平成14年度の研究では、クワインの哲学から汲み取られる諸問題を掘り下げて考察するために、重要な哲学者との比較や、現代哲学における議論の展開を検討することに重点を置いて研究を行った。また、クワインの存荘論に関して、その議論の形式的な側面と内容的な側面に関する研究を行った。そして、その成果を論文にまとめ、学術雑誌への投稿や学会での口頭発表という形で明らかにした。まず、クワインの哲学上の重要な主張である自然主義の論点を、パースの哲学と比較することによって検討した。パースの哲学を取り上げたのは、パースが、クワインにつながるプラグマティズムの思想を打ち立てながらも、自然主義に対しては対立する主張を行っており、この両者の主張を比較検討することで、自然主義を考察する上で有意義な手がかりが得られると考えら、れるからである。この研究によって、自然主義に関する両者の主張の背景には、人間の本性に関する把握の仕方の相違があることを明らかにした。 次に、クワインの哲学における根本的な問題に焦点を絞ってを研究した。一つは、論理的真理に関する認識論、的問題である。この問題を、現代に行われている議論を検討することを通じて掘り下げて考察するとともに、クワインが用いる内在性と超越性という対概念に着目することで難点を明らかにした。もう一つは、存在論に関する問題である。この問題に関しては、形式的な側面から、他の論者との比較を通じて検討するとともに、内容的な側面から、クワインの初期から後期までの主張の流れを跡付けた上で、難点を指摘した。他の哲学者との比較とクワイン自身の議論の一貫性の検討を中心に行った、こうした一連の研究によって、クワインの哲学を掘り下げて理解するとともに、今後に取り組むべき課題を汲み取ることができた。
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