研究概要 |
マイクロスケールにおいては,流体が連続体であると仮定して展開されてきた既存のマクロスケール伝熱技術をそのままで適用することはできない.本研究は,マイクロ流路を対象とし,代表寸法が小さくなることに伴う流体の希薄化とそのような条件下での複雑流れ場を理論的・数値解析的および実験的に検討し,その熱流動特性を明らかにすることを目的としている. 実験的には,管径に比して流路長さが長いマイクロチャネルをシリコン基板をエッチングすることにより,また,流路長さが比較的短いマイクロスケールノズルを放電加工により作成し,それらを通過する流れの圧力損失と流量を測定する事により流動特性について検討した.特に本年度はマイクロチャネルにドライエッチングを複数回行うことにより,チャネル底面に規則的な凹凸面を作成し,これが流動場に与える影響について検討した.これは,凹凸面でチャネル表面粗さを模擬することを試みるものである.その結果,凹凸の高さが増すほど摩擦定数の値が大きくなる一方で,凹凸の流れ方向の幅が摩擦定数に与える影響は小さいことなどが明らかになった. 数値解析的には,既存の有限体積法によって支配方程式を数値的に解く計算プログラムを利用した検討を昨年度に引き続いて行うと共に,本年度は新たにDSMCによる計算プログラムを作成し,これを上記の実験に対応する凹凸壁面を有するチャネルについて適応した.計算資源の制約から計算は現象の二次元性を仮定して行ったが,摩擦定数に対する凹凸部高さと幅の影響に関しては,実験結果と定性的に一致する結果が得られた.またこれとは別に差分による直接数値解析(DNS)プログラムを作成し,壁面にすべり境界条件を課したチャネル乱流の計算を昨年度に引き続き行った.クヌッセン数の増大に伴い壁面でのすべり速度が大きくなると壁面近傍における主流方向とスパン方向の乱れ強さはともに大きくなるが,その影響が大きい領域は壁面近くに限定されることなどがわかった.
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