研究概要 |
マウスTL抗原は主要組織適合抗原(MHC)クラス1抗原に属するが、正常では胸腺T細胞の分化抗原として、また腫瘍ではT細胞白血病の腫瘍特異抗原として発現し、他のMHCクラス1抗原と発現様子が異なる。本抗原の発現調節機構を解析し、さらに機能を明らかにするためにTL遺伝子あるいはTLとHー2の間で作成したキメラ遺伝子を導入したマウスを作出し解析を行っている。 正常ではTLを発現していないC3H/HeマウスにA系マウス由来のTL遺伝子(Tla^aー3)を導入した2系統を得ているが、1系統はほぼ正常量の抗原発現をまたもう1系統は非常に大量の抗原発現を示しT細胞の分化異常を示した。この系のマウスの胸腺には生後1週齢でコントロールの10%程度の細胞数しか存在せずさらに生育とともに7週齢では数%までに減少する。7週齢のマウスに存在する胸腺細胞はCD4^-,CD8^-の未分化なT細胞が胸腺の大部分を占め、通常存在するCD4^+,CD8^+の細胞はほとんど観察されない。従ってこの胸腺ではCD4^-,CD8^-がCD4^+,CD8^+に分化出来ずCD4^-,CD8^-の段階で停止したかもしくはCD4^+,CD8^+の細胞が急速に死減除去されていることが推定された。 興味あることにはこの系の生後8〜15ケ月齢マウスにはT細胞白血病の発症が65%以上の頻度で観察された。病理学的には胸腺の肥大よりはむしろ末梢リンパ節に主として病変が認められた。白血病細胞は全例CD4^-,CD8^-,CD3^+で胸腺細胞と同じ表現を示し、T細胞受容の解析ではgamma鎖の鎖のmRNAが発現しており、またもモノクローナル抗体によってもgamma alphaの発現が観察された。DNA解析も試みているがcーmyc、cーpim等の再構成は認められなかったがエコトロピックウィルスのervプローブでは少数例ではあるが再構成が認められた。即ち分化異常を起したT細胞が二次的、三次的要因により白血病化したものと考えられた。
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