研究概要 |
被験者は,徳島大学歯学部附属病院第二保存科を受診した歯周疾患あるいはその他の口腔疾患を有する初診患者200名(男性85名,女性115名,平均年齢49.7歳)とした。歯肉溝滲出液(GCF)は歯周ポケットあるいは歯肉溝に挿入したペリオペーパーから採取し,その容量をペリオトロンにより測定した。引き続きプロービング値(PD)を測定し,4mm以上をポケット部位,3mm以下を健常部位とし,プロービング時の出血(BOP),歯肉炎指数(GI)についても検査した。I型プロコラーゲンC末端ペプチド(P1CP),オステオカルシン(OCN),オステオポンチン(OPN))量の測定は,各種市販キットを用いて行った。GCF中の各蛋白量は全てポケット部位で有意に高く,とくにP1CPで6.1倍と顕著であった。P1CPおよびOCN量は,いずれもGIおよびPDと正の相関関係を示し,その傾向はP1CPで強かった。OPN量については,PDとのみ正の相関関係を認めた。また,P1CP量はBOP(+)部位で有意に高い値を示した。以上の結果より,GCF中のP1CP, OCN, OPNは歯周炎の骨代謝関連指標になる可能性があり,とくにP1CPは歯周炎における骨代謝回転を反映する指標として有力であることが示唆された。 今回注目した骨代謝関連蛋白は,ペリオペーパーを挿入している一定時間内に採取した総量として分析したが,歯周疾患診断指標となりうる物質は,歯周疾患活動性を反映することが期待されるため,歯周ポケット中のGCF量に依存することなく変動することが重要視され,実際には濃度表示により分析されることが多い。今回データは示していないが,GCF中のP1CP, OCN, OPN濃度はPD, GI, BOPと相関関係を認めなかった。一方,以前までに報告しているように,カルプロテクテン(CPT)濃度は臨床的指標だけでなくIL-1β, PGE_2,コラゲナーゼ,ASTといった他の生化学的指標とも有意な正の相関関係を示すことから,CPTは歯周疾患活動性指標としてより有用性の高い蛋白であると考えられる。
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