接経費: 15,600千円、間接経費: 4,680千円)
2023年度: 31,200千円 (直接経費: 24,000千円、間接経費: 7,200千円)
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キーワード | レドックス制御 / 光合成 / チオレドキシン / タンパク質酸化因子 / サイクリック電子伝達 / ステート遷移 |
研究開始時の研究の概要 |
酸化還元(レドックス)状態の変化に応じて光合成のオンオフを幅広く制御するスイッチング機構である「レドックス制御系」に注目した研究を行い、光合成の環境適応原理の理解に貢献する。生化学・生理学解析に軸足を置きながら領域内連携によって構造生物学・計算科学・情報科学を取り入れ、レドックス制御系の構造基盤・進化様式から生理機能までを結び付けて統合的に明らかにすることで、本領域研究「光合成ユビキティ」を推進する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、酸化還元状態の変化に応じて光合成のオンオフを幅広く制御するスイッチング機構であるレドックス制御系の構造基盤・分子機能・生理意義を統合的に明らかにし、本領域研究「光合成ユビキティ」が目指す光合成の環境適応原理の理解に貢献することである。2023年度は以下の研究を行った。 研究代表者・吉田は、①レドックス制御系において還元力伝達のハブとして働くフェレドキシン―チオレドキシン還元酵素(FTR)のノックダウン株と過剰発現株を用いた解析により、光合成電子伝達速度とレドックス制御効率の関連性を見出し、レドックス制御系のダイナミクスに関する重要な知見を得た(Plant Cell Physiol. 2024)。②タンパク質酸化因子として働くACHTの過剰発現株を用いた解析により、レドックス制御の標的酵素の還元・酸化のバランスの重要性を明らかにした(J. Plant Res. 2024)。③タンパク質酸化因子であるACHTとTrxL2の多重欠損が植物の胚形成に異常をきたすことを見出し、光合成制御の範疇を超えたレドックス制御系の重要性を示唆する結果を得た(2024年植物生理学会)。 研究分担者・桶川は、x型およびy型チオレドキシンの欠損変異株において光強度が変動する条件で光化学系Iの活性が低下することを見出し、レドックス制御系が光合成装置の光防御にも寄与することを明らかにした(Plant Physiol. 2023)。 研究分担者・園池は、フィコビリソーム関連因子の探索の過程で、フィコビリソームの機能制御の一つであるステート遷移の新奇制御因子と考えられる遺伝子を発見し、これが、プラストキノンのみならず、光化学系Ⅰ還元側のレドックス制御を受けている可能性があることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者・吉田は、主に逆遺伝学・生理学的な解析によって、レドックス制御系の生理機能に関する新たな知見を得ることができた。当初の実施計画であったレドックス制御の構造機能相関については、まだアウトプットはないものの現在進行中である。その他、レドックス制御系の統合理解に向けた複数の研究が進んでいる。 研究分担者・桶川は、光化学系Iサイクリック電子伝達に加えて、チオレドキシンも光化学系I以降の電子伝達制御に関与するという新たな知見を得た。当初の実施計画であったサイクリック電子伝達のレドックス制御に関する研究についても現在進行中である。 研究分担者・園池は、これまでの研究成果を2本の共著の論文として発表し、新奇に発見したステート遷移の制御因子に関連する論文を現在投稿中である。 以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者・吉田は、①ゲノム編集によって作出した様々なレドックス制御因子の変異株を用いて、該当因子の生理的インパクトを詳細に明らかにする。特に、光合成関連パラメータへの影響を詳細に解析する。②領域内連携によってレドックス制御による標的タンパク質の構造変化を明らかにし、機能変化と紐づけることでレドックス制御の分子メカニズムを明らかにする。③精製タンパク質を用いた試験管内の構成的手法を軸として、新規レドックス制御経路を明らかにする。 研究分担者・桶川は、光化学系Iサイクリック電子伝達の活性調節因子であり、レドックス制御タンパク質であるPGRL1に焦点をあてる。また、欠損変異株および過剰発現株の生理学的解析によって、サイクリック電子伝達を中心とした光化学系Ⅰ以降の電子分配制御について進化的視点から考察する。 研究分担者・園池は、おもに、新奇に発見したステート遷移の制御メカニズムの解明に取り組む予定である。
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