研究概要 |
505低転移性のがん細胞を皮下に注射し、肺へ転移する過程でのDNA変異の有無を、ミニサテライトDNAをプローブとして検討した。組み換えDNA変異を効率よく検出するPcー1、Pcー2プローブはこの研究中に我々が単離した。a,b2匹のマウスから、5個の独立した肺転移巣を得、これらを培養系に移し、DNAを抽出した。それぞれのコロニーをaー1,2,bー1,2,3とここでは呼ぶ。サザン法を用いて、それらのDNAを解析すると、Pcー2座では、それぞれ、A,A,A,B,Bという2種類の異るパターンに分類された。元の505細胞はAパターンなのでbマウスの3個のコロニーの内、2個にBパターンを示す変異が起っていることが分かった。しかも、残る1コロニーはAなので、同一のマウスでも転移巣で異なる。Pcー1座ではB,B,C,D,D(505細胞はAタイプ)であった。コントロールにin vitroでクローン化した10細胞株を調べたが、全く変化は見られなかった。次にプラスミドDNAをあらかじめトランスフェクトし、505細胞を標識して同様の実験を行った。転移巣のコロニーを調べると、特定の挿入パターンを示す一クローンのみ選択的に転移していたが、Pcー2座ではそれらの転移巣間でも異なる2種のパターンが見られた。以上の結果は接種部位、転移過程で多くの変異が新たに誘発されることを示し、その変異に伴う何らかの変化が転移過程での優位性を与えると考えられる。ちなみに、染色体末端のテロメアーをプローブとし、同様にハイブリダイズさせると、転移前に比べテロメアーの伸長が認められた。 又、これらのプローブはDNA変異を効率よく検出するモニター系を与えるということも分かった。
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