研究課題/領域番号 |
00J09828
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
林学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大楽 浩司 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2002年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2001年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2000年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 地上降水観測 / 地形性降雨 / アジアモンスーン / 熱帯山岳森林地域 / 領域大気モデル / 降水過程 / タイ |
研究概要 |
平成13年度までは、これまで詳細な観測がほとんどなかった熱帯山岳域の降水分布特性に関して、綿密な現地調査と解析を行った。平成14年度は、領域大気数値モデルによりその実証的な現象の解明を行った。 数値モデルとしてはRAMSと呼ばれるシステムを利用し、鉛直2次元非静水圧・圧縮モデルとして、バルク雲物理過程が組み込まれた状態で使用した。1998年6〜8月に関するGAME再解析データの平均値を初期値として5日分のシミュレーションが実行された結果、次のような主に3つの現象が当該領域の降水分布を特徴づけていることが示唆された。 1.山岳の力学的効果により山体風上側に雲低高度2km程度の小さな対流雲が頻繁に励起され、ちょうどこの雲低高度程度の標高を持つ当該地域の標高の高い部分で雲に覆われ降水が観測されやすくなる。 2.日周期に伴う山谷風と大規模循環(ここでは夏の南西モンスーン)との相互作用により、風上側で励起された積雲が風下側で発達し、力学的な跳水現象と下層収束とによって強い降水がもたらされる。 3.大気中層5〜6km付近の層状雲からの降水粒子が、下層雲通過の際に強化されて地表に達し易くなる。 これらのうち、1.は直接降水頻度の標高依存性に直結し、また、下層雲分布は地形に強く規定されていて、下層雲がない場合には上層雲から落下する降水粒子が途中で蒸発してしまって地表に到達しない状況が見られるなど、3.も降水頻度、継続時間の標高依存性に寄与している。 本研究での数値実験は5日間の計算結果であるため、雨季平均の観測結果との対応付けは必ずしも適切ではないが、平均降水強度、頻度、継続時間に関してその地形との対応は数値計算結果と現地観測結果とで良い対応をみせ、数値シミュレーション中で示されたメカニズムの現実性が支持されている。 この様に本研究は、困難な調査を成し遂げて熱帯山岳域における高時間高空間分解能データを取得し、丁寧な解析により降水強度ではなく降水頻度と継続時間とに標高依存性があることを見出し、さらに数値モデルによってそれを再現してそのメカニズムを明らかにするなど、これまで研究が遅れていた熱帯山岳域の降水現象の理解に大きく貢献するとともに、また、長期的には熱帯山岳域の降水パラメタリゼーションの改善を通じて気象予測、気候予測精度の向上にもつながる社会的にも極めて意義深い優れた研究成果を上げた。
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