研究課題
特別研究員奨励費
一般的にVLBIを用いてAGNの中心部のイメージングをすると、電波コアと呼ばれる明るいコンパクトな電波源からジェットが伸びている様子がよく観測される。この電波コアは、AGNの中心エンジンの非常に近傍の領域であることが分かってきている。また電波コアは不動であると考えられてきており、実際pc以上のスケールではその不動性が確認されている。一方、pc以下のスケールでの電波コアの運動は、中心エンジン及びジェット形成領域の物理を反映している可能性がある。従って、電波コアの運動をプローブとして、AGNの新たな側面を調べることは非常に重要である。相対VLBIという方法を用いれば、遠方のクエーサーを基準とした電波源の正確な位置を求めることが可能である。そこで我々は、相対VLBIを用いて電波銀河3C 66Bの電波コア位置の変動を調べた。得られた精度は2GHzで40μas、8GHzで10μas程度であった。これらは3C 66Bにおいて0.01pc程度のスケールに相当する。2年間で6回のモニター観測の結果、両周波数で電波コアが系統的な楕円運動を示していることが初めて明らかになった。この結果は、3C 66Bの中心核に2つの巨大ブラックホールが存在して連星をなしていることを強く示唆する。このことは20年以上前から理論的に予測されていたが、今回の観測結果がこの予測を世界で初めて実証したと言える。巨大ブラックホール連星は、数万年以下という短い時間のうちに激しい重力波を放射しながら合体して、さらに巨大なブラックホールに進化していくと考えられている。この発見は、電波銀河を含むあらゆる銀河の進化、そして巨大ブラックホールの形成に関するまったく新しい知見をもたらす可能性もある。
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