配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2002年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2001年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2000年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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研究概要 |
本研究では,部分溶融系における固相-液相間の界面エネルギーならびにそれに依存する固液の濡れ性のようなマクロな物性・物理量をミクロな視点から理解するために,固体基板表面に液相を想定した薄膜を蒸着し,界面における電子状態を解析してきた.界面現象は珪酸塩系と金属系とで共通点が多いので,実験が比較的容易な金属系に集中して研究を進めた.具体的には,超高真空槽中でTa板上にSnの厚膜(多結晶膜)を蒸着してこれを基板とし,その上にAlの薄膜を蒸着,紫外光電子分光法を用いて,Al/Sn界面における価電子の挙動を探った.この実験から,AlとSnが界面を形成することにより,結合エネルギー4.3eVと2.7eVの2カ所の電子状態密度が減少し,6.0eVと0.5eVの2カ所の電子状態密度が増加することが見出された.分子軌道法に基づいた考察により,AlとSnが接触した際,AlとSnの価電子の1対の軌道(バンド)が軌道間相互作用を起こして結合性・反結合性の新しい軌道をフェルミ準位以下に生み出し,それらが電子で満たされるため,電子のもつエネルギーの総和が大きくなることが判明した.Al-Sn系は共融系であり,ここで観測された2元素の接触に伴う電子エネルギーの上昇・不安定化が,固相線以下における2相分離傾向を生み出しているものと考えられる.2成分共融系では部分溶融状態において,液相の化学組成が結晶の化学組成から離れるほど界面エネルギーが大きくなり濡れが悪くなることが知られている.これは,結晶相がAlの場合,それに接触する液相中のSn原子の数が多くなるほど,上記のような価電子の軌道間相互作用が起こる頻度が増加し,電子エネルギーの上昇により界面エネルギーが増大するものと理解できる.このように,界面の電子の挙動を解析することで,界面エネルギーのようなマクロな物性・物理量を理解できることを示した点も本研究の大きな成果である.
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