研究課題
特別研究員奨励費
本研究はイスラーム知識の伝達とその分配を担うイスラーム知識人に焦点を当て、東南アジアとくにフィリピンにおけるイスラーム復興を分析するものである。イスラーム復興を分析する上で欠かせないのが、他のイスラーム圏との交流によるイスラーム知識、カネ、モノ、人の流れである。フィリピンではとくに1960年代以降東イスラーム世界への留学生が増加し、より「正統」とされる知識が同地にもたらされた。これはイスラーム知識人(新しい社会層としての)をうみ、より「正統」であると自ら主張するようなイスラーム主義を掲げる社会運動もうまれ、その一部は過激化した。しかしそればかりでなく、ムスリムの一般的な生活にも変化が起こった。巡礼者の増加、イスラーム服の着用の一般化、イスラーム勉強会やNGOの設立などがそれである。これらの現象が「イスラーム復興』とよばれることがある。この変化をフィリピンの一民族集団であるマラナオの社会史というミクロの視点からみると、この社会変容が同社会の「近代化]と並行して起こったことが明らかになる。同社会の場合、イスラームへのアイデンティフィケーションの強化は、フィリピンという国民国家システムへの統合と必ずしも相反することなく進行したのである。これをインタビュー及び資史料から実証すべく研究を行った。またとくに同時テロ多発事件以降、とくに現代イスラーム社会についての研究が多く出版されている状況にあり、これらの収集にもあたることができた。
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